薪窯への強いこだわり
オープンは2013年の12月。
仙台の有名店、Au Fournil Du Bois(オ フルニル デュ ボワ、以下「フルニル」)の千葉彩乃シェフが独立、仙台市郊外の古民家を改装して薪窯焼成のパン店を開業しました。
薪窯にこだわり、自作。店の脇には薪が高々と積み上げられ、窯にくべられる火を待っています。
元はお茶屋さんだったという店舗の改装はご主人の協力を得てDIYで行ったそうです。元々あった茶箪笥なども生かした、レトロモダンでナチュラルな内装はお二人の共同作業で誕生しました。
なによりもパンが映えるシンプルさに、千葉シェフのパンへの情熱や愛情という名の感情が表れていました。
復興への願い、東北の粉を挽いて東北のパンを焼く
「麦家」には製粉室があり、粉も挽いています。
フルニル時代からのもうひとつのこだわり、地産地消のパン作りを実現するため、千葉シェフは福島県で栽培された東北の小麦を、ストレスを与えないように小さな石臼で、丁寧に、ゆっくりと、挽いています。
粉を挽いて、薪をくべ、生地を仕込み、パンを焼き上げ、灰を処理する。女性がひとりでそれをやり遂げるには体力だけではなく、「覚悟」が必要です。
「覚悟」を構成する一因には、東北の復興を願う気持ちもあると私は感じました。
街中、観光地、各地に残る震災の爪痕…被災地で暮らしたことのない我々には測りかねる傷が人々の心に潜んでいることは、仙台を訪れるごとに感じずにはいられません。そこで生活する千葉シェフが東北の粉を選び、それを最高に美味しいパンに仕上げることに表れているのは自身のパン作りへのこだわりだけではないと、確信しています。
カフェ営業で「パンの魅力」を発信
千葉シェフは、パンの美味しさを伝える手段としてカフェの営業もされています。
時々、手が足りずに休業を余儀なくされることもあるようですが、決して廃業はしていません。
ぶれることのない、強い意思で焼き上げられるパンは、女性シェフの焼くパンに対しては滅多に使わない表現ですが、「骨太」。がっちりと底面が固く、上面は焦げるギリギリ。クラムはそんなクラストからは想像だにしないみずみずしさで、ナイフに吸い付くほどの保水率です。
まだクラストがガリッと音を立てるほどの焼きたての状態で、それを引き立てる手作りデリでランチが食べたくて、事前にカフェを予約しようと連絡してみたのですが、残念ながらその時は休業中でした。再開は夏前頃とおっしゃっていましたが、訪問前には確認してみてください。
旬の素材、国産の粉、自家製酵母の絶品パン
カフェでは食べられませんでしたが、まだほの温かいパンを前にどうしても我慢が出来ず車に戻るやいなや早速試食。
小気味よい音を立てるクラストを抜けた後に、押し戻されるほどの弾力のあるクラム。小麦の持つ甘味、旨味を最大限に引き出し、野趣で大胆な味わいが緻密に計算して作り出されていました。素材と窯を知り尽くして初めて作れるパン、そんな感動を口の中から鼻に抜ける爽やかな酵母と小麦の香りが増幅してくれました。
特にクラストの薪窯独特の香りが飛んでしまうので、できれば冷凍せずに食べきりたいのですが、そのチャーミングすぎる姿に約2kgのカンパーニュと今年最後というディンケルを思わずホール買いしてしまった私はそれぞれ半分ほどを泣く泣く冷凍庫へ。さらに季節限定のトマト、伊予柑と、欲望を抑えきれずに追加購入買いをしてしまったものも、冷凍庫入り。
でもせっかくのパンをダメにしてしまっては元も子もないので致し方なし!保存した分はゆっくりと味わっていこうと思っています。
仙台駅から少し距離があるので、車がないと行きにくいお店ではありますが、仙台を訪れたならば絶対に行くべきとおすすめしたいパン店です。
紹介しているお店はこちら!
- 麦家
- サンドイッチ・パン屋
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