本州最西地の山口県は、自然に恵まれた海の幸、山の幸が自慢の県で、同県のご当地ラーメンとしての認知度は全国的には低く、逆に各県からの異種系ラーメンがポツリポツリと飛び火のように散在する状況の中、ラーメンフリークがこぞって行こうと注目視されている傾向は少し薄い様。県南東部の下松市や光市では牛骨を軸にした『下松市牛骨ラーメン』、周防大島のたちばなや食堂が祖で、周防大島観光協会が中心となり広くPRされている『瀬戸内ラーメンいりこそば』。そのインスパイアも光市や防府市にて提供されている。また、宇部市では久留米系の豚骨に独自の進化をつけた『宇部ラーメン』、周南市は徳山駅周辺で提供されている醤油ベースのあっさりとしたスープの『徳山ラーメン』等、県内でも地域によって幾つもの地ラーメンが古くより地に根を張っております。また他県で修行され持ち帰った異種系等も含めて、自身が印象に残る、山口県に来たら必ず食べるべきラーメン店を8つご紹介したいと思います。
1.長閑な島の小さな町にある秘境地のラーメン【みかちゃんラーメン】
長閑な島の小さな町にある此方のお店は瀬戸内海沿いに面した位置に建ち、造りが年季の入ったプレハブ小屋にて営んでおられ、広島市で熊本ラーメンが戴ける人気店『満得』の店主さん(息子)に両親が教わり、ラーメンを提供しています。
乳白色の色合いをしたスープは、豚骨にマー油の掛かった熊本ラーメンを彷彿させるもの。
割と軽めで円やかな口当たりのライト豚骨は、とてもクリーミーな味わいで臭みも無く香ばしいニンニクの香りが立ち、それそのものも強過ぎずのバランスの良い合わせ方で、飲みやすくて美味しいです。やや白肌の色合いをした麺は、自家製で低加水のストレート麺で、さっくりとした歯応えのある弾力で小麦の香りもします。
こんな見晴らしの良いロケーションで戴けるラーメンも秘境地ならではで、こういうのがやはり遠征の醍醐味のひとつでもあります。
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2.本土最西のとら食堂系はオリジナリティ溢れる個ある一杯【侍】
こちらのお店の店主さんは、福島県のご当地ラーメン『白河ラーメン』として有名な『とら食堂』出身の方。外観は古風な日本家屋で、店内に入るとトタンの掘っ建て小屋内っぽく、スタッフは背番号を背負ったTシャツと、全てに噛み合わないチグハグさが面白い。
手打ち中華そば(新味)は、先日伺った凌駕@甲府市で戴いたのが白河とら食堂とニアなものであるならば、これは全く違う個性ある一杯。鶏を軸にイリコ等の節系の出汁をバランス良く合わせた洗練された無化調スープで、キレある醤油と仄かな酸味、旨味には奥行きがあって、ボヤけた印象も無く、すっきりとした後味と旨味の余韻が残る絶品スープ。不規則にねじれた手打ち麺は、ツルツルとした喉越しの良さとぷりぷりもっちりとした独特な食感が印象的で、小麦の風味が非常に豊かな自家製麺が秀逸。具材は、チャーシュー・白髪葱・貝割れ大根・海苔で、燻されたチャーシューは薫香の良い香りと肉々しい旨味が詰まっており、しっとりとした柔らかさ。
聞いていた山口県特性のラーメンとはまた違う、他県から持ち帰ってきたものではあれど、またしても『とら食堂』の系譜。。。
いやはや美味すぎる一杯です。
3.下松牛骨ラーメンの祖である昭和27年創業の老舗銘店【中華そば 紅蘭】
山口県下松市(くだまつし)は全国でも数少ない牛骨醤油ラーメン、通称「下松ラーメン」の老舗がひしめく街です。此方のお店は昭和27年創業で下松ラーメンの祖である老舗銘店です。牛骨といえば、鳥取県中部から西部を中心に提供しているお店が多く、全国的にも知れ渡る有名なご当地ラーメンですが、山口県にも、下松市や光市で牛骨ラーメンが存在していたとは知りませんでした。メニューは、中華そばの(並)・(中)・(大)に、チャーシューの(並)・(中)・(大)。いなり寿司、煮たまご・ビールに日本酒・オレンジジュースとなり、この辺りでは中華そばと一緒に食べるいなり寿司を提供しているお店が多いです。
やや半濁の油槽に厚みあるテロリとした牛骨醤油は、香ばしい牛脂に濃い目の醤油と化調がビシバシ効き、オイリーながらも脂っこさを感じさせない甘しょっぱいスープです。また、卓上にはラーメンタレが常備されており、薄いと思えば投入し好みで濃さを調整出来ます。麺は、武居製麺所謹製でさっくりとした歯応えである低加水中細ストレート麺。
ラーメンにいなり?と思ってしまいましたが、これがまた合うんです。昔は、うどんも提供していた事があったそうで、その流れで今も提供をしているそうです。周りを見渡しても、やはりセットで頼まれている方が多い様に見受けられました。甘辛く炊いた、しっとりと柔らかい油揚げにさっぱりとした酢飯がまた美味い。
幾度かの移転により、大箱店になっているので老舗の雰囲気はありませんが、鳥取県の提供している牛骨ラーメンとはまた違った味わいで、この類いも非常にレベルが高いと感じる一杯。
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4.徳山らーめんの代表格である老舗人気店【第三スター】
徳山らーめんというと、醤油ベースのあっさりらーめんで周南市でも特に徳山駅界隈を中心に出されている地ラーメン。此方の第三スターは創業50年以上にもなる昔ながらの風情のあるお店で、徳山駅前にある『スター本店』、そこから300m程離れた位置にある『第二スター』、もすこし離れたとこに此方の『第三スター』と徳山駅周辺を固める様に醤油ラーメンを提供されていたのが何時しかスター系と称され、古くから地元の方々に愛され続けてきた昭和の老舗店。
濃い色合いながら透き通ったスープは、昆布が主体でしょうか?油がほとんど浮いておらず、香ばしい醤油色が強く化調も効き、ほんのりと甘みのあるあっさりとしたもの。
胡椒を振り掛ける事でギュッと脇の締まった味わいに化けます。麺はスープをよく吸い、色の染まった平たい形状の低加水中細ストレートです。柔らかめの歯応えで、スープによく馴染みます。腿肉のチャーシューは、ギュッギュッとした歯ごたえと弾力があり、適度な味付けで噛みしめる毎に肉本来の旨味を味わえます。
体に染み入る優しい味わいは、初めて食べてもどこか懐かしささえ感じてしまう様な、昔ながらの中華そばといった印象でとても美味しい。
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5.下松ラーメン系の中でも深みあるコクと力強さのある一杯【中華そば 蘭らん】
駅より少し離れた位置にあるが、この味を求めて多くのファンが訪れる人気店。情報では蘭らんは北斗亭も含め、紅蘭@下松市出身だとかも言われており、紅蘭や北斗亭に比べると創業してからの歴史はまだ浅い。
油層に厚みのある半濁の牛骨醤油は、牛骨由来の仄かな甘味に醤油の味わいがくっきりとした熱々のスープです。醤油の尖がりを出汁の旨味や脂の甘味で削ぎ落とし、丸みを持たせた輪郭は、脂のクドさも無くコクに深みのある力強さと円やかな口当たりが素晴らしい。麺は牛骨ラーメン店のスタンダード、『武居製麺所』謹製の中細ストレート。さっくりとした独特の硬さがあり、小麦の風味を感じさせてくれます。
過去に戴いてきた紅蘭や北斗亭とは似て非なる味わいで、かなり好印象に残る一杯でした。
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6.周防大島の元祖『たちばなや食堂』の進化系【瀬戸内ラーメン 大島】
此方のお店は、伺えず終いだった『たちばなや食堂』@周防大島で戴けなかった『いりこラーメン』が提供されており、周防大島に伝わる昔ながらの中華そばをご当地ラーメンとして盛り上げようと、周防大島観光協会が中心となり『瀬戸内ラーメンいりこそば』の愛称で広くPRされているのですが、その地ラーメンのインスパイアにあたります。
周防大島沖で獲れたイワシを干した「いりこ」による出汁は澄んだ琥珀色に、香味油もいりこっぽいのが使われており、いりこ特有の魚介の風味が鼻腔を抜けます。コクもしっかりしていながら体に沁みる優しい味わいで美味しい。小麦の風味が豊かなでツルツルとした滑らかな麺肌の縮れ太麺は、プリップリの弾力でしっかりと出汁の旨味を乗せてくれます。具材は、チャーシュー・筍っぽい?メンマかな?・木耳・茹で卵半個・もやし・刻み葱です。バラ肉のチャーシューは、薄味ながらも肉の旨味がしっかりとあり、それぞれの具材から出汁を壊さない工夫がされているのも好印象。
スープ・麺・具材と全体のまとまりが非常に良く、一体感がある素晴らしい完成度でいくらでも食べ続けられる様な一杯です。
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7.尾道ラーメンとは一線を画す独創的なクオリティーの高さ【自家製麺中華そば 今里】
尾道ラーメンをベースに独自のトッピングで味わいに変化球を持たせ、拘りの自家製麺を用いた一杯は、山口県でもトップクラスの支持を得ている人気店です。
オススメの中華そば(元祖)は大ぶりのプチプチ背脂と薄い表層の油が敷き詰めたスープで、鶏を軸にバランス良く魚介を合わせた鶏清湯醤油。トルクフルな出汁の厚みに醤油の深みあるコクと甘味が高次元で一つに集約された、脳裏に焼き付く感動ものの絶品スープです。緩やかにウェーブ掛かった中細平打ち麺は、パツンと張りがあり噛むと押し返す程の弾力と喉越しが心地よく、小麦の風味が豊かな自家製麺。具材は、チャーシュー・メンマ・白髪葱・三つ葉・背脂です。大判の肩ロース肉は、味付けは控えめで肉本来の旨味がしっかりと感じられるものでしっとりと柔らかく、背脂から甘味とスープにコクを、そして三つ葉のフレッシュな香りが同じくスープに大きく寄与する名脇役となってます。
全てにおいてクオリティの高い一杯は、後先考えず全汁してしまう程の美味さでした。
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8.変わらぬ製法を守り続け多くから支持を得ている宇部ラーメン【中華そば 味の三平】
宇部ラーメンというと、山口県内の地ラーメンとしては知名度は高く、その定義は茶濁濃豚骨で獣臭が強く中太の柔らかい麺を使用したのが一般的であり、此方のお店の直ぐ傍に位置する『一久』が山口県を中心とした地元密着型のチェーン店で、創業は昭和45年。現在は8店舗を展開されており宇部の地ラーメンとして根付いている宇部系のスタンダードを確立したとも言われています。此方の老舗人気店は店主も含め、全員が女性スタッフで愛想も良く、兎に角テキパキとした動きに凄く好感を持てます。ラーメンは一杯580円と、かなりリーズナブルな価格で、来店時にはサービス券を配布しており、5枚集めると100円引、10枚で300円引と、リピーターには嬉しい特典もある。
茶濁というよりは白濁した色合いのスープで、豚骨の凝縮された旨味と丸みのある輪郭は非常に滑らかでクリーミーな口当たり。宇部ラーメンの定義には当てはまらないが臭みやクドさ等は全くの皆無で幅広い年齢層に受け入れられ易い中濃豚骨です。クタっとした柔めで加水低めの細麺を合わせているが、これがまたスープとよく合っています。赤身と脂身が半々位の丁度良いバラ肉は、しっとりと柔らかくて美味い。このスープに、この麺ありきな感じの合わせ方とか、シンプルな具材の構成でそれがまた良い。
味良し、対応良し、価格も良しと三拍子の揃った凄く好感の持てるお店で、地元民に長くに渡って愛され続けているのが分かる一杯。
ブログ:http://kazuakimoichi.shiga-saku.net/e1242397.html
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