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国民食の裏には意外な歴史背景が!マニアが語る『焼きそば論』
国民食の裏には意外な歴史背景が!マニアが語る『焼きそば論』

国民食の裏には意外な歴史背景が!マニアが語る『焼きそば論』

最終更新日 : 2015/06/02

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カレーやラーメン、パンケーキに大衆酒場など、様々なグルメジャンルに特化して食べ歩きをされている著名ブロガーがキュレーターとなり、選りすぐりのグルメ情報を毎日お届けしている「メシコレ」。今回は、そんなキュレーターの皆さんの食べ歩き事情を紐解くインタビュー企画第1弾です!
栄えある最初のインタビューをお願いしたのは、「焼きそば」を専門としてブログ『焼きそば名店探訪録』を執筆されている、塩崎省吾さんです。

焼きそばと言えば、お馴染みのソース焼きそばから、塩焼きそば、餡かけ焼きそば、アジアの世界各国の焼きそばなど、改めて数えてみると、たくさんのバラエティがありますよね。
これまでに全都道府県を制覇し、訪れたお店の数は500軒以上という塩崎さんは、お店の情報だけでなく、焼きそばの歴史などにも詳しい方です。ソース焼きそばが日本でここまで普及した背景や、ご当地やきそばとの関わりについて、詳しく説明していただきました。

 

バイクで全国を走り回る中で気づいた、焼きそばの魅力

●日本は本当にいろんな食べ物のある国で、カレーやラーメンのように誰もがよく食べる料理ジャンルもありますよね。そのなかで、焼きそばに注目したのはなぜだったんでしょう?

「元々30代になってからバイクに乗り始めて、いろんな所を旅するようになったんです。ちょうどその当時はB-1グランプリなどが話題になり始めた時期だったんですが、そんなに注目されていなくても地元で愛されている焼きそば屋さんが各地にあるという情報が、ポツポツとバイク仲間づてで入ってくるようになったんです。見たところ、焼きそばだけをまとめたブログもなかったので、これは面白いかもと思って、突っ込んでやり始めたのがきっかけですね。焼きそばの食べ歩きを始めたのは7~8年前ぐらいなんですけど、ブログを始めたのは4年前です。バイク仲間ってボリュームのあるものが好きなので、例えばソースかつ丼なんかも詳しいんですよ。それに混じって、どこそこにおいしい焼きそばがあるよっていう話を聞くようになったんですよね。」


●そうして焼きそばを掘り下げていったら、全国各地にご当地焼きそばというものがあったわけですよね?

「そうですね。僕も各地に個性があるなんて思ってもみなかったんです。だから、初めて関西に行って焼きそばを食べた時はビックリしたんですよ。関東に較べると、甘口のソースを使っていて、こってりとした味わいなんです。それで、焼きそば単品を頼んで食べていたら、ごはんが食べたくなってくるんです(笑)。『なるほど。関西の焼きそば定食とはこういうものか』というのを実感して。焼きそばそのものの味付けが関東の味付けとはまったく違うものだったんですよね。

 

焼きそばは戦後日本が生んだ国民食!?

●ラーメンであれば、よく知られた全国各地の傾向みたいなものがありますけど、焼きそばにもそういうものはあるんでしょうか?

「焼きそばの場合は、今も言った通り、ソース焼きそばで言うと東と西にまず大きく分かれるんですよね。東日本は蒸し麺と酸っぱいソースを使うところが多くて、西日本は茹で麺と甘口のソースを使うところが多いんです。もちろん、これはあくまで大きな傾向であって、例外はたくさんありますし、それがご当地の焼きそばを生むことになっていくんですけどね。だいたい愛知県ぐらいで分かれる感じでしょうか。といっても中部地方はいろんな傾向の焼きそばが混在しているんですけどね。北と南については距離が離れているのに共通点がある場合もあるんですよね。ほとんど味付けせずに炒めて、後からソースをかけるタイプの焼きそばがご当地焼きそばであるんですけど、北は北海道にもあれば、西は出雲や広島とかにもあるんですよ。なのでキレイに分かれるわけでもなくて、むしろ同じ県でも違ったご当地焼きそばがあるくらいなんです。」

 

●そうしたご当地焼きそばが地域ごとに根付いているのにはなにか理由はあるんでしょうか?

「ソース焼きそばは、戦後お米のなかった時代に、小麦だけはアメリカから来るという状況の中で、その土地のありあわせのものでなんとか食べようと、そうした背景で広がっていったんですよね。それで、ご当地色が生まれていったところがあるんです。焼きそばの存在自体は明治や大正時代からもあったようなんですが、焼きそばが広く普及していったのは、戦後なんです。戦後すぐは醤油や砂糖が貴重だったことも大きいみたいですね。だから、人工の甘味料で作るソースを使って食べる焼きそばやお好み焼きが普及していったんじゃないかと。あと、焼きそばは戦後、もんじゃ焼きなどと一緒に駄菓子屋の文化として広まっていった部分もあって、要は駄菓子屋って旦那さんを亡くした奥さんがやりやすかった業態だったんですよね。それと、焼きそばの麺は日持ちしやすいこともあって、非常に歩留りのいい、商売のしやすい商品だったんですよね。そうやって戦後に焼きそばは日本全国に普及していったんですけど、更に焼きそばが広まった背景として仮説で考えているのは、マルちゃんの3袋入ったチルド麺が発売されたことがあるんじゃないかと思うんです。あの商品は今年でちょうど40周年なんですが、これが各家庭で手軽に焼きそばを食べられるようになったきっかけじゃないかと。実は、小売全体の中でカップ麺や即席ラーメンを含めても、最も売れている麺類というのは、今もマルちゃん焼きそばなんですよ。」

 

全国のご当地焼きそばは100以上!代表格の三大焼きそばは、富士宮・横手・太田

●ご当地焼きそばで代表的なものを教えてもらうことはできますか?

「ご当地焼きそばは各県に複数ある感じなので、総数で言うと100を超える種類があるんです。ただ三大焼きそばと言われているものがあって、それが静岡県の富士宮焼きそば、秋田県の横手焼きそば、群馬県の太田焼きそばの三つです。

富士宮焼きそばは、一度麺を冷凍させることによって独特のコシのある麺が特徴です。元々、保存のために始まったようで、蒸し麺を一度冷凍させているんです。その分、炒める時には水を入れながら炒めることによって、あの独特の食感が生まれるんです。あとは、肉カスが使われていて、ダシ粉がかかっていることが特徴です。

国民食の裏には意外な歴史背景が!マニアが語る『焼きそば論』

▼富士宮焼きそばについての塩崎さんの記事を読む▼
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/6095/


横手焼きそばは、茹で麺なんですよね。ダシで割ったソースが使われていて、かなり柔らかめに作られています。具は、キャベツと挽肉がトレードマークとなっていて、かなり甘口でマイルドです。ダシで割っているソースを使っているので、ヒタヒタになる感じでソースがかけられています。それもあって横手焼きそばは好き嫌いが分かれる傾向にありますね。紅しょうがの代わりに福神漬を使っていることも特徴です。

 

国民食の裏には意外な歴史背景が!マニアが語る『焼きそば論』

▼横手焼きそばについての塩崎さんの記事を読む▼
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/5883/


太田焼きそばは、なかなか難しくて、特定の特徴というのはないんです。店ごとにそれぞれ違っているんです。よく太麺で真っ黒な色の麺というのが特徴と言われるんですが、なかには細麺を使っているお店もありますし、黒くない麺を使っているお店もあります。三大焼きそばとして挙げられているのは、とにかく焼きそば屋さんがその街に多いと、それが理由なんです。」

 

「焼きそば=餡かけ焼きそば」が常識な県も?地域で異なる焼きそば事情

●では、塩崎さんが個人的に思い入れのあるご当地焼きそばを教えてもらえますか?

「面白いご当地焼きそばとしては、函館にヒタヒタのスープの入った、汁の少ない塩ラーメンのような焼きそばを出すお店が複数あるんですよ。焼きそばなのに焼いてないんじゃないかって(笑)。今はだいぶお店も少なくなって、2~3店しか残ってないみたいなんですけど、食文化としてはそうした独自のものがあるのは興味深いですよね。

あとは、四国の松山に『かめそば』と呼ばれる美味しい焼きそばがあるんです。元々は『かめ食堂』という食堂が出していた焼きそばだったんですが、そのかめ食堂がなくなってしまい、それで他のお店も出し始めたみたいなんですよ。その中でも『じゅん』というおでん屋さんが正統派というか由緒正しいかめそばを提供しているんですが、味はこれがもう何にも譬えられない不思議な味で、醤油風味の香ばしさにじゃこがドワッとかかっていて、とてもビールに合いますね。これはおいしいです。

さらに特徴的なのは、日本全国でも「焼きそばといったら餡かけ焼きそばだよね!」という地域もあるんです。長野はそうなんですよね。長野県の一部は焼きそばと言ったら餡かけ焼きそばのことなんです。あと、北海道も餡かけ焼きそばがすごく普及している地域ですね。先ほど函館の話をしましたけど、函館は例外的で、北海道は全域に亙って餡かけの焼きそばが受け入れられているところなんです。なかでも小樽は有名で、小樽は餡かけ焼きそばをご当地グルメとして売り出していまして、あと稚内にもチャーメンと呼ばれる餡かけ焼きそばが根付いていますね。」

国民食の裏には意外な歴史背景が!マニアが語る『焼きそば論』

▼長野の餡かけ焼きそばについての塩崎さんの記事を読む▼
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/5785/

 

地元で長続きする焼きそばには、愛される理由がある

●自分が好きになるお店のポイントってありますか?

長年やっているお店は好きですね。ご当地グルメとして比較的新しく焼きそばを売りに出している地域などもあるんですが、長く続かないケースも多いんですよね。昔からやっているということは、よそ者の口には合わないかもしれないけど、その土地では地元の味として親しまれている何かがあるということだと思うんで、そういう物語が好きなんですよね。ラーメンとかカレーライスと較べても普及しているのに、マイナーな見られ方をされることが多いのが焼きそばで、その地位向上のためになんとか頑張っていきたいですね。もう少し評価されてもいいんじゃないかとは思うので。」

 

いかがでしたでしょうか?普段何気なく食べている焼きそばにも、様々な種類や歴史背景があることに気づかれたのではないかと思います。塩崎さんのインタビューを読んで焼きそばについてもっと知りたいと思った方は、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね!

▼塩崎さんの他のメシコレ記事を読む▼
https://mecicolle.gnavi.co.jp/curator/yakitan/

▼塩崎さんの食べ歩きブログ:焼きそば名店探訪録▼
http://goo.gl/rhpCNQ

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※本記事は、2015/03/23に公開されています。メシコレで配信している記事は、グルメブロガーの実体験に基づいたコンテンツです。尚、記事の内容は情報の正確性を保証するものではございませんので、最新の情報は直接店舗にご確認ください。

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