2017年2月22日、都電早稲田駅の近くに「神田川ベーカリー」はオープンしました。
オーナーの嶋田玲子さんは、元は会社勤めをしていましたが、出産をきっかけに方向転換。二人のお子さんの子育てをしながら、「神田川ベーカリー」のある場所から徒歩で10分ほどの位置関係にある「あぶくり」というカフェを始めました。
子供は可愛い、でもやりがいのある仕事を諦めなければならないのは辛い…女性なら誰でも一度はぶつかる壁です。嶋田さんはその壁を、新しいやりがいを見つけることで乗り越えたのでした。
「地域に暮らすお母さん達にほっと一息つく場を提供したい」という嶋田さんの思いは、素材選びや空間づくりに表れています。カフェは次第にお母さん達だけでなく、たくさんの人が心と体に癒しを求めて集う店となっていきました。
日常の中にちょっとした幸せが、毎日を特別にしてくれる。それが人を、街を元気にしていく。
身をもってそれを実感した嶋田さんは、「もっとたくさんの人とその『特別』な時間を共有したい」と次のステップを考え始めました。そして、カフェのメニューにも利用しているパンのお店を開業しようという結論にたどり着いたのです。
場所は、既存の戸建住宅の1階。設計は建築事務所の代表で一級建築士でもあるご主人が、施工は可能な限り自分たちで…パン屋の開業に賛同してくれたメンバーに技術指導をしてくれる職人さんとも出会い、開業へのイメージは膨らんでいきます。
あとは資金だけ。そう、パン屋さんは開業時の初期投資が少し重たいのです。
そこで利用したのが「クラウドファンディング」。
アイデアやプロジェクトを持つ起案者が、専用のインターネットサイトを通じて世の中に呼びかけ、それに共感した人から広く資金を集める方法です。
募集期間は2016年12月から2か月間。同じ様に雑司が谷で暮らし、働く女性達とやっていく、という嶋田さんの熱い想いを支援する人々から目標額を超える資金が集まり、プロジェクトは本格的に稼働を始めたのです。
スタッフは地元の建築事務所のスタッフ、あぶくりのカフェスタッフ、雑司が谷で子育てをするお母さん。
「売れる」パンを焼けるようになるために2週間ほどの特訓があったそうです。指導したのは鳥取の人気店「ル・コションドール」の倉益シェフ。
いままでパンを焼いたことなどなかった、などと言われても信じられないくらいの素敵なパンが、いま店頭に並んでいます。
安心・安全な食材にこだわったパンを販売し、お客様がそのパンも含めた「食」を楽しむことで、街に笑顔が増え、豊かな日々を送れるようになること。それが「神田川ベーカリー」が目指すものなのだとか…パンを通して、食の楽しさを教えてくれるお店です。
営業は毎週木曜日から土曜日の3日間の11時から18時まで。季節の食材を使った期間限定商品もあるので、何度でも通いたくなるお店です。
私が食べた初夏までの限定商品「きなこあんぱん」は、抹茶の生地に黒豆のあんこを詰め、たっぷりの黄な粉を上に乗せたものでした。
あんこが顔を出した瞬間に、黒豆使用をどこにも謳わないネーミングの奥ゆかしさに驚き、思わずプライスカードを見直しにショーケースに近寄ってしまいました。新茶の季節ならではの爽やかな後味も◎、次の季節はどんな商品が登場するのだろうと期待に胸が躍りました。
ショーケース越しの対面販売は応対も感じよく、滅多に乗らない都電での帰途も楽しくて、とても充実した週末のひと時をいただきました。
私を笑顔に、そして私の心を豊かにしてくれたパンは、きっとたくさんの笑顔をつくっていってくれることでしょう。開店から3ヶ月、まだ諸々模索しながらの営業とは思いますが、これからも私たちを元気にしてくれるパンをよろしくお願いします。
紹介しているお店はこちら!
店名:神田川ベーカリー
住所:東京都豊島区高田1-11-14
電話番号:070-6971-0731
営業時間:木曜日、金曜日、土曜日
Facebookページ:https://www.facebook.com/kandagawabakery/