1974年創業で、移転後は横浜駅近くに位置する家系の総本山『吉村家』が考案した東京の醤油と福岡の豚骨を合わせた豚骨醤油らーめん、所謂『横浜家系らーめん』。現在では、吉村家直系店や吉村家で修業し独立した店舗など吉村家の流れを汲んだお店や、外食チェーン等も参入している中、全国的にこの家系らーめんが気軽に食べられる様になったが、関西は特にこの家系を提供をするラーメン店が乏しく、大阪ではこの数年前から増え始めたものの、他の関西圏内では非常に少ないのである。今回は、京都と滋賀にクローズアップして希少である家系の美味しいお店をご紹介したいと思います。
1.関西圏内に点在する家系らーめんのパイオニア【紫蔵】
2011年3月までは、同県内の左京区で営業をされていましたが、人気による大行列が絶えず、車の路駐やマナーを守らない方が多い事から、地域住民に対する迷惑が頻繁に続く事で、止む無く閉店。同年の10月には北区に移転オープンされ、現在でも当時と変わらずの行列が出来るほどの人気があり、京都、いや関西で、横浜家系ラーメンの存在を布教したパイオニア的な存在の銘店です。『蔵前家』@浜松出身の店主さんは、由緒正しき家系のルーツを受け継いでいるのですが、関西人の口に合う様に改良をされた家系で、家系を語らないこだわりがある様です。
写真は、らーめん(並)で、豚骨をベースにしっかりとした醤油ダレと鶏油を合わせたものですが、塩っぱさの無いマイルドな味わいで動物系由来の出汁の厚みもあり、脂っぽさを感じさせない飲みやすい豚骨醤油のスープです。店主がV字の形に改良をされた平ザルで丁寧に取り上げられた麺は、家系御用達の『酒井製麺』謹製で、手揉みによりややウェーブ掛かった平打ちの中太麺。小麦の香りがふわりとした滑らかな麺肌で、もっちりとした弾力ある歯応えがあり麺線が短めなのも特徴。
人気があるのは1日10杯程の限定で用意をしているチャーシューメン。スープが冷めない様に別容器にて提供してくれるのですが、かなり分厚く大判であっさりとした味付けのチャーシューが3枚も入っており、食べ応えも十分です。その他にも、家系の定番であるほうれん草も増量となるとボール玉の大きさのものが出てきたり、トッピング類にも他には無い特徴があります。ご飯も麦ご飯を提供しており、スープに染みこませた海苔とチャーシューで何杯でもおかわりをしてしまいそうな位、美味しい麦ご飯です。
以前の移転前でもあった様に、現在も近辺の地域住民の方々にご迷惑が掛らない様にお店側として細心の注意をはらっていますので、列ばれる方はお店の指示をよく聞いて頂き、また同じ事が起こらない様に是非ともご協力して頂きたいです。
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- 紫蔵
- ラーメン 京福北野線 北野白梅町駅 徒歩9分
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2.大学生を中心に人気のある新進気鋭な家系らーめん【麺家 あくた川】
今年の2月に同志社大の近くに出来た家系らーめん店で、店主は『武蔵屋』@中野出身。学生さんを中心に人気があり、その一つが昇段試験による常連帯表。お店にまつわるクイズ形式で、正解すると常連帯表に札で名前が載り、白帯から師範代と、位に応じてサービス内容が変わるというもので、店内は名前の書いた札で敷き詰められています。また特徴的なのが店員さん。制服は割烹着に鉢巻きを頭に巻いており、威勢がとても良く明るく振る舞ってくれます。
肝心のらーめんは、鶏ガラ豚骨をベースとした豚骨醤油で適度な鶏油が浮いたもの。キレのある醤油に、コクのしっかりとある動物系の出汁と、香ばしい鶏油が、醤油カドを取った丸みのある輪郭で、全体的に調和の取れたスープです。麺は、やはり家系御用達の『酒井製麺』謹製で麺線の短い平打ち中太麺です。モチモチとしたコシのある歯応えで存在感のあるスープとの相性も抜群です。具材は、肩ロースのチャーシュー・ほうれん草・刻み葱・海苔と家系定番のトッピング。
本格家系を戴けるお店で、あくた川の情熱を感じた方は、どなたでも帯を差し上げてくれるので、是非とも師範代を狙ってみては如何でしょう。
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3.家系の流れを汲む味わいも良く、応対も素晴らしいお店【山下醤造】
魚沼三元豚に京丹波鶏と魚介で作った、魚沼豚肩醤油をウリとしていた『二条ラーメン 千亀屋』が、2013年に横浜家系ラーメンを提供するお店としてリニューアル。木目を基調に家系の二文字がデカデカと描いた青いタペストリーが目印となるモダンな雰囲気の外観です。
家系を謳い文句とした山醤らーめんは、ベースである豚骨のコクがしっかりとしており醤油の主張を少し抑え、鶏油をよく効かせた豚骨醤油です。ベーシックな家系より円やかで飲みやすいスープです。麺は京都のカリスマ製麺『麺屋 棣鄂』謹製で、麺肌がツルツルとした加水高めの中太平打ち麺で、モチッとしたコシのある食感の家系ならではの仕様が見事な相性を見せます。具材は、肩ロースのチャーシュー・ほうれん草・キャベツ・刻み葱・海苔と、本来なら別料金で乗せるキャベツがデフォでもトッピングされてます。
居酒屋の系列が出す家系インスパイアでありながらも、きちんと美味く、いい意味での期待を裏切る一杯です。活発で明るい店員さんの対応が非常に丁寧で、帰りは外に出てお見送りまでしてくれる姿勢が素晴らしく、晴れやかな気持ちになれます。
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店名:山下醤造
住所:京都府京都市中京区西ノ京職司町19
電話番号:075-822-0505
4.バリエーション豊富なラーメンを提供するお店【漫天兄弟】
2012年創業の家系ラーメンを提供するお店で、横浜家系とんこつがイチオシのこってりラーメンの他にも、豚骨鶏ガラに魚介を合わせた漫天ラーメンといった屋号を冠にした品や鶏白湯・担々麺につけ麺等、家系とはまた違った内容のものも戴けます。
こってりラーメンは、豚骨を軸とし、コクより塩分のキレが強めな野性味のある豚骨醤油で、こってりラーメンと称するが本流の家系よりは割とあっさりめです。少しウェーブ掛かった加水高めの中太平打ち麺は、家系独特の麺線の短いものとは異なり、啜り心地を持たせ、食感が強めのしっかりとした歯応えのある、風味の良い麺です。具材は、大判な肩ロースのチャーシュー・ほうれん草・トッピングしたうずら卵に海苔です。途中からは、豆板醤、山椒、唐辛子、ニンニク、生姜を調合した激変スパイス「漫天スパイス」を投入する事で、スープが劇的に変わり、複雑な風味がクセになる美味しさでハマる事、間違いなしです。
本流にかなり近いものがある家系インスパイア。また、会計後には4枚綴りになった150円の割引券を戴けるのですが、これを次回から使えば一杯600円と、かなりお得なサービスもいいですね。
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5.滋賀県で戴ける関西トップクラスの本格派家系【横浜家系らーめん 秀吉家】
最後の締めは京都ではなく滋賀であるこちらのお店。屋号は、よく間違われるのですが、ひでよしやでは無く、父親の名前(しゅうきち)さんから戴いており、しゅうきちや。店主の吉原さんは、ずいぶん昔に今は無き大阪の「六角家」で店長を勤めており、閉店されてからも関東の数々のラーメン店でその技術を研鑽されていらっしゃり、今まで全く家系には馴染みの無い滋賀県守山市にて2012年9月に独立開業。つい先日、4周年を迎えたばかりですが、この地に根をしっかりと張った、行列の絶えない、人気家系らーめん店です。
写真はらーめんに海苔増しほうれん草増し。白濁とした色合いのスープで、程良く乳化した豚骨出汁に醤油ダレと鶏油の合わさった、まさしく横浜家系の豚骨醤油です。キレのある醤油は、やや塩気が強く、動物系からのしっかりとした旨味とコクがあり、鶏油がくどくないのでグイグイといける塩っぱウマーなスープ。麺は『酒井製麺』謹製の平打ち麺。存在感のある麺で、モチモチしたコシの強い歯応えが非常に良く、同じ存在感のあるスープをしっかりと受け止めております。具材は、チャーシュー・ほうれん草・白葱・海苔です。厚みもあり大判のチャーシューは、こだわりの国産豚を使用しており、ほろほろと柔らかくて美味しいです。家系定番のほうれん草が良い箸休めになります。
関西でトップクラスの家系を提供してくれる、私イチオシのお店。ランチタイムは、白御飯がサービスなので、海苔増しにして豚骨醤油のスープに染み込ませた大判の海苔を御飯に巻いて食べると至福な笑みが溢れます。