6月8日に関東甲信越地方は梅雨入りしました。
明けたら夏本番。春は目白押しだったパンのイベント、出版ラッシュも落ち着いてきていますね。
気温で消費量が左右される食品は多々ありますが、パンもそのひとつ。気温と反比例するため、これからの時期は減少傾向を示します。食欲全般が落ちる季節ですが、その中でも特に減少率が目立つのは、パンは特に食べる時に水分を必要とするからとよく言われます。
幼少期には歯の治療が難しかったほどの唾液量を誇る私にはなかなか共感ができないのですが、夏の食欲減退は大きく首を縦に振らざるを得ません。
私にとっては、暑い夏で変わぬ食欲を抱けるのがパン。特にお料理との相性ばっちりのパンは盛夏でも食べ過ぎてしまうアイテムです。
レストランでもパンにもこだわるお店が増えています。手作りする店、有名店のパンを仕入れる店、近所の繁盛店のパンを買う店…各店それぞれ事情が違う中で、「自分達の料理を最も引き立ててくれるパンとは」というお題に答えを導き出しています。
パンは「主食」や「基本的食糧」として食べるという行為の中心に位置する食品でありながら、存在感的にはメインの料理を引き立てる脇役。この難しい立ち位置を見事にこなす、絶品食事パンが食べられる都内レストラン(注)、まだまだあります。前回ご紹介した「パン通厳選!自家製パンが主役級に美味しい都内レストラン3選」の記事に続き、もう3軒まとめてみました。
注)パンはディナーのものを基準にしています。お店によってはランチとディナーでパンが異なる場合がありますので、気になる方はお出掛け前にお店にご確認ください。
【築地】和食だけどパン。和の要素を盛り込んだパン、“わぱん”でまずはお腹を落ち着けて…
築地「はしば」は和食のお店です。が…開店当初から、夜のコースの最初に出てくるのは、パンとパテ。
なぜ?と思われるかもしれませんが、これには「空腹という名のソースをかけることなく美味しいものをじっくりと味わって欲しい」という店の心意気が込められているのです。
だからといって、パンは単なる腹膨らましではありません。女将さんが国産小麦と天然酵母で生地を仕込み、和食の職人であるご主人がひと手間加えた野菜や果物を使って仕上げた自家製パンは、噛むほどに味わい深い自慢の一品です。
素材も作り手の持つ技術も和風、だから「はしば」ではそれを「わぱん」と名付けています。その名の通り、意外にも和食や日本酒とも相性が良く、目と鼻の先にある築地市場で仕入れた新鮮な魚とも相性抜群。マグロの赤身の刺身や頬肉の味噌焼きなどを自家製パンに挟んだ「わぱんdeごちそう」サンドイッチも昨年から始めました。月2回ほどのペースでこのサンドイッチをメインにしたパンランチを開催するほか、予約制で夜のコースの締めとしても提供しています。
和食の店でそこまでパンにこだわる理由は?「はしば」で食べて、感じて下さい。
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【人形町】フランスの星付きレストラン、ブーランジェリーで体得した技がきらりと光る粋なビストロ
人形町駅から水天宮方面へ向かって、昭和レトロな商店街「甘酒横丁」を途中で左折、10数メートルのところにあるのが「Irreel」です。
内装は、自然木を多用した空間にアンティークの家具を配したナチュラルモダン。恵比寿から白金、そして人形町へと場所を変え、年齢を重ねる中で“驚き”から“寛ぎ”へ料理で表現するものを変えた島田シェフの姿勢が表現されているようにも思えます。
下町独特の親近感が、商店街の雑多な雰囲気とは一線を画す洗練された空間にも感じられる意外性、そして豊かな経験に裏打ちされた確かな技術力を駆使して作られた料理の数々、使用する素材の豊かな風味、この店をチャーミングだと感じる要素は数えればきりがありません。中でもコストパフォーマンスの良さは最大の魅力でしょう、これだけの料理を「日常」と捉えられる範囲で食べられる幸せはなにものにも代えがたいのではないでしょうか。
鉄板に大きく焼きあげて切り分けたフォカッチャ、全粒粉の田舎パンなど、パンも飾らない「日常」のパンが供されます。
素材の持ち味を活かした、という共通点でシンクロするパンと料理のペアリングを楽しみに、ふらりと立ち寄りたいお店です。
*店名の二つ目のeの上には、本来右上から左下への斜め線の補助記号(アクサンテギュ)が付きます。
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【市ヶ谷】20超えの前菜盛り合わせ、より楽しませる名脇役はサルディニアの名物パン
ビルの狭間の小道を入り、さらに地下へ…ロマンチックもしくはムーディーとは表現し難いアプローチからは想像が出来ないサプライズが待っているのが「Rocci」です。
早い時間に伺うと、カウンターの中では流れ作業で全てのコースで供される前菜盛り合わせが盛りつけられています。2人、もしくは3人が一定のスピードで手際よくお皿を完成させていく姿は見ごたえがありますが、なによりも私達が目を奪われるは、そのお皿が目の前に置かれた時です。
規則正しく等間隔に、角度を揃えて置かれた20種を超える品数の前菜を目にした瞬間、歓声を上げない人はいないでしょう。まずは目で、次に舌で味わう出だしの「一皿」に、至極の幸せという言葉の意味を知りました。
この皿に寄り添ったのが、サルディーニャ島の伝統パン“パーネカラザウ”。薄くパリパリとしたこのパンをひと口大に割ってクラッカーのように料理を乗せたり、予め上に乗せて水分を吸わせてしっとりさせて食べたり、はたまた箸休め的にパンを齧ったり…種類豊富な皿を、何通りにも楽しませてくれました。
手打ちのパスタも自慢料理、前菜とパンでお腹をいっぱいにし過ぎないようにご注意くださいね。
同じテーマで、こちらの記事でも自家製パンが美味しいレストランを紹介していますので、ぜひこちらも読んでみてください。
▽パン通厳選!自家製パンが主役級に美味しい都内レストラン3選
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/6256/