最近ターミナル駅などの繁華街を歩くと「油そば」の看板を多く見かける。いわゆるスープの入らないラーメンで、ネーミングからハイカロリーを連想させるが実はスープ分のカロリーが引き算され、塩分も少なくヘルシーというのがお店側の主張。
油そば 並
今回は「油そば」の名付け親、武蔵境にある『珍々亭』をご紹介したい。創業は昭和29年。先代が親戚の経営する本郷の中華料理店で修行し、その時に出会った「拌麺」が油そばの原型だという。
麺に絡める特製ダレはチャーシューを煮た醤油ダレにラードを加えるシンプルな構成。しかしながら肉の旨味がつまった醤油味にサラっとしたラードの油脂感は若者が欲する味のど真ん中。茹でたてを丼に入れる釜揚げ状態の麺は熱々モチモチで、スープが入らないものの冬でもしっかりと体を温めてくれる。
卓上に用意されるのは自家製ラー油•酢などの基本調味料。本体の味付けがシンプルなだけに自分流にカスタムするのが「油そば」のスタイルだ。ネギは有料だが相性が抜群なので是非注文して欲しい。
「油そば」と「まぜそば」の違いは?
さて前回お話した通り「油そば」と「まぜそば」の違いはなんだろうと考える。『珍々亭』の「油そば」の原型が中国の「拌麺(ばんめん)」だとしたら呼んで字のごとく混ぜる麺。要するに「油そば」の原型は「まぜそば」であり2つのメニュー名は同意義と考えて間違いはない。
歴史的に正しく追うと「拌麺(中国)」→「油そば」→「まぜそば」という順番で登場。これは「拉麺(中国)」→「支那そば」→「中華そば」→「ラーメン」みたいなもので、時代のニーズとともに呼び方が変化したと考えるのが妥当。「中華そば」と「ラーメン」が共存しているように、今後「油そば」と「まぜそば」の関係も長い付き合いが期待できそうだ。
中国の拌麺(油そばの原型)
上海『滄浪亭』で提供される「葱油肉絲拌麺」15元(240円くらい)
上海にある「蘇州麺」を売りにする人気店『滄浪亭』