名古屋をはじめ愛知県及びそれに近接する地域で「味噌煮込みうどん」と言えば大御馳走なのであります。寒い冬の季節はもちろん、暑い夏の季節でも味噌煮込みと聞けばゴクリと喉がなる人々の多い地域なのであります。子供の頃より「美味しい~。」「美味いっ!」等と、家族団欒のひと時に笑顔で食べられてきた味噌煮込みうどん。トップ画像を見て条件反射的に背筋を延ばして身嗜みを整える紳士淑女も多いというのも事実。
土鍋が目の前に供され蓋を取れば、ボコボコボコ~と沸き立つ赤味噌のお汁にキュゥ~ンと香り立つ削り節のお出汁の風味。鍋で煮込む為、熱に負けないように、塩を使わないモッサムッチリとした固いうどんにビックリし、赤味噌の濃い味わいに驚いてしまう他の地域の方々も多く居ると聞くのでありますが、この地域の人々はもちろん、全国各地には密かに固唾を飲んで居られるファンも多いと聞きます。今回はそんな「味噌煮込みうどん」の超老舗店でありながらも、いつも賑わいのある地域に愛されているお店の6杯を紹介させて頂きます。
1.いらっしゃいの後に「何杯?」と聞かれる味噌煮込み一択の「太田屋本店」
「一番初めは一宮~♪」と手鞠唄にもあるように、一番最初は愛知県一宮市にある創業110年と言うので、明治40年頃からの超老舗うどん店から紹介します。真清田神社の西側の1本入った所にあり、車では通り過ごしてしまいそうなので注意が必要なのです。さて扉を開けて店内に入るといらっしゃい~の後に「何杯?」と聞かれるのがこのお店の特徴だ。「えっと、んっと」などと焦る必要は無い。メニューはうどん一択!人数確認の意味で聞かれるので人数を言うだけである。そこに玉子か、餅か、とろろを入れるのか、ご飯にビールなのかを伝えるだけである。更に玉子については、生、半熟、つけ玉子から選べるのも嬉しいところだ。
メニューにはうどんとあるのだが、これぞ味噌煮込みうどんの原点的なシロモノで、平打ちの乾麺を味噌仕立てのお汁でしっかりと煮込んだものである。この日の私は生卵をトッピング。味噌仕立てのものに生卵の組み合わせが大好きな私。そして多くの味噌煮込みうどんのお店で採用されている土鍋であるが、このお店は普通の丼に並々に入れられてやってくる。その昔、味噌煮込みうどんの黎明期にはこのようなスタイルで味噌煮込みうどんを食べていたのではなかろうか?と想像するのも楽しい。とっぷりとトロリとしたお汁の上で、玉子をプツリと割り、卵黄を麺に絡めるようにしてフーフーとして頂くのは至福のひと時である。
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2.ランチは御飯にかしわと玉子がついたお得な味噌煮込み定食の「藤吉庵」
一宮から西の隣町、尾西方面へと結ぶ表通りから、少し入った住宅街の中にある老舗うどん店。あたりは繊維が盛んだった頃には繊維工場が建ち並び、日夜ガタンバトンと絶え間なく繊維を織る機械の音が鳴り響いていたであろう一帯。その頃からそれらの関係者に支えられて繁盛し、工場が無くなり住宅街となった現代では、地域の人々にその歴史が引き継がれ、この地に無くては成らない人気店へとなっていったのである。
メニューにはうどん、そば、丼ものと麺類食堂の王道的ラインナップが並ぶが、殆どのお客さんは当たり前のような顔で「味噌煮込み」をチョイス。玉子か、かしわ入りの親子か、餅を入れるのか、はたまたマニアックなにんにく入りを選ぶのかといったところだろう。
この日の私は味噌煮込み定食親子入りをお願いした。ランチ時のお得なメニューである。通常の味噌煮込みうどん800円と同じ値段にも関わらず、かしわと玉子にご飯が付いて同額!と言われれば、泣く子も黙ってソレだと頷いてしまうのだ。極太のブリンブリンな煮込み麺に八丁味噌のコクと削り節からの出汁が染み入って、ご飯がススム君となるのである。ひとりで写真を撮りながら食べる私に、相席となった週一で通うと言う初老の大先輩が「美味いだろ?」と自信ありげな優しい笑顔で語ってくれたのは忘れる事が出来ない。
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3.うどん職人の作り上げる極細麺の味噌煮込みは技あり「角丸」
名古屋の繁華街から少し東へと向かったビジネス街の中にあるこちらのお店。平日ランチ時は近隣のサラリーマンで溢れかえり、夜まで通し営業なのもあって地域の人々が絶えず訪れている超人気老舗うどん店である。うどん、きしめんなど他のメニューも美味しいのだが、見渡すとやはり味噌煮込みうどんが一番人気のようでどこのテーブルにも土鍋からうどんを持ち上げている。そのバリエーションの豊富さは他に無いもので、かしわ、玉子、餅、天ぷらという王道ラインナップをどう組み合わせるかというお好みのコースを松、竹、梅で言い表すシステムとなっているのが特徴的である。この店に通いつけるツウがいかに多いのかを物語っているというものだ。
この日の私は「松(玉子入り)」をチョイス。とは言え、かしわ肉も少し入っているのが嬉しいところ。サクリと割り箸で麺リフトすると珍しく細麺の煮込み麺が持ち上がってくる。その細さたるや割り箸よりも細いものだから驚くものである。これほどの細麺で土鍋からの熱量に耐えられるのか?と心配になるのだがそこはそれ。このお店は名古屋を代表するうどん職人が日夜切磋琢磨されたシロモノである。ビックリするほど煮込み麺のムッサモッチリな咀嚼感であり、それが後半に至るまで維持されるのだからファンが多いのも頷ける。これをとんすいに取り分けて、玉子の卵黄のみを絡ませ、卵黄コーティングを施して頂くのは私のテッパンコースなのでもしもの機会に試して頂きたい。
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4.味噌カツ丼と合わせてガッツリ味噌の世界を楽しみたい「岩正」
名古屋市東区に古くからある筒井商店街。衰退していく商店街が多い中、人通りも多く頑張っている商店街だ。尾張徳川家の菩提寺、徳興山建中寺の南から少し東に2軒のうどん店があり、驚いた事に間に1軒挟むだけという至近距離である。どちらも老舗激ウマうどん店であるのだが、味噌煮込みうどんとなると創業明治35年というこちらのお店に軍配をあげたい。テーブルと座敷で30数客の小さなお店だが、いつも常連さん風の地元の方々で賑わっており、熟れた店員さんの動きに上手く合わせて会話をされるお客さんを見ていると心地良いものだ。またこのお店の味噌カツ丼も人気メニューのひとつであり、ガッツリイケる方には味噌煮込みうどんと合わせて食べてどっぷりと味噌の世界を堪能するのも良いものです。
この日の私はいつものように「親子煮込み」をチョイス。ゴボゴボゴボォ~と沸き立つお汁に生卵の白身が白く固まりつつある頃合いで供されます。この煮沸が収まるのを見計らって土鍋から直で啜るという高温に耐性のある方ならば問題ないのだが、私はとんすいにうどんを適量取って具材をひとつずつ飾るように並べ、お汁をおたまで1,2杯注いで一味をハラリとかける。この時にお汁が一味にかからないようにするのが私の好みのやり方である。唐辛子の粉末のドライな風味を楽しむのが好きだからである。こうする事で熱々であったうどんや具材も適温となり、ガツガツっとかっ込むようにして食べる事が出来るのだ。そしてうどんと具材の複雑な食感を味わえるとともに、お汁がもっている味噌のコクやお出汁の深みある味わいが楽しめるのである。一味の無いバージョンやら卵黄バージョンなど何通りもの味噌煮込みが食べられるのも嬉しいものなのだ。
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5.【味噌煮込み食べ方指南】に習えば初めてでも楽しく食べられる「たから」
名古屋で一番賑わいのある商店街、大須商店街の中心に近く、門前通りに面しているこちらの昭和29年創業という老舗味噌煮込みうどん専門店。直ぐ近くでお兄さんがお寿司屋さんを営まれており、そちらは創業明治35年と言う事で長らく大須の地で活躍されてきた家系のようである。商店街の中のお店らしく入口から奥へと細長い店内でテーブル席、座敷席とあって、メニューは味噌煮込みうどんと丼モノ。そして近くのお兄さんのお店からの配達で、お寿司まで注文出来るというから心強いのである。
こちらのお店は観光地的要素の強い土地柄なので「味噌煮込みうどんの食べ方指南」という画像付指南書がメニューにあるので、興味のある方は参考にすると楽しく食べる事が出来るはずだ。ただ私とは若干方向性が違うのが残念であるのだが、好みの問題なので仕方のないことである。さてこちらのお店の特徴的な事はとんすいが付いてこない事である。土鍋の蓋を利用して食べるというやり方で勝負するスタイルだ。これは今回紹介するお店の中ではこちらが唯一であるのだが、他のお店ではよく見かけるスタイルなので安心して挑んで頂きたい。
指南書によると蓋を取ったらば、まず立ち上がる香りを楽しむべしとある。なるほどそれは条件反射的に会得しているので問題ない事だが、次に蓋を取ったら「まず卵をからめて」とあるのが目を疑ってしまう所だ。すると驚いた事に相席で御一緒した、年の頃では私とさほど変わらない紳士がソレを実行していたのである。膝を付き頭を抱えそうになったが個人の楽しみを奪う権利は私にはない。ただチラミで良いので、私のやるTTU(Tamago Tuke Udon)からの奥義、卵黄コーティングをその脳裏に焼き付けて一度で良いので実践されることを願うばかりである(^^;;;
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6.他では出会えない、打ち立て湯掻き立ての味噌煮込みうどん「まことや」
名古屋八熊通の東の終点、壇渓通4交差点の北東方面に竹の茂る古民家のお店が、最後に紹介する老舗うどん店である。全6店舗中交通量の多い大通りに面している唯一のお店であるが、すぐ近くには有名なチェーン展開の味噌煮込みうどん店があるので、地元の人々はコチラへと足繁く通っているようだ。暖簾をくぐりお店に入ると見える、カウンターの向こうから店主の元気な「いらっしゃいませ~」の大きな声がかかるのは構えておかないと少しびっくりするところだが、次から次へと来るお客さん全てにその対応なので慣れてしまうものである。このカウンターの向こう側は厨房となっており、向かって右手にはうどんの打ち台があって店主がうどんを打っては湯掻いていくという、打ち立て湯掻き立てというスタイルで作り上げているというのがこのお店の特徴である。
毎度の事だがいつものように親子の味噌煮込みうどんをチョイス。ボコボコボコ~と沸き立つ泡に乗る長葱は、愛知県産の越津ねぎをほぼ生の状態で乗せられているのが面白い。柔らかで葉と白根の両方を美味しく食べられる特性のこの葱は、味噌煮込みの熱量で直ぐにトロンとなってしまうのだが、ほんのりシャクリとくる生の食感を楽しめるのである。うどんはムッサモッチリな少し平打ちがかった煮込み用の麺。ゆっくりと時間をかけて食べると後半になるにしたがって柔らかく変化し、八丁味噌のコクある深みに、ムロアジ、宗田、鰹類からなる削り節の効いたお出汁の風味をたっぷりと含んでくれるのが嬉しいところだ。卓上には一味と七味があるのでとんすいにとる度に、それらを変えて変化させていくと何時までも美味い美味いと飽きることなく笑っていられるので試していただきたい。
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店名:まことや
住所:愛知県名古屋市昭和区壇渓通4-14
電話番号:052-841-8677
営業時間:11:00~20:30
定休日:金曜