小京都と呼ばれる岐阜県高山市。戦災を免れて古くからの街並や寺院が残り、江戸時代の頃からの城下町が保全されており、外国人にも大人気な大観光地だ。
昭和13年に当初は屋台の支那そばとして誕生した飛騨高山の中華そば。戦後になると何軒もの屋台が誕生し、高山中華そばの活況期の始まりだ。
昭和30年代には屋台から店舗へと移り変わって、この地域に無くてはならないものへとなっていく。高山で「そば」と言えば「中華そば」であり、年越し蕎麦も「中華そば」を食べるというのは周知の事。市内には100軒以上とも言われる程中華そばを扱うお店があり、御当地「高山ラーメン」と謳われ、今では新しいスタイルのお店も続々と登場する勢いだ。
今回はそんな黎明期の頃から高山に在り続ける歴史的超老舗中華そば屋の中でも、私が大好きなお店6軒をご紹介させて頂くのでありますが、知人から噂で聞いた「国分寺通りは、ブラックとゴールドの分水嶺らしいよ。」という何とも怪しげなエピソードがあるので気にしながら話を進めていきたいと思います。(国分寺通り:JR高山駅から東へ伸びる、市内中心を南北に横断するメインストリート)
1.これぞ高山中華そば!ブラックスープの発祥地byまさごそば
まず1軒目は高山中華そばの始祖であるこちらのお店。昭和13年創業。国分寺通りの南側、宮川に架かる柳橋を西へ二つ目の通りを南へ入り直ぐの所。現在は三代目とその奥様がお店を切り盛りしておられる超レジェンド店。初代が営まれていた頃を知らないのだが、二代目がやられていた丼の上での「空中葱刻み」は今へと受け継がれている。シャシャシャと丼に葱を落としていき、そこへ注がれるのが高山ブラックな色濃いスープ。
鰹節、鶏ガラ主体のスープに、醤油からのカエシを直接寸胴に入れて煮込まれるのもこのお店が始めた高山中華そばの特徴だ。そこに合わせるのは、低加水で平打ちがかったチジレ細麺で、コクあるスープがまったりと絡んで美味しいのである。
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2.ゴールドスープにワンタンがゆらゆらと泳ぐ様は垂涎ものbyつづみそば
国分寺通り、鍛冶橋を西へ150mの所を北へ少し行った左手にある、昭和31年創業のこちらのお店。高山中華そばを出すお店では数少ないワンタンをトッピング出来るのが嬉しいところだ。このお店以外では全て標準の中華そばを紹介しているのだが、ツイ思わずワンタンをトッピング。この記事を書く為とは言え見栄っ張りな私を許していただきたい(^^;;て、違うのだ。この店のワンタンが大好きなのです。
タイル張りの釜戸にふたつ並ぶ羽釜にて茹でられる中華麺は、釜の隣に置いてある四角いゴールドカラーの缶から取り出される。この古くから続いているであろう所作に心トキメクのは私だけだろうか。そこへ麺とは別に時間差をおいて茹でられるワンタンをトロンと注ぎ入れる瞬間にはゴクリと喉が鳴るのだ。透き通るクリアな高山ゴールドスープにゆらりと泳ぐワンタンを啜り、スグサマ麺をと交互に頂けば至福のひと時マチガイ無しなのだ。
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3.若き日の思い出の味、高山ブラックは今も健在by豆天狗
国分寺通りから南へ。高山陣屋と高山赤十字病院の丁度中間地点にある昭和26年創業のこちらのお店。今から30年程前の冬の日。当時高山で仕事をしていた女性に連れて行ってもらった、その人のお気に入りのお店である。このお店で食べたのが始めての高山中華そばであり、以後高山に来るとこのお店で中華そばを頂いていたのは遠い日々の美しい思い出。
名古屋市金山、中部国際空港にも支店のある人気店で、その土地土地に合わせた味作りをされているのも流石なところ。時は流れて小さかったお店も今では大きく立派で綺麗になり、洗練された味の作りに変化してきているようだ。
低加水の低かん水でチジレの入った極細麺はゴワリとくる食感で懐かしい。そこに地溜のようなコクある醤油が高山ブラックの基本を作り、削り節のからの魚介出汁の効いたスープが絡んで絶品なのだ。
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4.楽しく飲んだ〆は酔い街通りで高山ゴールドをby桔梗屋
国分寺通り、鍛冶橋を西へ渡って2本目の路地を北へ50m程入ったあたりの酔い街通りにあるこちらのお店。昭和26年創業という老舗店で初代の方が長らく調理をされていたが、今では代替りされてその技術は受け継がれているようだ。
酔い街の雰囲気ある狭い路地裏にあり、昼間であっても注文を済ませて待っていると、飲んだ〆の一杯を待つ気持ちになるから不思議だ。若かりし日、友人と夜遅くまで飲み歩き、最後の〆に入ったのを覚えている。しかし何を食べてそこでどうしたのか全く覚えが無く、もしかして御迷惑をお掛けしたのではと心配していたのだが、その後何度かデカい体を小さくして伺っているが、店主から険しい表情は感じられなかったので一安心していいのかも知れない。
和食出身と聞いた先代の作り上げた高山ゴールドの淡い鶏系のスープに極細チジレ麺がジィ~ンと染みる美味さ。若き日の情けない失敗を優しく受け止めてくれる心温かい中華そばなのである(^^;;;
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5.継ぎ足し継ぎ足し旨味の高みを目指すブラックスープby和楽美
城山の杉筒谷神社下。枡形橋の東の通りを北へ少しの所にある創業60年というこちらのお店。現大将が小学生の低学年時代にお父さんが国分寺通りの宝橋のたもとで始めたというが、通りの北なのか南なのかを聞くのを忘れてしまった(^^;;現店舗はその場所からは大きく南へと移転されて中華そばとうどんをメインに営まれている。
スープは継ぎ足し継ぎ足し、定休日までも火入れを行い見守り続けている熟成の高山ブラック。旨味が溶け込んだオイルには味の基本となる片鱗がチラホラと確認でき、古くからの高山中華そばではよく見かけるソレがある。低加水の低かん水、極細麺はゴワリとした弾力で、スープが旨く絡んで楽しませてくれる。
私は食べた事が無いのだが、昨年大ヒットしたこの地方が舞台となっているのでは?というアニメ映画にあやかった「君のくみひも中華そば」なるものが土曜日曜限定で出ているので映画ファンなら必食である。
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6.玉子練り込み麺に懐かし美味いスープはブラウン?byやよいそば角店
国分寺通りから北へ少し。弥生橋の西側、通りの南に本店、北側に角店とあり、古い街並の上二之町にも支店がある昭和23年創業のこちらのお店。新横浜ラーメン博物館への出店で高山中華そばを全国区へと広めた功績のある老舗店である。
以前は名古屋の鶴舞にも支店があって、その当時としては珍しい銘木の長いカウンター席が印象的であり、何度か食べに行ったのを覚えている。そんなやよいそばでありますが、本店では無く交差点の角にあるこの角店に惹かれる私。カウンターが名古屋の鶴舞店の銘木カウンターを思い出すからであろうか。
玉子が練りこまれている細チジレ麺に、鰹節と鶏ガラからなるスープが絡むと懐かしの美味しい高山中華の味わい。そして分かってはいましたが、こちらは国分寺通りの北側にあるにも関わらず、スープは高山ゴールドではないのであります(^^;;所謂ブラウンスープなのであります。しかしながら、高山を代表する美味しい中華そばなので是非ともご賞味頂きたい。
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最後に
いきおいで書き進めましたが、国分寺通りの南がブラック。北がゴールドだという分水嶺らしいよ!という噂は絶対ではありませんでした(^^;;。しかし昭和の高度経済成長時代、高山中華そば黎明期にはそういう職人さん達の世界があったのかも知れないと想像すると少し楽しくなります。
高山を観光される事があれば、老舗中華そば屋さんの四方山話として楽しんで頂ければ幸いです。