いわゆる「いい店」は、たくさんあります。
美味しいことはもちろん、内装も盛り付けもセンスいい。なおかつ、心地よいサービスが提供され、
我が家のダイニングのように寛げる店…ご存知の方も多いと思います。
味わいにも、居心地にも満足できて、安心して過ごせる店は貴重です。
今年もたくさんの「いい店」を訪れました。一年の最後にもう一度行くとしたならば?と考えた時に、候補にあがったのが赤羽橋の「L'aube」。
お料理はもちろん、私の中で大きなウェイトを締めるパンが印象に残っているのが選抜ポイントです。
とっておきのディナーには、安心感だけではなくちょっと刺激も求めてしまうもの。
「L'aube」はお店にたどり着くまでがまず刺激的です。近くに来ているのに見つからない…と、ちょっと慌ててスマホの地図を検索しなおしてしまうようなロケーションなのです。
階段を上って2階にある入り口には、店名さながらにほの暗い“暁”の中に浮かび上がるように「L'aube」の文字が見えます。
扉を開けて、右手に進むと黒と青を基調にした、シックモダンな内装のダイニング。カウンターの向こうのオープンキッチンでオーダーした料理が作られている様子を望めるので、料理を待つ時間も楽しめます。
陶芸家の手による焼き物、ガラスの器、自然木…個性的な器に盛りつけられる料理は、器以上に個性的。「こだわり」という言葉では語り切れない、意気込みのようなものを感じます。
その料理以上に私が心掴まれたのが、焼きたてで提供されるパンでした。
生地は手捏ね、予約時間に合わせて窯から出たてを提供できるように発酵時間を調整します。
小型のローフ状に焼き上げたパンを、製造を担当するパティシエール自らテーブルに運んでくれ、私たちの目の前で割ってくれるのです。
立ち上る湯気に心躍る瞬間、木のプレートに置かれたパンには躍動感がありました。
パンは焼きたてが一番、つまり美味しくないはずがない状態での提供です。この日は青海苔を練り込んだパンで、その香りに魅せられました。
温かさと香味と共に、この状態を作り出した心意気がパンを2倍美味しく感じさせてくれました。
フォアグラに合わせて出されたブリオッシュは、カリッと焼かれてサクサク。
きめ細やかで口どけが良く、菓子職人ならではの繊細さが感じられました。
お行儀が悪いと思いつつ、パンにフォアグラを乗せて同時に口に入れると、二つは見事にシンクロしてふわりと溶けていきました。
至福の時…一年の最後に頑張った自分へのご褒美に相応しいひと口として、2016年はこれをもう一度味わってみたいものです。
次はどんな皿が運ばれてくるのだろう…そんなワクワク感が最後まで続く、刺激的なコースでした。
やんちゃでキュートな料理は、まだまだ進化の最中です。次の皿を待つように、次の訪問の時にはどんな料理と出会えるのだろうと期待高まる新店です。
年末で丁度半年、これからが楽しみです。
営業時間:ランチ 12:00~15:00 金曜日と営業日の土曜日
ディナー 18:00~24:00
定休日:毎週日曜日と第2第4土曜日(9月のみ毎週日曜日と第1第3土曜日)
http://www.restaurant-laube.com/