古くから国際観光都市として他の地域に先駆け、その観光客数は毎年堅調な増加傾向にある岐阜県高山市。年間46万人もの外国人観光客が宿泊に訪れる(平成28年 観光統計/高山市)、世界中が注目する人気観光地だ。
アニメ映画「君の名は。」の舞台モデルになった事も、その人気を後押し。劇中には主人公が【高山ラーメン】を食べるシーンも登場し、高山市内のラーメン店で外国人客を見かける事もしばしば。
老舗が多い印象が強い【高山ラーメン】だが、実際には新しい世代の店が続々と台頭。今や老舗を上回らんばかりの勢いを見せている。そんな中から、JR高山駅の東に位置する「飛騨の小京都」と呼ばれるエリア周辺で、特長のある6店舗を選んでみた。旅先でのお店選びの一助となれば幸甚である。
1.これぞ高山ラーメンの新基準!圧倒的人気を誇る『麺屋しらかわ』
現在の高山ラーメンシーンにおけるニューリーダー的存在の『麺屋しらかわ』。2012年創業と歴史は浅いが、曜日を問わず常に長い行列を作る人気店だ。
メニューは「中華そば」の並と大盛、それにオプションの味玉だけという潔い構成。鶏と節系ベースの風味豊かなスープに黒胡椒を強めに効かせた、品格とパンチが同居するスープ。特に黒胡椒の加減は匠の域に達しており、あっさりなのにグイグイ引き寄せられるというパラドックスを封じ込める事に成功。
僅かに芯を残した絶妙な仕上がりの中細ちぢれ麺との相性にも疑問の余地はなく、炙りチャーシューの香ばしさをも従えた、まさに【ネオ高山ラーメン】といった趣の一杯を提供。シンプルな味だが、何度も食べたくなる黄金比のバランスは、他では決して味わえない。
加えて、来客一人一人の顔を見て、気さくかつ臨機応変に話しかける適度な距離感の接客、回転の良さが物語る淀みのないオペレーションや店回しなど、全方位的に隙が無い。
店前にできた長蛇の列を見るとギョッとするが、それほど待たずに入店できるし、何よりその待ち時間の苦労すら軽く飛び越える満足度が待っている。
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2.猪のジビエラーメンの〆にはバゲットがオススメ『中華そば専門店 M(エム)』
岐阜県に認可された「ぎふジビエ」の登録証と、猪のはく製が出迎えてくれる『中華そば専門店 M(エム)』。飛騨牛にフォーカスした同市内のフランス料理店「LE MIDI」のラーメン専門ブランドとして、2012年3月にオープン。築100年ほどの町屋を利用した店内は、山岳都市・高山市らしく一枚板で作られたカウンターが印象的。
母体の本流である飛騨牛を使ったラーメンも人気だが、今回紹介するのは冬季限定の「飛騨ジビエラーメン」。地元で獲れた猪をスープとチャーシューに使用。しっかり乳化した重厚な白湯ベースだが、旨みは豊潤でありながらキレもバツグン。サックリと軽快な歯切れの中細麺とも実によく合う。
ただしラーメンだけで終わるのはもったいない。本店「LE MIDI」で焼き上げるバゲット(プラス300円)でのシメが最高なのだ。猪ダシと僅かな醤油感のあるスープが、ザックリしたバゲット生地と合いに合いまくる。ここに、大ぶりの猪肉チャーシューを合わせても美味。飛騨高山ならではの新しい味を、ぜひお試し頂きたい。
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3.和食歴35年のエッセンスが光る、ビターな大人の味わい『麺屋とと』
和食歴35年の店主が一念発起して2017年2月にオープンした『麺屋とと』。国分寺通りから一本入った通りにあり、観光客でごった返す週末でも、町家の面影がそのまま残る落ち着いた空間で過ごせるのが嬉しい。
写真の「中華そば 並」は、そのメニュー名から王道の高山ラーメンを想像していたが、良い意味で予想を裏切るルックス。僅かに濁りが見られるスープは、どっしりとした動物系の中に煮干の香ばしさが顔を出す、ほんのりビターな大人の味わい。部位の異なる2種類のネギを添え、香りや食感にアクセントを加える小技も効いている。
こうした今っぽいテイストに高山ラーメンのクラシカルな中細ちぢれ麺という、ちょっと見慣れない組み合わせだが相性はバッチリ。丼の1/3ほどの大ぶりなチャーシューの食べ応えや、ザクザクとした歯応えのメンマなど、随所に現代ラーメンの要素を取り入れる柔軟性も見逃せない。
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4.飛騨牛の牛骨をベースにした、高山ラーメンのニューモデル『麺屋 力(りき)』
別名「小京都」と呼ばれる、高山市の古い町並みに馴染む堂々たる外観だが、オープンは2014年とかなり新しい『麺屋 力(りき)』。基本的なラーメン以外にも、濃厚つけ麺や鶏白湯など現代的な品も揃え、若者やファミリー層の支持を集めている。
今回紹介する「中華そば」は、見た目には伝わりにくいが、スープのベースに飛騨牛の牛骨を使った品。牛骨ならではの上品な甘さが先味に来るが、牛骨一辺倒にならず魚介もバランス良く配し、非常にキレのあるシャープな味わい。それでいてどこか人懐っこい味わいで、グイグイと飲み進んでしまう。
麺は高山には珍しい中細ストレート、スープの旨みを余す事なく口へと運ぶ。厚めに切り出した巻きバラチャーシューや、短冊状のメンマも主役級の存在感で食べ応えに寄与。まだまだ全国的にも少数派の牛骨ラーメンを、観光のひと時に味わってみては如何だろうか。
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5.ジューシーな唐揚げと高山ラーメンが夢の合体『食べ処 高峰』
【日本四大朝市】の1つとも言われ、高山市を代表する観光名所である「宮川朝市」。その通り沿いに2015年にオープンした『食べ処 高峰』は、クラシカルな高山ラーメンと8種類の唐揚げを提供する店。
その看板メニュー2つを合体させた「から揚げ中華」は、スープに凝縮された鶏と節系の旨みに加え、唐揚げから移る油脂感が口中を潤す、麺とスープだけでもラーメン専門店に引けを取らない完成度。
そして、もう1つの看板であるトッピングの唐揚げが猛烈に美味い!揚げたてなのは当然だが、スープに浸っても外のクリスピーな食感がほとんど失われない上に、中はむっちりとジューシーな肉質が楽しめる逸品。
また、宮川朝市をそぞろ歩きながら食べられる「カップ中華+から揚げ」セットや、朝8時~10時までの「中華そばモーニング」も提供。朝の高山観光を楽しみながら、中華そばというのも乙である。
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- 食べ処 高峰
- 食事処 JR高山本線(岐阜-猪谷) 高山駅 東口 徒歩13分
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6.伝統の中に新しさを注入、地元愛に溢れる『宮川伊吹』
高山ラーメンの名店『宮川中華そば』のご子息が2015年7月にオープンした『宮川伊吹』。父親の世代の作り手が築いた伝統を守りつつも、現代的な調理法を躊躇わず取り入れるその味に、早くも幅広い世代からの支持が集まっている。
鶏をベースにしつつ、煮干と節系がほぼ同率で前に出た、如何にも高山らしいスープの「中華そば 並」。そこに合わせる麺はクラシカルな高山ラーメンほどちぢれておらず、生地も全粒粉入りと珍しい組み合わせ。素材の旨みをしっかりと抽出したスープとよくマッチしている。
トッピングにもひと工夫。大判の肩ロースチャーシューは、盛り付け前に炙る事で香ばしさをプラス。メンマの代わりに、コリコリと食感の良い煮筍という取り合わせもユニークだ。
また、お冷は冷水ではなくストレートティーが供され、食後に喉を潤すと当時に口中が香り良くスッキリと。箸には地元・飛騨産の杉を使った割り箸を用い、麺や具を口にする時に杉の香りが僅かに鼻腔を抜ける。こうしたラーメン本体以外への気づかいも、伝統を次の時代へ進ませるチャレンジとして評価したい。
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- 宮川伊吹
- 中華そば専門店
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