「大勝軒」と言えば、つけ麺(もりそば)の東池袋系大勝軒と、そのルーツである丸長のれん会が有名ですよね。あるいは大きなどんぶりで麺の量も多い永福町系の大勝軒を思い浮かべる方も多いでしょう。
ところで、それらとは別に人形町系と呼ばれる大勝軒があるのはご存知でしょうか? 実は「大勝軒」と名乗る系統の中ではこの人形町系が最も古いんです。
明治38年(一説には明治42年)に人形町で創業した大勝軒総本店は、日本人によって日本向けにアレンジされた和製中華の草分け的な存在です。その総本店は数年前に中華料理をやめ喫茶店になってしまいましたが、味を受け継ぐ店が都内各所にあります。今回はそれらの店から5軒を、それぞれの焼きそばと共にご紹介したいと思います。
【茅場町】大勝軒(新川) - 大正3年創業、百年を超えた人形町系の超老舗
最初に紹介するのは中央区新川にある大勝軒。創業は大正3年(1914年)で、去年百周年を迎えました。人形町系大勝軒で現存する中では最も古い超老舗です。
写真はスタンダードな「焼そば」で、豚肉・モヤシ・玉葱・白葱を使ったあんかけタイプです。白いビジュアルと同じく味付けも飾り気のないシンプルさ。大正時代そのままを思わせる素朴な味わいの美味しさでした。
これ以外には卵黄をトッピングした純レバ丼・レバ野菜丼が人気だとか。もちろんラーメンや炒飯、餃子など定番の中華系メニューもありますので、昔ながらの味を楽しんでください。
紹介しているお店はこちら!
- 大勝軒
- 広東料理 東京メトロ日比谷線 茅場町駅 3番口 徒歩3分
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【東日本橋】大勝軒(日本橋横山町) - レトロな建物で大正時代の味と雰囲気を堪能
2軒目は日本橋横山町にある大勝軒。人形町系大勝軒の現存店では2番目に古く、大正13年(1924年)の創業です。寿司か鰻か天婦羅か、それらの料理を連想させる店構えに、まずは圧倒されてください。
写真の品はゴモクヤキソバ。前述した新川の大勝軒はマイルドな味付けだったのですが、こちらは生姜と一味唐辛子と胡椒でかなりスパイシーな味わいでした。トッピングされた薄焼き玉子が華やかですね。
ちなみにこちらのお店のメニューの何品かは、漢字表記にカタカナで広東語のフリガナが振ってあります。ヤキソバは「肉絲炒麺(ヨウシチョウメン)」、ラーメンは「肉絲麺(ヨウシメン)」。このメニューを眺めるだけでもなかなか楽しめますよ。
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- 大勝軒
- 中華料理 都営浅草線 東日本橋駅 B4口 徒歩2分
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【三越前】大勝軒(日本橋本町) - 緑の外壁とフードが目印、家庭的な和製中華
3軒目は日本橋本町にある大勝軒。創業は昭和8年。やっと大正から昭和になりましたね。フードも外壁も緑色のレトロな店舗で、「こんなところにこんなお店が!」というロケーションにあります。
写真の五目焼きそばはエビや錦糸玉子がトッピングされたなかなか豪華な品でした。麺と野菜の太さをきっちり揃えるなど、店内の家庭的な雰囲気とは裏腹に仕事が丁寧という印象を受けました。
そうそう。他のお店もそうですが、麺は硬いのと軟らかいのを選べます。パリパリ麺が好きなカタ焼きそば派の方も安心ですね。
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- 大勝軒
- 中華料理 東京メトロ銀座線 三越前駅 A1口 徒歩2分
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【浅草橋】大勝軒(浅草橋) - 昭和21年創業、味も価格も庶民の味方!
4軒目にご紹介するのは、中央区を離れ台東区浅草橋にある大勝軒。外観も店内もどの町にもありそうなごく普通の中華屋さんに見えますが、創業は昭和21年(1946年)。終戦の翌年ですね。
写真はノーマルな焼きそばを軟らかい麺でお願いしたもの。餡は他と同じく塩ベースの銀餡で、豚肉とモヤシ・玉葱・長ネギを使ったあんかけ焼きそばです。餡の旨味を玉葱の甘味が上手に包んだ、円やかな味わいの品でした。
他の店もそうですが、人形町系大勝軒の焼きそばは麺がとても特徴的です。独特な腰があって歯切れの良い麺なのです。具の豪華な五目焼きそばも良いのですが、麺を味わうならシンプルな無印の焼きそばもお勧めですよ。
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【銀座】日本橋よし町 - 大勝軒総本店の元料理長がオープンした中華料理店
最後に紹介するのは銀座八丁目にある「日本橋よし町」という中華料理店。創業は平成22年(2010年)で屋号も大勝軒ではないのですが、実はこちらの店主、かつて人形町にあった大勝軒総本店で長年料理長を務めた方なのです。
ちなみに屋号は大勝軒総本店のあった地名が由来。当時の地名は人形町ではなく日本橋芳町だったそうです。店舗は地下にあり、こじんまりしてますが、白木のカウンターで小料理屋のような趣ですよ。
私がいただいたのは肉絲炒麺(ニクヤキソバ)。正統派の味を継ぐだけあって、これまでに紹介した店とも遜色のない美味しさでした。叉焼麺(チャーシューメン)や蟹肉炒飯(カニヤキメシ)も人気とのことなので、いつかそれらも試してみたいですね。
以上、人形町にあった大勝軒総本店の味を受け継ぐ5軒を紹介してみました。創業明治38年というと、日本のラーメンの元祖と云われる浅草・来々軒の創業年(明治43年)より5年も古いことになりますね。イニシエ系のラーメンが好きでまだ人形町系大勝軒を味わったことがないという方も、ぜひこの機会に今回紹介したお店を訪問してみてください。
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- 日本橋 よし町
- 中華料理 東京メトロ銀座線 新橋駅 5番口 徒歩3分
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