カレーやラーメン、餃子に大衆酒場など、様々なグルメジャンルに特化して食べ歩きをされている著名ブロガーがキュレーターとなり、選りすぐりのグルメ情報を毎日お届けしている「メシコレ」。今回は、キュレーターの皆さんの食べ歩き事情やグルメトレンドに迫るインタビュー企画として、大阪を中心に、関西エリアで幅広くカレーやスパイス料理を食べ歩いているTAKさんにお話を伺いました。
2016年6月に発売された「ぴあMOOK関西 究極のカレー関西版2017」の「究極のカレーAWARD関西」の審査協力も行ったというTAKさん。今回は、関西を中心としたカレーやスパイスカレーの事情、話題のカレーイベントなどについて語っていただいています!
カレーの概念を覆す味を知り、スパイスカレーに開眼!スイーツからカレーマニアに転身
●まずはじめにTAKさんが食べ歩きをはじめたきっかけを教えてください。
元々はスイーツ、特にフランス菓子が好きで、休みの日は朝からパティスリーに並ぶほどどっぷりはまっていたんです。そんなとき、評判を聞いて入ったカレー屋さんがあったんですが、そこで食べたカレーが今まで食べたカレーの概念を覆すほどのものだったんですよ。今にして思うと、これが『ヤムカレー』(現在の『旧ヤム邸』)のご当地カレーと呼ばれつつある大阪スパイスカレーでした。
これをきっかけにスパイスカレーというものを知って、カレーをひたすら食べ続けるようになりました。そのうち、いつの間にか甘いものへの欲求がなくなっていって、カレーにシフトしていったという感じです。
▼TAKさんに紹介いただいた「旧ヤム邸」の記事を読む▼
【大阪】大正レトロな空間で味わう名店の爽快スパイスカレー
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/6004/?from_article
●なんと!甘いものから、辛いものへのシフトとは初めて聞くパターンです。今はどのくらいの頻度でカレーを食べ歩かれているのですか?
特に食べる軒数を決めているわけではないのですが、1日1回は必ず何かしらカレーやスパイスを扱うものを食べていますね。コンビニで何かを買う場合でも、カレー味のものを好んで買っていたり、もう習慣になっていますね(笑)
●1日1回、必ずカレーやスパイス類を食べるとはすごいです・・・! ちなみに、カレーの食べ歩きをブログにしたのはいつ頃からですか?
スイーツからカレーにシフトしたのが4~5年前なので、そのシフトとほぼ同じ時期に個人ブログをはじめました。ブログの更新は切らしたくないので、ほぼ毎日書くようにしています。以前行ったお店がどんな味だったのか、かなり昔に行ったお店だと忘れてしまうので、自分で後で見返したりもします。それを見て思い出しながらもう一度同じ店に行って、どう変わったかを比べたりすることもありますよ。大阪は最近カレーの新店の出店ペースがすごくて、なかなか既存店まで行くのが難しいのですが、定期的に通いたいなと思っています。
”間借りカレー”をきっかけに新店ラッシュ!徐々に広がる「大阪スパイスカレー」
●大阪ではカレーの新店ラッシュということですが、それも踏まえて昨今の大阪のカレー事情を教えてください。
大阪のカレーの新店出店ペースですが、確実に月1店舗は出ていますね。新店が出やすくなった理由としては、昼間はやっていない居酒屋やBarなどの店舗を間借りして営業する「間借りカレー」が大きなきっかけになっているといえますね。こういったブームともいえるような出店の勢いは、ここ1~2年の間に起きていますが、これは今までに蓄えられていたものが一気に爆発したような現象じゃないでしょうか。
新店をまわって感じるのは、総じてレベルが高いということです。ただ、どこのお店もある一定レベルには達しているのですが、逆に飛びぬけているお店もあまりないという印象です。 “優等生”はいっぱいいるんだけど、すごく飛びぬけた天才はいないという感じといいますか。先人の方たちがすごすぎたという感もありますけどね。
大阪スパイスカレーが知られるようになったのは3年ほど前ですが、そこからじわじわと盛り上がってきて、ここ2~3年で一気にはじけたんだろうと思います。今から4~5年ほど前は、スパイスカレーのお店が梅田の一等地でお店をやっているなんて考えられませんでしたから。今でこそ『旧ヤム鐵道』(『旧ヤム邸』の3号店)がLUCUA1100(ルクア イーレ)に出店したり、スリランカカレーの『ポンガラカレー』が梅田の阪急百貨店の地下にできたり、マニアだけではなく一般の方にも徐々に広がってきている感じがします。
▼TAKさんに紹介いただいた「ポンガラカレー」の記事を読む▼
大阪カレー界に激震!梅田ど真ん中にスリランカカレー新店襲来
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/8498/?from_article
●なるほど。新店の出店ペースや一等地にお店ができるなどという動きに加えて、関西ではカレーイベントが盛んに行われていると聞きました。
そうですね、何かしらのカレーイベントが2ヶ月に1回は行われています。たとえば「カレー事情聴取」や「カレー見聞録」、「口癖はカレー」などがあります。大きいものでは、関西で最大規模の「カレーEXPO」がありますね。
「カレー事情聴取」や「カレー見聞録」など、1店舗の中でいろんなカレー屋さんが集まってイベントを開く小規模なイベントから、大企業も絡んだ大規模なイベントに徐々にシフトしてきているところもあるので、それだけ一般の方にも目に留まる機会が増えてきていると思いますよ。
●ちなみに、そういったイベントに来るのはどういった方が多いのですか?
今年の9/22、24、25に3日間、万博記念公園で開催された「カレーEXPO」に2日間顔を出してきましたが、ほとんどは一般の家族連れや友達同士で来ているという印象を受けました。おそらくマニアといわれる食べ歩きしている人たちは一握りだと思います。
テレビなどでも紹介されましたし、おそらく「こんなイベントやってるんだ、行ってみようか」という感じで来ているのだと思います。
小規模イベントも含めて、だいたい各店舗が1日のうち午前中、もしくは午後の時間帯だけ設置するんです。でも「カレーEXPO」はイベント開催中の3日間、毎日朝から夕方までものすごい数を作らなければならなかったのでカレー店の方々はとてもハードだったと思いますが、イベントは盛況でしたね。
音楽とカレーの意外な関係!曲作りとスパイスの調合には共通点あり!?
● “音楽×カレー”をテーマにしてやっているイベントもあると聞きましたが、詳しく教えてください。
先日、東京のカレーキュレーター・カレー細胞(H.Matsu)さんともお会いした『wanna eat CURRY』というイベントはまさにそうです。これは音楽とカレーのコラボで、DJやアーティストを呼んでライブを見ながらレーを食べるというイベントです。音楽とカレーが同じくらい主体的で、どちらも楽しめるというタイプ。他のイベントは、どちらかというと音楽のほうが主体で、そこにカレーもあるという形が多いですね。
“間借りのパイオニア”と呼ばれている『谷口カレー』さん主催の「カレー大サーカス」というイベントがあるんですが、これは音楽を中心にしたイベントで、カレーは振る舞いでついてくるんですよ。本来はライブを見に行くものですが、実はカレー食べたさにライブに来るという人もいたりします(笑)
こういった音楽系のイベントが多いのは、たとえばカレー屋さんをしながら現役でバンドをやっている方がいたり、大阪のカレー屋さんの中に音楽に携わっている方が多いからだと思います。実際、音楽活動をしながらカレー屋さんをしている方はよく「曲作りとカレーのスパイスを組み合わせるのは似ている」といってますしね。
また、スパイスカレーの場合、最近はいわゆるスリランカやインドなど現地系のワンプレートスタイルが多く取り入れられてきています。いろいろなものを複数盛り付けるので色彩が豊かですし、それだけに盛り付けのセンスにこだわりのあるお店が多くなってきていますね。特に、女性が店主のカレー屋さんの場合は、きらびやかで華やかな盛り付けという印象です。
▼TAKさんに紹介いただいた「谷口カレー」の記事を読む▼
大阪カレー界を担うルーキー続出!!宿借り系カレー店10選
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/8498/?from_article
他ジャンル同士のつながりがあるのが特徴的!関西のカレー店事情
●「曲作りとカレースパイスを組み合わせるのは似ている」とは名言ですね!ちなみに今話題に上がったスリランカカレーは東京ではあまり馴染みがないですが、関西はどうですか?
スリランカブームがはじけてきたのがここ1~2年のことなんですが、元々大阪のスリランカ料理の起源は大阪万博までさかのぼるんですよ。当時、万博に世界の料理を出すブースがあって、そこに初めて登場したスリランカ料理がそのまま日本に残り、それが基礎になったといわれています。
これまでは、大阪の古参といわれる『WASANA』や、16年ほどやっている日本人店主の『カルータラ』などがありましたが、『ロッダグループ』というお店が口コミでじわじわと知られてくるようになり、さらにカレーブームが火付けとなってスリランカ料理が注目されるようになりました。
今は、どちらかというと現地の人がやっているお店より日本人が作るいわゆる現地創作系の、現地の味に自分の解釈や創作、“和”の要素などを取り入れたスリランカカレーのお店が増えてきていると思います。
東京にもいいお店はもちろんあるのですが、シェアという意味であまり数が多くないですね。おそらく関東では、スリランカ系をはじめ、インド系やネパール系などジャンルごとにコミュニティが強く、他ジャンル間でのつながりがあまりないのではないかと思います。
それに対して、関西は各ジャンルのコミュニティが強くないので、他ジャンル同士のつながりが結構あるというのが特徴的かもしれません。日本人がやっている大阪の南インドカレー店『ゼロワンカレー』とネパールカレー店『ダルバート食堂』、そして神戸のスリランカカレー店『カラピンチャ』の3つが集まってコラボする、その名も「風だ(仮)」というイベントがあるんですが、これはまさに横のつながりを生かした、他ジャンル同士のつながりですね。
”タテ社会”のラーメン業界、”ヨコ社会”のカレー業界
●最近は、日本人の作る現地創作系のスパイスカレーが増えてきているんですね。ところで、そういった新店を出される店主さんは、どこかのお店で修行をされていたりするのでしょうか?
これはラーメンと対比するとおもしろいんですが、ラーメン屋さんはお店を出すときにだいたいどこかのお店で修行をしているんですね。それに対して、カレー屋さんは基本的に修行をしてからお店を出すということがほぼないんです。どこかのカレー屋さんで以前働いていたというのはまれで、ほとんどが独学だったり、現地へ行って覚えたりということが多いです。ラーメンと比べるとカレーは振り幅が広いので、独学でもちゃんとしたものが作れるんだと思います。
ラーメンやうどん業界は、そういった意味では親方がいて弟子がいるような「タテ社会」ですが、カレー業界はいろんなお店と個別、あるいは独自につながっていて友達関係のような「ヨコ社会」といえますね。まさしく『バビルの塔』の店主、福田さんがいった名言「ラーメン、うどんはタテ社会。カレーはヨコのつながり。」の通りだと思います。
●なるほど、今日はたくさん名言がでましたね!(笑)ちなみに、TAKさんの今後の目標は何かありますか?
ブロガーとして続けている中で、読んでくれる方が増えてきたので、そろそろ何らかの形で自分が主催するイベントをやってみたいですね。カレーフェスのようなお店を集めて行うイベントでもいいし、関西のラーメンキュレーター・尼崎のおおさかさんが主催されている「らぁ祭」のようなラーメンスタンプラリーのようなイベントと共催するようなものなどもいいなと思っています。作り手と書き手、そして食べ手がすべてつながるような、そんなイベントをやりたいなと思っています。
●それでは最後に「メシコレ」読者に一言お願いします!
まだあまり知られていない創作的なスパイスカレーですが、あまりビビらずに(笑)ぜひ一度足を運んでみてください。これまでに見たことがなかった、ちょっと違う世界が見えると思いますよ!
いかがでしたか?今回はカレーキュレーターのTAKさんに、関西を中心としたカレーやスパイスカレーの事情、それに関わるイベントなどついて幅広くお話しいただきました。インタビューを読んでTAKさんのことをもっと知りたいと思った方、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね!
▼TAKさんの他のメシコレ記事を読む▼
https://mecicolle.gnavi.co.jp/curator/kareota/
▼TAKさんの食べ歩き情報はこちら▼
http://kareota.com/
(撮影協力:NOMSON CURRY)