徳島県といえば、「徳島ラーメン」という全国的に有名なご当地ラーメンが多く知られていますが、その火付け役は「いのたに」が新横浜ラーメン博物館に出店されてからの事で、一般的に知られている徳島ラーメンの茶系と呼ばれるものです。
徳島ラーメンは地域によってそれぞれ製法も異なる「茶系」・「白系」・「黄系」と分かれているのですが、皆様がよく知る徳島ラーメンの発祥は茶色の色合いをしたものではなく、実は真っ白なスープの白系と呼ばれるものなんです。では、この3種の特徴とは、
茶系:溜まりや濃口の醤油を使い、濃茶色の甘辛い豚骨醤油で豚バラ肉や生卵が入る。
白系:小松島市を中心に豚骨に白醤油や薄口醤油を使った乳白色。
黄系:鶏ガラや豚骨に野菜を合わせた薄茶や黄色い支那そば、もしくは中華そば。
となります。今回はそんな特色のある徳島ラーメンの中で、特に印象の残ったお店を12店舖、ご紹介致します。
1.市内から外れた山間地にありながらも人気のあるラーメン店【麺屋 藤】
徳島県那賀町の山間にありながらも、徳島のラーメンランキングがNO.1のお店は、市内から1時間半以上離れた場所にあり、東京本格ラーメンを戴けるというのをコンセプトとしたラーメン店です。個人的なイメージでは東京ラーメン=醤油ラーメンって事だと思うのですが、店主が過去に東京で食べた時のラーメンが、あまりにも衝撃的で地元に持ち帰れないだろうかと思ったのがきっかけで、大阪のラーメン店で修行。場所選びは人口の多い徳島市内を敢えて選ばず、減少しがちの地元の田舎を盛り上げたい一心で2010年の12月に開業。現在では全国的に有名なご当地ラーメンである徳島ラーメンをも超えた、地元民の支持を得ている人気店です。
阿波地鶏醤油らぁ麺は、「東京ラーメン」と称しているが、食材は地元徳島県産の阿波地鶏を使用したスープで、ぶ厚い鶏の甘味や旨味のある出汁に、キレのある醤油とがバランス良く合わさった無化調の鶏清湯です。生姜や葱で独特な臭みを抑え、素材の旨味を最大限に引き出した洗練された味わいにクオリティの高さを感じます。清湯スープに合わせる麺は意外にも存在感ある多加水の中太麺なんですが、旨味に厚みのあるスープとの相性も良く、もっちりとした歯応えのある小麦の風味豊かな麺が秀逸です。具材は、チャーシュー・メンマ・ナルト・白葱・三つ葉・海苔です。具材のひとつひとつが細部に至るまで丁寧な仕事をされており、スープ・麺・具材が三位一体となるまとめ方も、とても好印象です。
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2.徳島ラーメン屈指の濃厚ながらもあっさりとした一杯【中華そば やまきょう】
1999年創業で、この辺りでいえばまだ歴史的には浅いですが、此方の一杯を戴きに県内外から訪れる方々が多い人気店です。後に伺う『中華そば 春陽軒』@徳島市出身の方で、徳島ラーメン屈指の濃厚スープを提供しています。
肉玉入り(小)は、濃茶色の豚骨を軸とした豚骨醤油のスープは独特な臭みは無く、醤油が割と立っており甘辛く濃い目ながらも後味がスッキリとしており、豚骨の旨味がギュッと濃縮した濃厚スープです。オレンジ色の新鮮な生卵をスープに絡めていく事でスープ全体の尖りが円みを持たせ、何処かすき焼きっぽさを醸し出す様な味わいになります。程良くハリのある低加水のストレート中細麺は、濃厚な旨味をしっかりと乗せてくれます。具材は、甘辛く炊いた豚バラ肉・メンマ・もやし・刻み葱です。豚骨醤油の濃厚なスープと甘辛く煮た豚バラ肉が絡み合う絶妙なハーモニーで、ご飯が凄く欲しくなる、いやご飯が間違いなく合う「おかず」ですね。また、卓上にあるタレや一味唐辛子・胡椒等で好みの味わいに変化させる事も出来ます。
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3.地元民から永きにわたり愛されてきた徳島黄系の代表格【支那そば 三八】
此方のお店は、岡田冷菓というアイスクリーム屋さんからスタートした鳴門で40年以上続く徳島ラーメンの老舗で現在もソフトクリームを提供しており、田宮を始め、斎田・黒崎・元町と展開されている黄系の代表格でもあります。11年前に鳴門から田宮に移転されたのですが、その人気ぶりからなのか、今年4月7日放送の秘密のケンミンSHOWにも取り上げられていました。
支那そばは黄金色の徳島黄系で、豚骨を軸に鶏ガラや野菜に薄口醤油を合わせたもの。醤油が立つ茶系とは違い、口当たりは非常に円やかで嫌味の無いすっきりとした甘さと、動物系由来のコクがしっかりありながら、あっさりとした飲み易いスープです。麺は、やや柔めの歯応えである低加水の自家製中細ストレート。小麦の風味が意外にも感じられ、スルスルと啜り易い喉越しの良い麺です。具材は、チャーシュー・メンマ・もやし・刻み葱です。チャーシューは、阿波ポークを使用したものでバラ肉かモモ肉から選べます。後者のモモ肉は、サシのキメが細かいもので脂身も少なく、噛めば噛む程、肉の味わいが広がり、美味い。
結局のところ、イメージしていた徳島ラーメンを思っていた甘辛スープに甘辛薄切りの豚バラに生玉子を乗せた「茶系」とは、また違う豚骨鶏ガラのあっさりスープが、所謂「黄色系」というものなんですね。幅広い層に受け入れられ易い味わいが地元民に永きに渡り愛されているんでしょうね。
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4.ニューウェーブな徳島茶系で、味わいの変化球も楽しめる【中華そば 西食】
店主さんは幼少期からラーメンが好きだったそうで、高校生の頃はラーメン屋さんでバイト。卒業後は『辻調理師専門学校』で食を学んだ技術を地元に持ち帰り、徳島駅前にある昭和42年創業の老舗銘店『来来』にて6年の修行を得た後に独立開業された人気店です。
一般的な茶系の茶褐色とは違い黄土色したNEW徳島と云われているその一杯は、香ばしくも独特な醤油カドの立たない円やかなまとまりで、独特な臭みを抑えながらも豚骨由来の濃縮な旨味や甘味に鶏ガラや野菜をMIXした、油分控えめのあっさりスープです。今まで戴いてきた濃厚豚骨醤油の茶系とは一線を画す味わいが秀逸。小麦の風味が豊かで、加水低めのエッジィな中細ストレート麺は、さっくりとした歯切れの良い食感でスルスルと喉越しも良好です。具材は、チャーシュー・メンマ・もやし・刻み葱とオードソックスな構成です。肩ロースのチャーシューは、しっかりとした味付けで柔らかくて美味しいです。
トッピングメニューに関しては、エベレストもやしとか、眉山もやし・生玉子・てんこ盛りネギ・旨味めんま・すりおろし生にんにく・激うまにんにく味噌背脂とか、気になる有料味変調味料系が充実しており、同じ一杯で味わいの変化球が楽しめそうです。
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5.飲み干せるブラックスープとして県内外から人気のある一杯【支那そば 巽屋】
1995年創業で、創業者である先代の店主が試行錯誤で20年間掛けて辿り着いた「スープまですべて飲み干せるのが支那そば 巽屋」をキャチコピーにしており、県内外から多くが訪れるブラックスープとして有名な老舗人気店です。
何度見ても濃そうにしか見えず、茶褐色よりは、より黒に近い色合いのスープ。豚骨に野菜を合わせ油分を削ぎ落としたライト豚骨なんですが、キレッキレだが尖りのない醤油が立ち、あっさりながらもコクのある豚骨に仄かな生姜が効いており、後味がすっきりとした脂控えめな茶系です。
低加水の中細麺は、固すぎず柔らかすぎずの適度なコシのある歯応えがあります。具材は、豚バラ肉・メンマ・もやし・刻み葱です。箸で掴むと崩れる程、柔らかく煮込まれた甘辛の豚バラスライスが美味いし、御飯に乗せたらたまらんやろうと思います。
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6.徳島のご当地ブランドを日本中に広げた大手チェーン店【ラーメン東大 大道本店】
1999年に徳島市応神町にて創業。後に同市大道に移転をされてから今日に至るまでその店舗を拡大し続けている徳島ラーメンというご当地ブランドを日本全国に広げた立役者的存在の大手チェーン店です。関西でも京都の拉麺小路に大阪や兵庫にも数店舗ございます。
茶濁で味わいが濃そうなスープは、豚骨をベースに特製の醤油ダレを合わせた豚骨醤油。所謂、徳島ラーメンの茶系に当たるものです。独特な臭みは無く、醤油の尖りと過度な甘味に豚骨由来のコクや旨味が全体のカドを削ぎ落として丸みを持たせた、甘しょっぱい味わいです。加水低めでエッジィな角断面のストレート中細麺は、噛むとプツンと押し返す程の弾力のある麺です。具材は、甘辛の豚バラ肉・メンマ・もやし・刻み葱です。無料で食べ放題の生卵は、卓上に置いてあるので、乗せてからパシャっと撮影。生玉子をバラ肉に絡めて食うのもよし、スープに溶かし戴くもよし、御飯をたのんでTKGにした上で豚バラ肉を乗せて食うもよし。食べ放題ですが、良識の範囲でね。豚バラ肉は、今まで食べてきた茶系の煮込んだものとは違い、さっと甘辛ダレに潜らせた感じでぷりっぷりの弾力で、これがまた美味い。
今のところ戴いてきた徳島茶系の中では、一番、癖が無いというか、誰方が戴いても受け入れられる様な食べ手を選ばない印象の一杯でした。
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7.徳島白系の西の横綱と称される、元プロ野球選手が営む人気店【中華そば くにおか】
美馬市脇町猪尻にて1986年に創業し、2002年に同市中須に移転をされ、現在でも人気のある老舗店は、かつて、元プロ野球選手であった店主が『王将』@鴨島町で修行をされた後に徳島白系のラーメンを提供しているお店です。
オススメのチャーシューメンは、分厚いのチャーシューが鉢一面を敷き詰めた一杯で、博多ラーメンよりズシンと来る、豚骨に野菜を合わせた濃厚豚骨醤油です。キレのある醤油と動物系由来の旨味やコクの深みがとてもいい感じの仕上がりで、全体的にはカドの立たない輪郭で凄く美味しいです。麺は、エッジの効いた角断面で低加水のストレート中細麺。さっくりとした歯応えも良く、スープの旨味をしっかりと乗せてくれます。具材は、チャーシュー・メンマ・もやし・刻み葱です。厚切りで脂身も適度なチャーシューは、しっかりとした味付けで食べ応え充分です。
徳島白系では西の横綱と称されるだけはありますね。店内には雑誌のコラムの切り抜きが張り出されており、有名ラーメン評論家が推薦との内容だったと思いますが絶賛されていたものでした。
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- 中華そば くにおか
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8.売り切れで早仕舞いの多い小松市屈指の超人気店【中華そば 猪虎】
2004年創業で徳島県南部で小松島市の中ではトップクラスの人気を誇るお店で、お客がひっきりなしに入れ替わり立ち替わり入って来る凄い人気ぶりが伺えました。また徳島には、此方の猪虎(いのこ)からの派生で、虎子(とらじ)・大河(たいが)・うりぼうと、師匠の屋号である猪か虎から文字られた店名が、なんかいいですよねー。
見た目は茶系な中華そばは、茶系独特な甘辛さは無く香ばしい醤油とコクに深みあるさらっとした鶏ガラ豚骨醤油です。此方のスープも醤油カドは立たず円やかな口当たりで油分も控え目。麺は、低加水のストレート中細麺。適度なハリと歯切れの良い食感で、スープの旨味をしっかりと乗せてくれます。具材は、チャーシュー・たけのこ・もやし・刻み葱です。しっかりと濃い味の染みたチャーシューをスープに浸し温かくしてから食べると凄く美味しいですし、シャキシャキのもやしが良い箸休めになりますね。メンマの代わりにたけのこを使用されており、味付けは一般的な内容も歯応えある食感がいいですね。
非常に残念だったのが未食のチャーハン。周りの方々の注文率が高く、羨ましい限りでした。さらっとしていながらも旨味のしっかりとしたこの一杯は、かなり好みのものでした。
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9.ご当地ラーメン「徳島ラーメン」の発祥店であり、徳島白系の代表格【岡本中華そば】
1951年創業の老舗銘店で、創業当初はチャルメラを吹きながら「小松島の夜鳴きそば」として屋台引きからスタートした深い歴史を持つお店。茶系が一際目立つ徳島ラーメンですが、小松島市界隈で提供する徳島白系が徳島ラーメンのルーツだそう。と、某テレビ番組で言ってたー(笑)また徳島白系の元祖でもあります。
乳白色の徳島白系である中華そばは、茶系の甘辛さは無く動物系由来の深みのあるコクと甘味に、やや塩気立つ薄口醤油がバランス良く合わさり、やや丸みを持たせた、あっさりさっぱりとした鶏ガラ豚骨スープです。麺は、低加水のエッジの効いた中太ストレート。やや柔めの適度なコシのある歯応えでスープが馴染んでいるというか良く吸っている感じで、めっさ美味いです。具材は、チャーシュー・メンマ・もやし・刻み葱・焼き海苔です。阿波ポークを使用した上質な肉質のチャーシューは、豚バラ肉と腿肉の二種。甘味のある脂のバラ肉と、キュッキュッっと噛み締めると肉の旨味出る腿肉でこれがまた絶品。
ほぼほぼ満席で引っ切り無しに入って来られるお客さんは、老若男女関わらず、幅広い層に受け入れられている長年に渡り愛されている一杯でした。
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10.徳島茶系の代表格は、個性の溢れる濃厚な一杯【春陽軒】
1993年創業の徳島茶系を代表する人気老舗店で、2軒目でご紹介した『中華そば やまきょう』の修行先であったお店でもあります。徳島ラーメンの特徴である『ご飯のおかず』として食べられる茶系を最高のパターンで満喫しようと胸が高なります。これも今まで周ったお店の中では無かった内容ですが、お好みで麺の固さ・タレの濃さ・黄身しかINしない生卵に白身をまんま投入するかをオーダー出来たりします。
鶏ガラ×豚骨をベースに、地元産の醤油を合わせた徳島茶系豚骨醤油。醤油辛さっぽい尖りは無く、味醂っぽい仄かな甘味と動物系由来のコクや甘味に独特なクセも無く、しっかりとしたコクのあるサラッとしたスープ。軽い様で深い印象のあるすき焼きテイストなスープは他に類に見ない個性溢れる味わいで、めっさ美味いです。麺は、低加水で柔めのストレート。スープを吸った麺は麺だけ食べても当然美味いんですが、これとご飯を合わせて食べても美味い!炭水化物×炭水化物の見事なフュージョンです。
具材は、豚バラ肉・メンマ・もやし・刻み葱・卵の黄身です。本来、スープに絡めるか豚バラ肉に絡めて食べる卵の黄身ですが、それを蓮華で掬い、甘辛く煮込んだ豚バラをライスにチャドリング。崩れた黄身を絡めて食べると凄く美味い。この食べ方、かなりイケてます。徳島茶系は、ホントご飯との相性も良く、おかずとして食べられるラーメンです。
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- 中華そば春陽軒
- ラーメン 高徳線佐古駅 徒歩10分
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11.徳島茶系とは一線を画す、野性味溢れる骨感の強い濃厚豚骨【王王軒】
可愛い犬のロゴが目印の此方のお店の店主さん、調理学校卒で調理師を務められた後、徳島ラーメンを学んだ経歴を持ち、1998年に開業された、徳島ラーメンの中で最もこってりとしたスープとして人気のあるお店です。
徳島茶系ですが醤油辛さや甘さは控えめで、非常に円やかな口当たりですが、野性味の溢れる骨感の強い濃厚こってりスープ。ベースの鶏ガラ豚骨に鰹出汁を合わせており、ワイルドでコクに深みのある味わいは今までに食べてきた茶系とは一線を画すもの。低加水でスクエアタイプの中細ストレート麺は、小麦の風味が豊かで、ぱつんとハリのある食感の喉越しの良い麺です。スープの旨味をしっかりと乗せてくれます。同じ敷地内に製麺部屋っぽいプレハブがあったのですが、製麺しているんでしょうね。具材は、徳島茶系定番の豚バラ肉・メンマ・もやし・刻み葱です。あっ、これもご飯が食べたくなるやつです。『子供が食べて美味しいと思う中華そばを作りたい』を念頭に置き、独学で作り出した一杯は、地元民の幅広い層に受け入れられ愛され続けている様で遠征者には、特にオススメのお店です。
12.徳島県のご当地ラーメンを世に波及させた立役者【中華そば いのたに】
徳島県のご当地ラーメンを世に波及させたのが、此方のお店。『新横浜ラーメン博物館』の出店により徳島ラーメンが全国区にその名を広げた立役者で、多くの著名人等も訪れており、また国内外の観光客の来店も非常に多い様です。関西ではお馴染みで、私の実家から割と近い大阪府柏原市の、『ひろ家』の店主も、此方の出身でございます。
中・生玉子だが、見栄えは茶系と思われるも、今まで食べてきた徳島茶系とは異なり、甘さが無く黄色系なんかと思ってしまう内容で、ベースは豚骨に野菜や煮干しを合わせ、適度な油分とコクのしっかりとした後味すっきりの豚骨醤油です。麺は加水がやや高い中細ストレート。麺線は割と短めで啜り切り易い丁度な位の長さなんでしょうね。具材は、豚バラ肉・メンマ・生玉子・刻み葱です。甘辛く煮付けた豚バラ肉は小ぶりながらも厚みがあり、生玉子の黄身を絡めて食べる事で円やかさを持たせるのですが、すき焼きっぽい味わいに、ついご飯が欲しくなります。
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