香味亭 尾和
今から遡ること20年前、とある都内の喫茶店には、連日ランチにお客がカレーを求めてやって来たと言います。そして、そのカレーはナスを使ったもので、容赦ない辛さが特徴でした。常連客達は悶絶しつつも、その魅力の取りつかれてしまい、足しげく通ったものだそうです。しかし、その喫茶店は20年前に忽然と姿を消し、激辛ナスカレーは都市伝説へと変わりました。
しかし、ナント20年の時を経て都市伝説が再び出現したという情報をキャッチし、早速やって来ました。その幻の喫茶店は歌舞伎座の近くだったと聞きましたが、復活の地は新橋駅前でした。
ニュー新橋ビルは知る人ぞ知る人気飲食店のメッカであり、ランチタイムには多くの人気店に行列が出来ています。その中をかき分けエスカレーターで4Fに上がり、回廊のような通路を回ると、事前調査しておいてた「香味亭 尾和」の看板を発見!正午より15分ほど前に到着しましたが、すでに10人近くのサラリーマン客が居ます。
早速ランチメニューを確認すると、「ナスカレー」の文字があります(1,100円)。これこそ、東銀座では知る人ぞ知る歌舞伎座裏の喫茶紫苑(しおん)の名物ナスカレーの復活です。辛さは、激辛(オリジナル)、中辛、辛さなしの3段階から選べるようです。紫苑では辛さが苦手なお客にも一切手加減をしなかったのでしょう。それを明示するために、激辛=オリジナルと記してます。
早速入店して「激辛1つ」とオーダーし、自分で水をコップに注ぎます。周囲を見ると、男性客率100%である点は、ニュー新橋ビルではむしろ当然ですが、年齢層の高さが目立ちます。話題性から誘い合って来るグループ客はともかく、とりわけノスタルジーに浸った一人客が皆50代であることが明確です。これぞ都市伝説の証か。そうこうしていると、10分弱で、サラダ、ラッキョウとともにカレーが運ばれました。真っ赤な福神漬けもテーブルにあります。
カレー通には馴染みの幾多のカレーの名店で使用された白い器、ぽっこり盛られたライス。そして、予想以上に黒いカレーの色に、やみつきになる旨辛への期待が高まります。激辛料理は、真っ赤なものより黒いものの方が美味い場合が多い。良く見ると、種入りの粗挽き状の唐辛子を使っているようで、無数の赤い粒々と種が見えます。唐辛子は実は種の方が辛味が強いです。では、早速、食べてみましょう。
食べた瞬間から強い辛さに襲われます。しかし、それは辛さに劣らない濃厚な旨味と同時に来ます。色からも想像できる、じっくり時間をかけて調理された味の土台があります。野菜などをじっくり炒め、挽肉とともに時間をかけて煮込み、ナス、シャクシャク玉ねぎの順に後から加えていると思われます。私自身初めて食べましたが、確かに素晴らしいカレーです。ご飯もカレーも少な目のため、あっという間に完食しました。周囲は、激辛(オリジナル)と中辛のオーダーが半々ぐらいでしょうか。また、卵のトッピングもあるようで、常連さんは上手に辛さを和らげているようでした。
店の人の説明によれば、激辛は中辛の6倍の唐辛子を加えているとのこと。この20年は日本人の辛さ耐久性が飛躍的に増したため、今では驚くほど辛くはないです。ただ、20年前なら、「沢村栄治の速球は160Kmだった」ではないですが、世の中で最も辛いものとして人々の記憶に残っていても不思議ではありません。
ウェブ情報では、喫茶店のオーナーからレシピを伝承したサラリーマンが脱サラして開業したのが「尾和」という居酒屋であり、こちらの「香味亭 尾和」のほか「正味亭 尾和」が道の向かい側にあり、以前はそちらでカレーを出していたそうです。今でも「正味亭 尾和」にカレー目当てのお客が後を絶たず注意喚起が必要とのことです。
紹介しているお店はこちら!
- 香味亭 尾和
- カレーライス JR京浜東北線 新橋駅 日比谷口 徒歩1分
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