岐阜県岐阜市京町で食事を考える時、一番初めに脳裏に思い浮かぶのがこのお店の「冷やしたぬきダブル」だというのは、この地域に関係するものなら99%の人々が首を縦に振る。
1928年に創業されて以来長らく刻み続けた歴史と、このお店でしか味わう事の出来ない「冷やしたぬきそば」が人々の心を捉えて離さないからだ。
私が初めてこのお店に訪れたのは1995年頃だったと思う。仕事柄あちらこちらで美味いと評される逸品を食べてきたと勘違いしていた若き日に客先に誘われての事だった。
岐阜中警察署と岐阜消防本部の裏通りの立地、座敷、テーブル席等合わせて50席強というキャパ。店内にはランチ時とあって満席状態でごった返している。その中で殆どの客が「冷やしたぬきダブル」を注文しており、更にはその提供速度の速い事と言ったら度肝を抜かれるのであった。
常連客の動きを見ていると、お店に入るなり店員さんに「ダブル」と告げ相席必須のテーブル席に座り、卓上のやかんよりセルフのお茶を注いでいる間に「お待ちぃ」と言ってどぉんと着丼なのである。チントンシャン♪のリズムだと言っても、過言ではないのである。
今回は私がこのお店に通い続けて知った、楽しく美味しい魅力を紹介したいと思います。
常連客は「ダブル」。初めてでも男なら「冷やしたぬきダブル」と言って席に着けばよいのだ
まず始めに、いつもは「ダブル」(大盛の事)と言って席に着く私なのだが、今回はこの記事を仕上げる為に見栄を張って「あげ3枚増し」と言ってしまった事をお詫びしたい(^^;;
通常でも3枚入る甘く炊かれたおあげさんなのだが、1枚30円で追加できるのである。何といってもこのおあげさんがこのメニューのキモとなっているのだと私は思うので、見栄っ張りな私を許していただきたい。
さて、まずはその作法から説明したい。画像を見ると分かるのだが、お汁は丼の半分弱といった容量しか入っていない。これで充分な量なのだが初めての方には分かり難い。
丼のふちにワサビが添えられているからコレを汁に溶き混ぜるためにそのあたりの蕎麦をどけて丼を傾け、割り箸を操作してお汁にしっかりと溶かし込む事から始めたい。
何故か?と言われるとワサビの塊が口に入った時の悲劇と言ったらないからなのである。兎に角、まずはソレをするのが私の作法であり、殆どのお客がそれをしているので真似をして損な事はい。そして天かすである。こいつが結構な硬度を持っており大きな塊を口にすると「ガキッ」となるのだ。奥歯の強度が不足している私は、割り箸でグルンと丼の底のお汁がある部分へと押し入れてお汁を吸わせて柔らかくする作戦を施すと共に、ワサビの絡んだお汁が万遍なく全体に行き渡るようにというイメージでゆっくりとかき混ぜていくのだ。
長々と書き連ねているのだが、どんなに空腹でもこれをしておかないと必ず後悔するので、これはルーティンなのだと言い聞かせてやる事をお勧めしたい。
はい。頃合いを見てやったりましょう。ものすごい量なのであります。ガッツリと割り箸をしならせて蕎麦を手繰りあげてやってください。
ムロアジ等の削り節からなる出汁に、たまり醤油と味醂、砂糖などで仕上げられたカエシが出会い、絶妙な甘美味いお汁が冷や麦よりも太目な蕎麦に絡むのです。
蕎麦といっても小麦粉7に対して蕎麦粉3という割合なので如何なものかと顔をしかめる貴兄も居られるとは思いますが、口の中いっぱいに蕎麦を手繰り込めばニッコリとなるから試して欲しい。時折、甘いお汁の滴るお揚げさんを摘んだりして食べ勧めて楽しんで頂きたい。最後に残った丼のお汁に、卓上の魔法瓶から蕎麦湯を注ぎいれゴクリと飲み干すのが男のやり方なのである。
「煮込み」だが「にごみ」と濁るのが岐阜の流儀。
名古屋で生まれその近隣で育ってきた私であるのだが、「味噌煮込みうどん」は心より大好きな御馳走なのである。しかしここ岐阜市等、岐阜県の南部である西濃、中濃、東濃あたりでも味噌煮込み文化は根付いており、美味しいものを出すところが多いのだ。
ただひとつ面白いのは、歴史ある老舗な麺類食堂では「味噌煮込み」ではなく「にごみ」と発声するお店やお客がいる事に驚いてしまう。まあ言葉の文化で「訛り」と言ってしまえばそれまでだが豆知識として知っておくもの面白いところだ。
さてこちらのお店の「にごみ」であります。私は味噌煮込みには必ず生卵を付けたいので「玉落とし(ぎょくおとし)」と注文する。言葉は店員さんの通し言葉を真似ているだけなのでそっとしておいて頂けたら助かるのです(^^;;;
きしめんのような平打ち麺で乾麺から煮込んだのだろうか?と推測できるのだが、おそらく塩を使わない小麦粉と水のみで作り上げられた煮込み麺である。
塩を使わないうどんはツルツルでシコシコした通常のうどんとは異なり、モッサリとして噛み応えのある食感となる。
そのおかげで土鍋でグツグツ煮込まれても全く負けないしっかりとした麺となり、ゆっくり食べても後半までしっかりと麺を楽しむ事ができるのだ。
食べ始めから中間地点にて麺をとんすいにとり、生卵の卵黄をトロリと添えてのTTU(Tamago Tuke Udon)を炸裂させるのは私の楽しみの一つだ。
削り節香る赤味噌がジワリと染み入るうどんに卵黄のマロミが加わるその味わいは至福のひとときなのであります。これはタマランのです(^^;;;
思わず「ん?」となるメニュー群も美味しいのですよ。
こちらのお店のメニュー表を見ると「ん?」と疑問に思う一品が並んでいるのでそれらを紹介したい。
上から順に、
「たぬき」温かいお蕎麦にお揚げと刻み葱、天かす入り。
「おばけ」温かいお蕎麦にお揚げと刻み葱。
「きつね」温かいうどんにお揚げと刻み葱。
「ころ」冷たいお蕎麦に小松菜、お揚げと刻み葱。
「ゆうれん」冷たい冷や麦にお揚げと刻み葱、天かす入り。
という事なのであります。
その他にもまだまだ様々なメニューがあるのですが、一度「冷やしたぬき」に魅了されるとそれ一択となるのは人の常といっても過言ではないのかも知れませんが、他のメニューも美味しいので是非とも食べていただきたいものなのです。
出入口が3箇所あるっていうお店は他には中々ないのです。
一番上は西口である。お店の駐車場から正面となり一番メインとなる出入口である。
次の画像は東口。警察署、消防署方面を向いており、近くのサラリーマンご用達的な出入口ではなかろうか。
そして第3の出入口は西口の直ぐ南脇に、趣のある通路の奥にあるのだ。会計を済ませた後にレジの横から出る事が出来るので、私は帰り際に利用する事が多い。
まだまだ紹介しきれていないこちらのお店の楽しき魅力は多々あるのだが、皆さんに是非とも足を運んでいただき何処かで教えて頂けると嬉しく思います。
紹介しているブログはこちら!
http://ameblo.jp/fmk3776/entry-11969742582.html