ご当地グルメ研究家の椿です。
冬の間にたくさん食べたいもの。
それはダンゼン鍋料理!
寄せ鍋、しゃぶしゃぶ、すき焼き、湯豆腐、いろーんなお鍋があるが、今夜は、ある名物鍋を食べに東京・荒木町へやって来た。
到着したのは、この地で30年近く続く、「桃太郎」というお店。
テーブル席とお座敷があり、一般的なメニューが並んでいる、ごく普通の居酒屋さん。
ハイボール飲みつつ、まずはお刺身なんかつまんじゃったりして。
この日は、天使の海老がオススメだったので、本まぐろ、しめ鯖と共にいただく。
でもここへ来たら食べなきゃいけない看板メニューがある。
それが、1987年に先代のご主人が考案した桃太郎鍋だ。
あれっ、何だコレ???
えーと。
安心してください、キッチンペーパーですよ!!!
これはアク取り用のキッチンペーパーなので、食べられません(笑)
具材はこの通り。
桃太郎鍋とは、野菜がふんだんに使われている野菜鍋なのだ。
こだわりぬいた21種類の具材で構成されている。
小松菜、チンゲン菜、サニーレタス、大葉、エゴマ、かいわれ大根、せり、ニラ、黄ニラ、クレソン、レタス、水菜、しめじ、えのき、なめこ、まいたけ、ごぼう、にんじん、冬瓜、豆腐、豚肉、牛ほほ肉。
・・・うん?21種類以上あるじゃん(汗)
私が確認できたのは以上。
醤油ベースの出汁の中に、冬瓜、にんじん、ごぼう、牛ほほ肉が入った状態で、鍋が卓上コンロに置かれる。
最初に、豚肉、キノコ類と豆腐を入れ、野菜を順番にサッと出汁にくぐらせて食べていく。
先になめこを入れるとぬめりが出てくるせいか、野菜に出汁が絡みやすくなる。
お肉は岡山県産のものを使用しており、牛ほほ肉からジワジワと旨味が出てくるので、煮込むほどに美味しい。
先代のご主人が考案したときは、ほほ肉は完全に出汁用で、食べるのは禁止だった。
この出汁をついついスープのようにゴクゴク飲んでしまうのだが、途中で継ぎ足してもらえるので、飲み干す心配はない(笑)
しゃぶしゃぶのように鍋の中で葉っぱ類を泳がせて口へ入れると、「ああ、大葉って苦味があるんだね」とか、「かいわれのシャキシャキ感いいよなぁ」と、野菜本来の食感と風味を楽しめる。
野菜たっぷりなので、ヘルシー志向の人や女性にも嬉しい。
黄ニラは中華食材としてはよく見かけるが、岡山県の特産品でもある。
火を通すと柔らかくて甘みが増して美味しい。
・・・・・・そう。
何度かこの店に足を運んでいるのだが、
先代のご主人が岡山県出身だということ、使用する豚肉は絶対に岡山県津山市のものだというこだわり。
そこで数年前にふと気づいた。
あっ、これって津山の『そずり鍋』なんじゃないの!?
岡山県は瀬戸内地方ではあるが、津山という地域は海からは遠く、鳥取県に近い山間部で、昔から、ホルモンを含めて牛肉がよく食べられている。
その津山には、醤油ベースの出汁に“そずり肉”と野菜をたっぷり入れた、『そずり鍋』という料理があるのだ。
一般的には聞き覚えのない“そずり肉”という言葉は、牛の骨にくっついた肉を「そずる(そぎ落とす)」…という意味からきている。
マグロの中落ちみたいなイメージだと思えば、美味しいってのは想像つくでしょ?
津山で食べられている『そずり鍋』は、牛肉の“そずり肉”を使うが、骨からこそげ取るわけだから、飲食店で提供しようと思うと、ずいぶん手間がかかるに違いない。
それを東京のこの地で提供するにあたり、牛ほほ肉と豚肉にアレンジしたのではないのだろうか。
現在の店主・千葉さんや他のスタッフの方にも尋ねたこともあるのだが、残念ながら、2011年に先代のご主人が亡くなっており、詳しいレシピも残さなかったということで、真実はわからない。
しかし、この『桃太郎鍋』は絶対に『そずり鍋』に違いない。
まあ、もし違ってても美味しいからイイか(笑)
ちなみに、この桃太郎鍋は一年を通して食べられるので、真夏にエアコンで冷えたカラダを温めるために訪れるのもおすすめ!
一度野菜たっぷりの『そずり鍋』をお試しあれ。