明治期における上野駅の開業以降、東北・北陸と東京とを繋ぐ「玄関口」としての機能を果たし、近年においては、空路で成田から入国する外国人観光客が最初に訪れる都市としての位置付けをも担う上野エリア。
同エリアは、上野から徒歩圏に位置する浅草エリアと合わせて、観光客が国内外を問わず大挙して訪れる、日本でも有数の観光地となっている。
そんな上野から浅草にかけての一帯(台東エリア)は、闊歩する人口の多さに比例するかのようにラーメン店の数も潤沢。特に最近は、東上野から田原町へと至る「浅草通り」の周辺に続々と実力店がオープンしており、東京東部屈指の注目エリアと化している。
今回は、そんな上野一帯から、新旧を織り交ぜ「ここは食べておくべき」と太鼓判を押す店舗を5軒紹介させていただく。
このエリアによく立ち寄られる方も、「あ、こんなところにこんな良店があったのか」と驚いていただければ、幸甚の極みである。
1.金曜限定で「鴨」を用いた創作ラーメンを精力的に提供する『日の丸さんじ』
2012年にオープンし、実直な内容の動物+魚介系ラーメンで確固たる人気を獲得した『さんじ』。
その『さんじ』が本年7月、金曜の11時から15時までの限定で、『日の丸さんじ』と屋号を変え、鴨ベースのラーメンの提供を開始し、ラーメン好きの間でも大きな話題となった。
「鴨」という食材と真摯に向き合い、提供期間を絞り込み、数々の創作麺を紡ぎ出す。今月(12月)、提供されているのは「鴨清湯」。オープン当初から10月まで提供されていた「鴨つけそば」から、「濃厚鴨白湯」「鴨清湯背脂」を経て、現行の「鴨清湯」へとバトンが託された。
鴨ガラのみならず鴨肉もたっぷりと使用した清湯スープは、鴨の持ち味を十二分に活かしながらも鴨のみをフィーチャーさせず、乾物等の和味と巧みにバランスさせることにより、うま味の重層化を図ることに成功。
鮮やかな桜色が映える鴨チャーシューが3枚入るのも、基本メニューとしては極めて贅沢。噛めば噛むほどジューシーな鴨エキスが口内に溢れ出し、食べ手を充足感で包み込む。
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店名:日の丸さんじ
住所:台東区東上野3-25-12
電話番号:03-5812-8023
営業時間:11:00~15:00
定休日:土曜~木曜
2.淡路町の人気店『麺巧潮』が東上野に凱旋。営業形態は、なんとBistro!
ラーメンとしては異色の「肉巻きアスパラ」と「ポーチドエッグ」を具材として採用した、創作ラーメンの人気店『麺巧潮』。
その『潮』が本年10月、東上野に待望の2号店をオープン。どちらかと言えば「古き良き下町」という印象が強い東上野を住処に選び、『Ramen&Bistro ushio uenoeast』と、bistro形式の営業形態を採用したことは、ラーメンファンの間でも驚きをもって迎え入れられた。
現在、夜営業の時間帯はビストロ営業を実施しており麺類のみのオーダーはできないが、昼営業時には、麺類一点買いが可能。よって、純粋にラーメンを楽しみたい方は、昼営業の時間帯を狙うのがおススメだ。
同店の看板メニューは、1号店でも高い人気を誇る『鶏白湯そば』。大山鶏のガラをたっぷりと用いた白湯スープは、ポタージュライクなニュアンスが色濃く出ており、他店で供されている鶏白湯とは一線を画した洋風な味わいが印象深い。
ポーチドエッグからスープに溶け出した黄身を麺に絡めながら戴くと、思わず、頬が落ちそうになる。
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店名:Ramen&Bistro ushio ueno east
住所:台東区東上野3-22-2 クレアツィオーネ上野
営業時間:11:00~17:00(ラーメン営業)17:30~22:00(ビストロ営業)
定休日:日曜
3.上野の変遷を半世紀以上見守り続けてきた『昇龍』。1杯に込められた歴史を堪能
※[編集部追記]このお店は閉店している可能性があります。ご利用の際は必ず事前にご確認ください。
上野の「顔」として、現在もなお、衰えぬ活力を見せる「アメ横」。そんな「アメ横」の一画、上野ガード下に店舗を構え、1957年の創業以来60年にわたり、食べ手の胃袋を満たし続けているのが、こちらの『昇龍』だ。
バナナと見紛うばかりの巨大餃子が同店の名物メニューだが、昭和のノスタルジー漂うラーメンのクオリティの高さも、餃子に負けてはいない。
とりわけ、「ワンタンメン」は、チュルンと舌触り滑らかなワンタンが、衒いのない中細麺にまといつき、「小麦」という食材が持つ可能性を、まざまざと食べ手に提示する逸品。
鶏ガラを主体とし、動物系素材をじっくりと炊き込んだシンプルな清湯スープには、今どきの創作ラーメンにありがちな「気取り」が一切感じられない。肩ひじを張ることなくレンゲを動かし続けることができる点にも、好感が持てる。
日常の緊張から解放されるオフタイム。ビール瓶を片手に同店のラーメンと餃子を戴く。たまには、そんなひと時があっても良いと思う。
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店名:昇龍 PART.1
4.灯台下暗し!「御徒町らーめん横丁」の『なんつッ亭』は、都内屈指の熊本ラーメンの実力店
最寄り駅はJR御徒町駅となるが、JR上野駅からも十分に徒歩圏内。
今では、上野エリアになくてはならない存在感を獲得するに至った「御徒町らーめん横丁」の一画に鎮座するのが、こちらの『なんつッ亭御徒町店』。
神奈川県秦野市に本店を構える熊本ラーメンの実力店『なんつッ亭』の1杯が、上野エリアのど真ん中で堪能できる。同店の営業時間は、11:00から23:00までの通し。「夕刻に小腹が空いた」といったシチュエーションにも対応する使い勝手の良さも大きな魅力だ。
おススメは、何と言っても不動の看板メニューである「らーめん」。都内で食べることができる熊本ラーメンの中でも圧倒的な分量を誇るマー油の芳香が、食前から食べ手の鼻腔を容赦なく刺激。
徹底的に炊き込んだ豚の重厚なコクと焦がしニンニクの香ばしいうま味が、口の中でピタリと合体。一分の隙もない両者の連携プレイは、長年の改良を経て、もはや安定の域に到達。その美しき「予定調和」を前に、食べ手はただ、丼を空にするしか術がない。
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- なんつッ亭 御徒町店
- ラーメン 東京メトロ日比谷線 仲御徒町駅 2番口 徒歩2分
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5.西浅草に期待の新鋭が降臨!『麺みつヰ』の1杯からあふれ出す無限大の可能性
近代化が著しい台東区屈指の歓楽街・浅草六区と隣り合いながらも、下町の残滓を色濃く漂わせる西浅草。
間近に東本願寺や善照寺を臨む閑静な路地裏に、本年12月に産声を上げた新店が、こちらの『麺みつヰ』だ。
武蔵境の『東京味噌らーめん鶉』で修業を重ねた店主が、満を持して独立。『鶉』は、2015年にオープンした、名店『麺や七彩』の系譜に連なる人気店であり、『麺みつヰ』は、『七彩』の孫弟子店にあたる。
鶏と魚介系素材とを絶妙なバランスでブレンドした透明度の高い清湯スープに、軽やかな啜り心地が印象的な自家製麺のコラボレーション。名門の血脈を受け継ぎながらも、その味に寄り掛からず、店主自らが創りたい味を提供しようとする姿勢に好感が持てる。
スープは、噛み締めれば噛み締めるほど、一滴一滴に内包された素材の輪郭が浮き彫りとなる、繊細ながらも確かな力量に裏打ちされた逸品。微かなぬめりが唇に心地良い振動を与える自家製麺も、スープを過不足なく持ち上げる研鑽のたまものだ。
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店名:麺みつヰ
住所:台東区西浅草2-10-4
営業時間:11:00~14:30、17:30~21:00 土曜・日曜・祝日:11:00~15:30
定休日:無休