歳月が過ぎるのは早いもので、2015年も、その幕が明けてから既に1ヶ月半が経過。
今年もまた、東京都内の各地に、注目の新店が続々とオープンしている。
そのような状況下において、徐々に、今年のラーメンシーンのトレンドも全貌を現しつつあり、綿密な分析の結果、大きく分けて5つのトレンドに大別されることが判明した。
今回のレポでは、そんなトレンド別に、私が自信を持ってお薦めする新店を5店舗、厳選して紹介したい。
ご当地ラーメンの都内進出が続く。今年の幕開けを飾る切り込み隊長は、下松牛骨を提供する『麺屋ぶち』
第1のトレンドは、「ご当地ラーメンの都内への進出」。
長期的な観点から考察すれば、年によって多寡の差はあるものの、1990年代後半から継続しているご当地ラーメンブーム。
これまでも、和歌山、徳島、喜多方などの系譜に連なる店舗が数多く都内に進出し、ご当地ラーメンの存在を東京人に知らしめてきたが、今年の顕著な特徴は、そんなご当地ラーメンの中でも、これまで東京に進出したことがない、あるいは、進出したことはあってもマイナーな存在に止まっている、マニアックなご当地麺が次々と東京上陸を果たしていることだ。
今回ご紹介させていただく『麺屋ぶち』は、そんなマイナーなご当地麺の人気店。
山口県下松(くだまつ)市に点在する「下松ラーメン」の一派であり、「下松ラーメン」は、牛骨をじっくりと煮込んだ甘味豊かな清湯スープが特徴。
こちらの『麺屋ぶち』も、牛独特の華やかな薫りが手繰る麺とともに舞い上がる、箸を持つ手を休めることができない1杯。
パツンと口の中で力強く弾ける中太ストレート麺も、スープと無上の相性を誇り、食べ手を魅了。
オーソドックスな面構えながら、ファーストアタックから、これまでの東京には存在しなかった味であることが明確に実感できる。
場所は、JR亀有駅から徒歩で10分弱程度と、比較的アクセス良好な立地。
お好みに応じて、下松ラーメンの名物サイドメニューである稲荷寿司も、是非お試しあれ!
【麺屋ぶち】
住所:東京都足立区中川4-24-11
電話番号:03-5613-8227
営業時間:月曜~金曜 11:30~15:00、18:00~22:00
土曜・日曜・祝日 11:00~19:00
水曜定休
味噌ラーメンの復権。『東京味噌らーめん鶉(うずら)』は、メニューを味噌に絞り込んだ専門店
第2のトレンドは、「味噌ラーメンの復権」。
1960年代に全国各地を席巻し、その後、常にラーメンの1ジャンルとして、ファンからの根強い支持を博し続けている味噌ラーメン。
そんな味噌ラーメンが、今年、ついに半世紀ぶりの一大ブームを巻き起こしそうな気配を見せている。
象徴的なのが、本年1月19日、武蔵境にオープンした『東京味噌らーめん鶉』の人気ぶりだ。
同店の店主は、東京の名店『七彩』の出身。加えて、都内の実力派新店として新人賞などを総なめにした東小金井の『くじら食堂』のヘルプに入っていた経験もある、ラーメン界のサラブレッド。
そんな店主が、味噌ラーメンの専門店をオープンし、オープン早々から大行列を作る人気店となっている。
画像は、同店の看板メニューである「味玉味噌らーめん」。
麺ゆで前に丹念に手もみを加えた極太縮れ麺が、柔和な香りと甘味を放つ味噌をしっかりと受け止める。
鍋で豪快にあおられた野菜の香ばしさも、スープのうま味とコクを、数段上の次元へと昇華させる。
味噌ラーメンは、スープの強さが先行するイメージが強く、それが『純連』『すみれ』を超える味噌ラーメンがなかなか登場しなかった所以のひとつだったが、こちらの1杯は、麺とスープが対等に己を主張する新境地を見出していた。
このクオリティなら、長蛇の列ができるのも納得。今冬、是非とも戴いておきたい珠玉の名作だ。
【東京味噌らーめん鶉】
住所:東京都武蔵野市境2-3-20
電話番号:非公開
営業時間:月曜~金曜 11:30~14:30、18:00~21:00
土曜・祝日 11:30~18:00
日曜定休
人気店の曜日限定コンセプトチェンジが隆盛の兆し。『裏ぶれん』は本編とは真逆のさっぱり系で勝負!
第3のトレンドは、「人気店の曜日限定コンセプトチェンジ」。
人気店や資金力のあるブランド店が、2号店や3号店で、本店とは異なる味を提供する「セカンドブランド」は、もはや都内においては当たり前の現象。
本稿であえて特筆するには及ばないが、ここ最近、そんな従来型の「セカンドブランド」ではない、本店の定休日などを活用した、曜日限定のコンセプトチェンジが隆盛の兆しを見せている。
具体的には、新たに店舗を出店することなく本店の定休日を活用し、従来とは異なる味を提供するスタイルのこと。
代表的な店舗が、本年2月2日にオープンした『裏ぶれん』。
『ぶれん』の定休日である月曜を活用し、港屋インスパイアタイプの1杯を提供する。
『港屋』とは、西新橋のそば処であり、節ベースのそばつゆにラー油を湛えたスープに、日本蕎麦を浸して戴く「冷やし肉そば」などで有名。
その『港屋』の味のノウハウを活かしながらも、ラーメン専門店ならではのノウハウを駆使し、中華そばで『港屋』のニュアンスを再現することに成功。
日本蕎麦の代わりに、菅野製麺の全粒粉麺を採用し、ネギの代わりにタマネギを配した「冷たい肉つけそば」は、『港屋』の長所を引き継ぎつつも、きっちりと「ラーメン」になっている。
ラー油と一味が、濃厚な鰹ダシをはじめとする多種多様な素材と激しくせめぎ合うつけダレは、ひと口で食べ手を虜にする会心の出来映えだ。
紹介しているお店はこちら!
懐かしの味の復活。都内で久々に味わえる京都の雄『新福菜館』の味
第4のトレンドは、「懐かしの味の復活」。
昨年以来、草加市の『らーめん勇』、横浜市の『中華そば尋』など、往年の名店、名店主の復活が相次いているが、この傾向は、2015年に入っても、まだまだ衰えを見せない。
今回、ご紹介する『新福菜館麻布十番店』も、そんな傾向が引き続いていることを如実に示すものだろう。
同店は、屋号が示すとおり、京都ラーメンの超名門である『新福菜館』の麻布十番店。
『新福菜館』は、かつて新横浜ラーメン博物館に出店経験があり、他にもセンター北やお台場にも店舗を出していたことがあるが、いずれも卒業又は閉店。
今般の麻布十番への出店は、数年ぶりとなる快挙だ。
鶏ガラ、豚骨をはじめとする動物系素材からじっくりとダシを採ったコク深いスープの味わいは、同店でも健在。
カエシは、京都産の醤油を使い、チャーシューから沁み出る肉汁をたっぷりと吸い込ませたもの。
ひと口啜れば、既に作り手の術中。
丼を空にせざるを得ない、強烈な牽引力を有する。
この味を再び都内で堪能することができるとは!ラーメン好きにとっては、まさに夢のような幸せだ。
【新福菜館麻布十番店】
住所:東京都港区十番1-2-5
電話番号:非公開
営業時間:月曜~土曜 11:00~14:30、17:00~21:30
日曜定休
汁なしの味の多様化を象徴する『まぜそば三ツ星』の変わりまぜそば
第5のトレンドは、「まぜそばの味の多様化」。
昨年、名古屋からの「台湾まぜそば」の進出が本格化し、味の多様化が一気に進んだ感があるまぜそばシーン。
今年も、汁なし(まぜそば)の味のバリエーションが更なる広がりを見せる兆しが、既に現れている。
典型的な1杯が、こちらの『まぜそば三ツ星』の「和牛まぜそば」だ。
オープンは、本年1月7日。
贅沢に和牛を用いた1杯の味わいは、まるでボロネーゼパスタをラーメンへとカスタマイズしたような趣。
「箸」ではなく、スプーンとフォークで食べさせるスタイルは、汁なしというジャンルが、ついにパスタの領域にまで到達しつつあることを雄弁に物語る。
卓上の調味料も、複数のスパイス系に元ダレと、従来のまぜそば専門店とは一線を画するもの。
店舗の場所も、JR恵比寿駅から徒歩3分程度と人口集積地に位置し、今後のまぜそばシーンに多大な影響を与えることが予想される。
流行の最先端を押さえたいのであれば、必ず訪れておくべき必食店だ。