夏休み、東京観光を楽しむ方も多いことでしょう。
そして夏といえばカレー。
東京に来たら是非、カレーを食べていただきたいところなのですが・・・・東京にはカレー屋が沢山ありすぎる!ざっと見積もっても4000軒から5000軒ってとこでしょうか。
ですから正直、「東京でおススメのカレー屋教えてください!」って問いにはいつも困るんです。
「おすすめはざっと100軒ほどありますが、聞きますか?」ってことになっちゃうわけで。
まあ、最近話題のお店や、注目の新店などは別の記事を見ていただくとして、
今回は、「東京のカレーを語るためには絶対外せない老舗名店」をご紹介していきましょう。
あまりに定番すぎて、あまりに偉大過ぎて、爆発的話題にはならないけれど、
カレー好きを公言するなら、行っておかねばならないお店ばかり。
しかも、今回ご紹介する5店はすべてアクセス至便、遠方からの東京旅行にはうってつけです。
行き漏らしがないよう、しっかりチェックしてくださいね。
1.【銀座】ムルギーランチをマジェマジェ!ニッポン印度料理の祖。「ナイルレストラン」
お店に入るなり、「ムルギーランチね!」と勝手に注文確認されるため、他のメニューがなかなか注文できないことでも有名な「ナイルレストラン」。
しかしここは素直にムルギーランチをオーダーしちゃってください。
「ムルギー」とは鶏肉の意。
でっかい骨付き鶏肉入りのカレーがドン!と出てきたかと思うと、
「マジェマジェしてね」と、肉をほぐし一気にかき混ぜてくれます。
ここまで完全にお店のペースに引っ張られちゃうのですが・・・・食べるとまた、とんでもなく旨いから困っちゃうんです。
テレビや雑誌に頻繁に登場した二代目、カレー本の出版などでも有名な三代目、そしてムルギーランチのオーダーを巡る攻防など、ネタが尽きない当店ですが、実は、日本カレー史にとって重要な凄い店なんです。
「ナイルレストラン」の創業は1949年、日本最古のインド料理店です。
創業者A.M.ナイル氏は南インド、ケララ州のトリバンドラム出身。
名物「ムルギーランチ」の混ぜて食べるスタイルはケララそのものでありながら、
そこに配置されたカレー、マッシュポテト、チキン、ライス、キャベツは、日本人がインド料理に親しみ、楽しめるように編み出されたここのオリジナル。
まさに日印友好料理だったのです。
紹介しているお店はこちら!
2.【上野】日本を代表する独創激辛カレー、カシミール発祥の地。「デリー」
「カシミール」と名のついた、黒くてシャバシャバな激辛カレー、みなさんも一度は見たことがあるでしょう。
それは某ファミレスのカレーメニューであったり、レトルトカレーの名前であったり・・・
「カシミール」とはインドの一地方の名前でもあるのですが、実はインド・カシミールにこのようなカレーは存在しません。
「カシミール」というカレーを生み出したのは実はこの「デリー」というお店。
故に巷に溢れる「カシミール風カレー」というモノは、「カシミール地方のカレー」ではなく、「デリーインスパイアのカレー」なのです。
そして「デリー」の功績は「カシミール」を生み出したことだけではありません。
「デリー」で修業した者によるカレーの店、いわゆる「デリー系」の名店が日本中に存在するんです。
柏「ボンベイ」、戸塚「横浜ボンベイ」、逗子「スパイスツリー」、大阪「Ghar」、福岡「ガラム」「106サウスインディアン」、小倉「ガネーシャ」・・・
さまざまな面で日本カレー史に多大な影響を与えた「デリー」本店があるのは上野(最寄り駅は湯島)。
「えっ?」と思うほど小さなお店です。
原点を求めに上野の本店へ行くもよし、ちょっと落ち着いて寛ぐなら、席数が多い銀座店を予約するのも良いですよ。
紹介しているお店はこちら!
3.【渋谷】東京カレーフリークのソウルフード。「ムルギー」
「渋谷百軒店(ひゃっけんだな)」という、大人の街に面した路地にある、渋谷カレーの伝説的名店。
戦前に仕事でビルマ(ミャンマー)に行ったご主人が、偶然現地で習いおぼえたカレーの味を知ってもらおうと昭和26年にオープン。
数多のカレー好きミュージシャン、俳優、作家たちのソウルフードとして君臨し続ける、まさに「生けるカレー伝説」です。
オーダーすべきメニューは「玉子入りムルギー」。
長い年月の中で完成された美しきデザインだけでなく、ビシッとスパイシーな味わいは今でも先鋭的。
営業時間が短いので、狙いすまして訪問してください。
紹介しているお店はこちら!
4.【新宿】恋と革命の味。日本インドカリーのパイオニア。「新宿中村屋Manna」
最初はインドからではなく、英国から「西洋料理」として入ってきたカレー。
この「新宿中村屋」は、昭和2年(1927)に日本で初めてレストランで「純インド式カリー」を提供した、日本カレー史に燦然と輝く名店。
「Manna」はその本店メインレストランです。
中村屋の「純インド式カリー」誕生、そこには壮大なバックストーリーがあるんです。
インド独立運動の志士ラス・ビハリ・ボースが日本へ亡命の際、彼を匿い支援したのがこの中村屋。
ボースは英国の追及から逃れるため隠家を転々としますが、この時、逃亡生活を支えたのが中村屋オーナーの長女であり、二人は後に結婚、2人の子供をもうけるのですが、
逃亡生活の心労がたたってか、奥さんは26歳で早逝します。
ボースは中村屋への感謝の念と、本物のカリーを日本に紹介したいとの思いから、純印度式カリーのレシピを提供、これが日本インドカリーのパイオニアとなり、今に受け継がれているんです。
お店のキャッチコピーは「恋と革命の味」。
日本のカレー文化をはぐくんだ歴史に思いを馳せてみませんか。
紹介しているお店はこちら!
5.【神保町】欧風カレーのパイオニアにして頂点。「ボンディ」
世界一の古本街であるとともに日本有数のカレーの街として有名な神保町。
本を左手、スプーンを右手で、読書しながら食べられるから、カレー屋が増えたという説が有力です。
そんな中でも「神保町カレー御三家」と呼ばれてきたのが「エチオピア」「共栄堂」「ボンディ」。
いずれもカレー史上重要なお店なのですが、特にこの「ボンディ」は「欧風カレー」というジャンルのパイオニアであり、今なお頂点でありつづける名店です。
食前に出てくるジャガバターを食べながら読書しカレー待ち、
伝統的なカレーポットに入って出てくる超濃厚な欧風カレーをライスにかけながらいただきます。
決して安くはないカレーですが、その濃厚な味わい、深み、食後に広がる得も言われぬ満足感。
簡単に真似できるものではありませんよ。