今や全国的な知名度を獲得した感のある【台湾まぜそば】。その発祥の店である、名古屋市中川区の『麺屋はなび 高畑本店』には、地元客はもちろんの事、週末ともなると他県から【聖地巡礼】とばかりにやってくる遠征者の姿も多く見受けられ、その人気は未だ衰え知らず。一時的なブームに終わらず、既に【新・名古屋名物】と呼ぶに相応しい存在感にまで成長した。
その名古屋市中川区を中心とした名古屋市西部は、名駅や栄といった繁華街と比べラーメン店の数こそ少ないものの、他にはない個性を放つ良店が点在するエリア。そのうちの幾つかは、看板メニュー以外にも自店のエッセンスを注入した【台湾まぜそば】に準ずるメニューを提供しており、いずれも独創的かつ人気が高い。今回は、まさに群雄割拠の様相を呈する名古屋市西部の【台湾まぜそば】戦線を、『麺屋はなび』を含めた5店を挙げ紹介したい。
1.まずは聖地巡礼!『麺屋はなび 高畑本店』の元祖台湾まぜそば
2008年のオープン以来、着実に店舗数を拡大。2014年7月には遂に東京進出を果たし『麺屋はなび 新宿店』をオープン。2015年にはセカンドブランド『担々麺はなび』の展開を開始するなど、まさに向かうところ敵なしの快進撃を続ける【麺屋はなび】グループの総本山がここ『麺屋はなび 高畑本店』。
その勢いの原動力である看板メニュー「元祖台湾まぜそば」は、序盤こそ醤油ダレ由来の和テイストを少々感じるが、2~3口目辺りから【台湾ミンチ】が徐々にその威力を発揮。持続性のある辛味と牛豚合い挽きミンチの旨みで、モチモチの太麺をグイグイ食わせる。舌先に残る辛味は食べ進める毎に蓄積し、それがそのままヒキの形成へと直結。刻み生ニンニク&ニラのフレッシュな香味も後押しし、怒涛の勢いで完食へと導く設計に、発祥店ならではの説得力が垣間見える。
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2.超濃厚煮干×歯切れの良い自家製麺!『こだわり麺工房 たご』のにぼし台湾まぜそば
2000年の中村区での創業以来、屋号に偽りなしの【こだわり自家製麺】を提供。2015年4月に現在の中川区の地に移転した、名古屋における自家製麺店の雄『こだわり麺工房たご』。麺の美味さと双璧を成す同店の特長が【煮干】、全国的なブームになる前から独自にド濃厚でマッチョな煮干スープを開発。名古屋市内をはじめ、東海のラーメンシーンに多大な影響を及ぼした立役者だ。
そんな名古屋随一の煮干使いの名手が作り出す「にぼし台湾まぜそば」は、押しも押されぬ同店の一番人気の品。膨大な手間暇をかけて一切のエグみを排除した、自慢の【超濃厚煮干豚骨スープ】をソース的に用いて、器の中で醤油ダレとミックス。煮干でまんべんなくコーティングしたかのような麺への密着度は圧巻だ。
その自家製中太麺は、強靭なハリと歯切れの良さが身上。ヘビィな組み立てをもサクサクと食べさせる軽快さは、この麺なくして生まれない。煮干の旨みの後から、台湾ミンチの辛味がじわっと舌へ降り立つ時間差攻撃も、ベテランらしい巧妙さが光る。全パーツの良さが時系列で満遍なく味わえる、バランス感覚に富んだ一杯だ。
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3.名古屋つけ麺シーンの首領!『つけ麺丸和 春田本店』の汁なし海老塩台湾
かつて『江古田丸長』(現在は閉店)を営んでいた坂口嘉六氏を義父に持ち、そのイズムを体現すべく2007年に創業。丸長流を独自に進化させた絶品の自家製麺で、名古屋及び近郊の人気ラーメン店の自家製麺化ムーブメントの発端を成した名店、『つけ麺丸和 春田本店』。
現在は名古屋市内をはじめ愛知県内で4店舗を展開。さらに私のメシコレ記事
台湾つけ麺に中華そば!自家製麺の個性が咲き乱れるラーメン・つけ麺4選
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/9201/
で紹介した『つけ麺丸和 各務原分店』を輩出するなど、名古屋近郊でのつけ麺普及にも多大な貢献をしている。
台湾まぜそばに準ずる品として「汁なし台湾」があるが、今回紹介するのは「汁なし海老塩台湾」。味付けの軸には塩ダレを使用。スッキリした組み立て故に、自慢の自家製中太麺の風味がキッチリと舌や鼻腔に届く。何処となくうどんにも似た、フワッと軽やかな麺の食感と口どけの良さが、他店と比べ多めの麺量でもサラリと食べさせるカギ。小海老の香ばしさや別皿で供されるレモンの酸味も、軽快な味わいに貢献。別皿で供されるニンニクで、中盤辺りにブーストをカマせば一気にヒキが向上。一寸の食べ飽きも感じさせない、実によく考え抜かれた一杯だ。
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4.上品さと痛烈な辛さの見事な融合!『麺屋 いえろう』の台湾油ーメン
名古屋の淡麗系を代表する名店『麺家 喜多楽』で修行の末、2014年6月に創業。名古屋では珍しい【牛骨スープ】と、師匠譲りの無化調淡麗な味わいを武器に、独自路線を開拓中の『麺屋 いえろう』。今年10月に全メニューの完全自家製麺化を敢行するなど、名古屋ラーメンシーンの若手では指折りの注目株だ。
今回紹介する「台湾油ーメン」は、 まず醤油の風味が死なないギリギリのラインまで攻めた辛さが痛快。辣油自体の香味も芳しく、麺の熱で温められて香味が立ち昇り、嗅覚を揺さぶってくる様も秀逸。そして、平打ち気味の自家製中太麺が実に良い。啜ればチュルチュル、噛めばモチモチ、啜り甲斐ある長さも、麺好きのツボをよく理解した作り。粗めに挽いた【台湾ミンチ】は噛んで食べる楽しさがあり、食べ応えにキチンと寄与。それでいて、この店らしくスッキリと品のある仕上がり。先述のように牛骨や清湯がフィーチャーされる機会が多い店だが、このメニューも必食の名品だ。
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店名:麺屋いえろう
住所:愛知県名古屋市中川区中野本町1-37
Facebookページ:https://www.facebook.com/ramenyellow/
5.名古屋のご当地【好来系】の異端児!?『らーめん専門店 拉ノ刻』の台湾油そば
名古屋のご当地ラーメンの1つ【好来系】。本家・弟子筋の店で計20店舗近くが名古屋を中心に点在するが、その中でも異彩を放つのが、2004年創業の『らーめん専門店 拉ノ刻』。従来は非常にコンサバティブなジャンルで、基本的には醤油味だけであった好来系ラーメンに「塩」「味噌」をラインナップしたり、汁なしや鶏白湯も提供するなど、同系店にはない多彩なメニューで好来系ファンのみならず幅広い客層に支持されている人気店だ。2014年6月には店舗リニューアルに伴い、全メニューを自家製麺化。メニューによって使用する小麦粉の配合を変えるなど、好来系の枠に収まらない自由度の高さが特長。
今回紹介する「台湾油そば」は、コクのある甘辛醤油ダレを満遍なく和えた自家製太麺を全面的にフィーチャー。【台湾ミンチ】の辛味はこの部類ではかなり控えめで、ほんのり感じる程度。その僅かな辛味が麺が持つ小麦由来の甘みを引き立てている。この店のカラーが如実に出た、ヒキと食べやすさのバランスが絶妙。「辛いモノはそこまで得意じゃないが、台湾まぜそばを食べてみたい」という方には、まず本品を推薦したい。
また、本文とはほぼ無関係だが、ジェラートマシンの名門・カルピジャーニ社(イタリア)製のソフトクリームフリーザーを所有。これで作られる「ソフトクリーム」が実に傑作。良い意味でしっかりと乳臭さを感じられる濃密な味わいと、舌を包み込むような心地良い粘度で、麺を楽しんだ後の口中にリッチな余韻をもたらす。訪れた際には必食のアイテムだ。