醤油・味噌・塩という調味料や豚骨・鶏ガラ・魚介といった素材など、ラーメンで語られるのはスープに関してばかり。ラーメンの歴史を追っても麺に関してはほとんど触れられていないのが実情だ。しかしラーメンの主役はスープと麺の二柱。つけ麺やまぜそばの台頭でより注目の集まる麺にスポットを当てたお店を紹介したい。
東北を代表するご当地ラーメンである白河ラーメンの総本山『とら食堂』。その直系で、本場の味を東京にて堪能できる名店がこちらの『吉兆』だ。2011年戸越より大井町にリニューアルオープンし、既に多くの常連客で賑わっている。
中華そば
メインに据える「中華そば」は、白河ラーメンならではのすっきりとした醤油スープに、青竹打ちの縮れ麺が泳ぐ王道のビジュアル。鶏ガラ豚骨から滲みでる心地よい風味に、表面に浮かぶ鶏油が丼全体にふくよかな甘味を加える。朝4時から打ち始める平打ち麺は不規則に縮れ、口内をくすぐるような独特の食感が印象的。
鎮座するチャーシューは炭火で焼き上げたジューシーな逸品。通常ラーメン店では煮豚を使用するが、こちらでは焼豚にこだわり薫香をともなう贅沢な味わいを提供する。
古き良き時代の東京ラーメンを彷彿とさせるクラシックなビジュアルに、熟練の技から生み出されるハイスペックなパーツ。初心者からフリークまで楽しめるオススメの一杯。
次回はラーメンの語源となった中国三大麺料理『拉麺(ラーミェン)』の名店をご紹介。
白河ラーメンとは?
昭和初期、故竹井寅次氏が始めた『とら食堂』を代表的なお店としてその弟子たちによって味が受け継がれたラーメン。豚骨、鶏ガラをじっくり煮込んだクリアで色濃い醤油スープ。動物性の油がうっすらと層をなす適度なこってり感と、青竹で打つ不規則に縮れた幅広の多加水麺が特徴で、炭火焼きチャーシューが添えられることが多い。
青竹打ち麺
青竹で打った後に手もみを加えるため麺線が不規則に縮れ、朝打った麺はその日のうちに使用し小麦本来の香りを提供する。