人が人を好きになるとき、その相手は、必ずしも品行方正な優等生とは限らない。品行方正な優等生とは友人どまり。それ以上の関係に発展しないことも、珍しくない。
相手がラーメン店であっても、それは同じ。破天荒とでもいうべき個性を持ち合わせたお店に、どうしようもなく惹かれることもある。
千葉県八千代市の『丸長(勝田台)』。
戦後間もない昭和22年、荻窪で創業した『丸長(荻窪)』の系譜に連なる名店だが、同店ほど個性的な店に、これまで私は出逢ったことがない。
店主は、毎日、スープの出来映えなどを多面的な角度からチェック。結果、客に提供できるクオリティに達していないと判断されれば、その日のシャッターは上がらない。
提供されるメニューも、他に比類のないオンリーワン。
中でも、一番人気メニューである「こいくちつけそば」は、ひと啜りで、スパイシーな胡椒の刺激が、無数の矢の束となって食べ手の舌蕾を貫通し、身体中の毛穴から汗を噴き出させるスープが、インパクト絶大。
しかし、このインパクトは、単なる胡椒の大量使用によって生まれるものではない。カツオ節を始めとする乾物が鋭利なうま味をキラリと放つカエシ、骨太な麺線に無上の頼りがいを感じさせる自家製の太麺などの助演陣が、堅固な土台としてスープを下支えするからこそ、主役であるスパイスの暴走が抑えられ、インパクトという正しい方向へと導かれているのだ。
しばらくの間休業していたが、今春、営業を本格的に再開。勝田台の味がまた楽しめる日が来るなんて、ラーメンフリーク冥利に尽きる。
紹介しているお店はこちら!
- 丸長
- ラーメン 京成本線 勝田台駅 A1口 徒歩3分
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