東西に長い四国の南部『高知県』。四万十市周辺がやや広い平野となっている他は、そのほとんどが海の近くまで山が迫る典型的な山国。カツオの一本釣りが盛んでカツオのたたき等が有名ですが、美味しいラーメン屋さんも高知市を中心にたくさん点在しております。今回は、その一般的な美味しいラーメン店を紹介するのではなく高知県も南西に位置する須崎市の『鍋焼きラーメン』をご紹介したいと思います。洲崎市商工会議所が地域活性化の起爆剤として全力でPRしている地ラーメンで、高知県にお立ち寄りする際は寒くなるこの時期にもぴったりで、グツグツと煮立ち、熱々で提供してくれる美味しい鍋焼きラーメンを食べて心も体も温まってもらいたいです。
1.現存で唯一『ホーロー鍋』を使用した、焼肉屋が提供する絶品鍋焼きラーメン【なかがわ】
元々は、戦後に「谷口食堂」が食料難の時代にラーメンの具材として、「葱」・「卵」・「ちくわ」と、比較的手に入りやすい食材と、たまたま谷口食堂の向かいが鶏屋だったこともあり、貰った鶏ガラや廃鶏を使用したスープに、トッピングとして鶏を用いられた事が、この洲崎市の鍋焼きラーメンのルーツだそう。長年、地域に親しまれた「谷口食堂」もご主人が亡くなられ、奥様が後を切り盛りされるも昭和55年で惜しくも閉店。閉店後も「未だにあの味を忘れられない」という熱狂的なファンが絶えず、商工会議所が立ち上がり、「鍋焼きラーメンプロジェクトX」を平成14年に発足。現在では、上記の定義で復興させた鍋焼きラーメンを提供するお店は、約40店舗にまで増えている様です。こちらのお店はその鍋焼きラーメンを提供しているお店のひとつですが焼肉や一品もの等を提供している須崎港付近に位置する大衆食堂です。
ホーロー鍋に入った熱々のスープは、親鶏をベースに昆布や節系を使用した醤油味。鍋焼きラーメンの定義は、細ストレート麺に青葱・ちくわ・生卵。親鶏の旨味が抽出されたスープが、言い過ぎかも知れないが全国的にも有名な「嘉一」@仙台市の様に鶏の旨味が濃厚で驚く位に美味い。麺は、黄色くて低加水の歯応えある細麺。これがまたスープに良く合っています。具材は、ちくわ・生卵・青葱に、スープの下に沈んでいますが、賽の目サイズの親鶏肉が入っています。最初の見た目は、えっ?って思いますが、これが意外にも凄く美味い。生卵は熱々のスープに少し置いておけばポーチドエッグみたいに食べれたり、スープにゆっくり混ぜて溶き卵状にも出来るし、始めから早くスープに混ぜる事で円やか卵スープに変えれたりとバリエーションはお好みで。下に沈んだ親鶏は程よい味付けでコリコリとした食感をしており、これまた美味しいです。
ラーメン専門店が出すものでは無いと侮るなかれ。旨味に厚みのあるスープは最後まで冷めず熱々で戴け、細麺なのにダレ難く、シンプルな具材も旨い。是非ともオススメしたい。
紹介しているお店はこちら!
- なかがわ
- ラーメン 土讃線土佐新荘駅 徒歩15分
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2.メインのお好み焼きより占有率の高い人気の鍋焼きラーメン【だるま】
お好み焼きがメインとなるお店ですが、鍋焼きラーメン考案者(谷口食堂店主)が亡くなってから「鍋焼きラーメン」を絶やす事の無い様にと、平成14年に商工会議所が発足した「鍋焼きラーメンプロジェクトX」を始めてから提供する様になったお店のひとつで、きっかけは賄いの鍋焼きラーメンをお客さんに提供した事から、メインのお好み焼きを凌ぐ人気が出たとか。壁面に張り出されたお品書きも、大半はお好み焼きメニューですが訪問時の昼時は大半が鍋焼きラーメンを戴いておられるお客さんが多く散見されました。
先程の「なかがわ」が使用していたホーロー鍋とは異なり、冷まし難い土鍋を使用しておりました。蓋を開けるとグツグツと煮立つビジュアルは、油分に厚みのある親鶏を軸とした出汁で、先程戴いた「なかがわ」よりはやや浅めも、十分な鶏の旨味ある美味しいスープです。麺は、固めでハリのあるコシのしっかりとした歯応えのあるストレート細麺。鍋焼きでグツグツとした熱いスープなんで、早めに戴くと、しっかりとした歯応えで戴けます。具材は、サイコロサイズの鶏身・ちくわ・刻み葱・生卵です。これも先程戴いた「なかがわ」の親鶏とは異なる印象で普通の鶏腿肉。
残った出汁にご飯をダイブして〆の雑炊として戴けますし、オススメのキムチ鍋焼きも人気のあるメニューだそう。この出汁で雑炊を戴いたら間違いなく美味いと思います。
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- だるま
- ラーメン 土讃線須崎駅 徒歩15分
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3.県内外からの訪れるお客も多く、長きに渡り愛されている鍋焼きラーメン【橋本食堂】
住宅街の中に位置する食堂で、此方のお店は、『鍋焼きラーメンプロジェクトX』が発足する随分前、昭和50年創業で市内唯一の鍋焼きラーメン専門店であり、須崎市が提供する鍋焼きラーメンを代表する人気の老舗店です。食堂といっても提供しているのは鍋焼きラーメンとご飯、ビールのみと潔い構成で、まさしく鍋焼きラーメンの専門店。
表層は鶏油がたっぷりで、鶏ガラを軸に須崎市産の地元醤油を使用したこだわりのあるスープです。ベースにたっぷり鶏油が、しっかりとした土台となっており深い。深いがあっさりとしており飲み易い味わいです。他店と大きく差があるのが、細麺ながらハリとコシの強いもので、熱々のスープでも麺がダレ難かったのが好印象。具材は、親鶏の賽の目カットしたもの・ちくわ・生卵・刻み葱です。
沢山の女性スタッフのさばくスピードに無駄が無くテキパキとしており、それだけのお客さんも多い人気店だなぁと感心させられました。此方も先程の伺ったお店同様、ご飯を最後に打ち込んで雑炊仕立てを最後の一滴まで余す事無く戴くのが通の食べ方っぽいですね。別添えで用意してくれる沢庵も美味しかったです。
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4.NPOまちづくり須崎が地域の活性化に立ち上げた食堂【すさき駅前食堂】
JR須崎駅の向かいに位置するNPOまちづくり須崎が運営主体として2010年に開業。立ち上げた当初は公の補助を受けて営業を開始し、2014年には独立。まだ日の浅い食堂で、JR須崎駅付近の活性化もあるのか鉄道にちなんだ外観は踏切警報機のオブジェを用いた演出が施されており、鉄道好きにはたまらない感じです。店内は昭和のレトロな雰囲気を醸し出す、看板や古いポスター等が至るところに張っております。こちらは、鍋焼きラーメンだけではなく、こだわりの地元食材を使ったメニュー等も戴けます。
ベースは親鶏のガラに醤油で、油分は何軒か食べた中で一番控え目のあっさりとした味わいのスープです。麺は黄色くて歯応えのしっかりとあるストレート細麺で、これまでに共通して言えるのは、時間が経っても麺がダレ難いところ。具材は、コマ切りの親鶏・竹輪の輪切り・刻み葱・生卵です。こちらでは鍋焼きラーメンの色んな食べ方を提案してくれた指南書があり、初めての方でもお好みにあった食べ方が出来ます。
鍋焼きラーメンで町興しをしている須崎市は、商工会議所をはじめ、飲食店が一丸となって盛り立てており、定義はあってもやはり味はお店によって千差万別です。しかしシンプルな見た目で興味が沸かなさそうなビジュアルではありますが、想像以上に素晴らしく、この地に訪れる事があれば、是非ともご紹介したお店にお足を運んで頂きたいです。