高円寺北口のロータリーから庚申通り商店街に入りしばらく進むと、「焼貝あぶさん」の提灯が見えてくる。この店は知る人ぞ知る貝好きが集まる店だ。
2階建ての日本家屋はいい味を出している。1階は小さくて狭いカウンター席、かなりいい雰囲気だ。でもこの日予約していたのは2階だった。奥の階段から2階に上がると正面に巨大な黒板があった。「本日の貝」と書かれた下には、平貝(愛知)、白貝(北海道)、ツノ貝(青森)、サザエ(長崎)などと全部で11種類の貝の産地が記されていた。2階にはテーブルが2つあって、奥の席には先客がいた。我々は手前のテーブルだ。
メニューにはコースや盛り合せも用意されている。貝料理おまかせコース、おまかせ貝焼盛り合せ、おまかせ活貝盛り合せなどオススメをセットにしてくれているのはありがたい。予約制のアワビづくしコース18,000円なんてものまである。
ビールを飲みながら同行者と相談したがなかなか決まらない。店員さんに相談した結果、「おまかせ貝焼盛り合せ」にした。3品1,800円、5品3,800円、8品5,800円と3種類あるが、とりあえず3品にしておいた。「出汁巻き玉子」は貝の出汁を使っている。「茶碗蒸し」にも貝の出汁。とにかく貝づくし。このこだわりがいい。
刺身は、平貝、赤貝、ミル貝の盛り合せだ。それから北海道の白貝、長崎のマテ貝、そしてホッキ貝の酒盗あえが運ばれてきた。料理は当然貝ばかりだが、種類が多いので意外と飽きることがない。
あぶさんは日本酒にもこだわっている。値段はすべて800円で、天明、旭興生もと、英君、亀齢、出雲富士無濾過生、あざくらの中どり、中屋、信濃鶴などがあった。お店の人にお願いして、料理に合わせて日本酒を選んでもらった。3人で3合ほどぬる燗でいただく。至福の瞬間だ。貝と日本酒は鉄板の組合せだと思う。
貝にも日本酒にもそれぞれ個性があって、楽しみが広がる。これほど酒飲みの心をつかむ店も珍しいものだ。