一昔前までは、ラーメン店の数が他のエリアと比べて相対的に少なく、「ラーメン過疎地域」というイメージが根強かった、紀伊半島のラーメンシーン。
ところが、ここ数年の間に、そんな状況も様変わりし、今では紀伊半島は、ラーメン好きはもちろんのこと、それ以外の方々にとっても必ず訪問しなければならない一大ラーメン激戦区と化している。
今回は、そんな激戦区でありながら、まだまだ採り上げる媒体が少ない三重県及び和歌山県の優良店を選りすぐって5軒紹介したい。
「この5軒を訪問せずして、ラーメン好きを自称することなかれ。」
今般、御紹介させていただくのは、紀伊半島はおろか全国でも十分通用する実力を有する猛者揃い。
皆さんも、是非、お気に入りの1杯を見つけていただきたい。
みかんの里「有田」において、日々腕に磨きをかける新鋭『麺Dining月乃家』の実力は本物
JR和歌山駅から鉄道で南下すること1時間弱。
みかんの実が橙色に輝く柑橘畑を横目で眺めながら、最寄り駅である藤並駅から20分ほど歩けば、やがて三角形の屋根を戴いた可愛らしい建物が見えてくる。
それが、こちらの『麺Dining月乃家』だ。
看板メニューは、お店自らが「新和歌山ラーメン」と謳う『豚骨醤油』。
地元和歌山の深みのある醤油ダレを、鹿児島の豊かな自然が育んだ霧島ポークで採った豚骨スープに合わせる。
完成した1杯は、スープの一滴一滴が舌蕾に接触する度に、上品な甘味と、とろけるような柔らかなうま味とが、味覚中枢を歓喜させる傑作。
スープを存分に持ち上げる細めのストレート麺の啜り心地も絶佳。
ベースが豚骨であるにもかかわらず、羽毛のように軽やかな後味が心地良い。
和歌山の市街地からは若干距離があるが、万難を排して食べに訪れるだけの価値がある逸品だ。
三重はおろか東海エリア最高水準の実力店『麺や青雲志』の1杯は、食べ手を無我の境地へと誘うアート
東海エリア最大のラーメン激戦区愛知県の陰に隠れ、ラーメン的には必ずしも目立つエリアではなかった三重県。
そんな三重県のラーメン事情が、ここ数年の間で劇的に変化。
東海三県(愛知・三重・岐阜)の一角として、堂々たる地位を築き上げるに至った。
こちらの『青雲志』は、そんな三重ラーメンシーン躍進の屋台骨を支える超実力店。
とりわけ、1日数食提供される限定メニューの数々は、同県はもちろんのこと、全国的にもトップクラスの逸品ぞろいだ。
画像の1杯は、1日に2食しか提供されない「特製プレミアカキ正油らぁ麺」。
スープが口に入るや否や、燻製カキ煮干しの芳醇な香りが身体中を幸福感で包み込む。
うま味に寸分の過不足もなく、スープの温度が下がるにつれ、より一層うま味が屹立する1杯は、思わず鳥肌が立ってしまうほどの味わい。
これまで9,000杯以上のラーメンを食べてきた私ですら、驚愕を禁じ得ない異次元の完成度を誇る。
目下のところ、東海エリア3指に数えられる名店であることに、疑いをはさむ余地はない。
【店舗住所】三重県松阪市嬉野権現前町神北405-14
【営業時間】11:00~14:30 月曜・火曜・金曜定休
【電話番号】非公開
アクセスは容易でないが、ひと口で幸福感が食べ手を包み込む『しま彰』の極上中華そば
オープンは2012年と、老舗がしのぎを削る和歌山エリアではまだ新しい店だが、すでに、同県屈指の実力店として、その名声は同県のみならず、近畿エリア一帯にとどろきわたる。
立地は、和歌山電鉄貴志川線の甘露寺駅から徒歩10分程度。
和歌山市街地からはやや距離があるが、訪問する価値が十分にある珠玉の1杯を提供してくれる。
画像は「大盛中華そば」。
首都圏においても、和歌山ラーメンを提供する店舗が散見されるが、それらに負けずとも劣らない、濃厚豚骨スープとコク深いカエシとの華麗な競演が堪能できる。
丼の底に骨粉が沈殿するほど豚密度が高いスープにも感動を禁じ得ないが、そのスープと真っ向からせめぎ合うカエシの力強い味わいも、特筆もの。
スープを口へと運び込む硬茹でストレート麺の啜り心地、歯ごたえも、極上の領域。
一度丼に口をつけるや、スープの最後の一滴まで完飲せざるを得ない。
その実力の高さ。なるほど、同県最高峰の名店『うらしま』の御出身と聞けば納得。
まさに和歌山新時代の夜明けを告げる、ダイナミックな1杯だ。
紹介しているお店はこちら!
三重は知られざる豚骨王国。全国トップクラスの博多豚骨の名店『なみへい』の1杯はファン必食!
博多豚骨ラーメンを提供する店は、全国各地に数多あるが、製法がシンプルである分、差別化を図ることはなかなか難しいのが現状。
そんな状況において、九州地方を除けば、群馬県、そして、こちらの三重県で提供される博多豚骨ラーメンは、注目に値すべき水準の高さを誇る。
こちらの『博多ラーメンなみへい』も、本場顔負けの1杯を提供する1軒。
同じく三重の久居に位置する『博多一丁』と並び、豚骨の粋を完璧なまでに切り出したスープは、ひと口で、豚という素材が有する魅力をまざまざと食べ手に提示。
スープに被さる液状油にうま味の髄を凝縮し、フルボディの豚骨スープとマッチングさせるギミックが冴えわたる。
1度に2玉、3玉と替え玉するのは当たり前。スープまで飲み干す客がほとんどだという。
確かに、このスープには、最後の一滴まで味わい尽くしたくなるような魅力が詰まっている。
「博多ラーメンはもう食べ尽くした」と自負する猛者にこそ、是非、足を運んでいただきたい不朽の名作だ。
紹介しているお店はこちら!
- 博多ラーメンなみへい
- ラーメン 近鉄湯の山線 伊勢松本駅 徒歩12分
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営業は昼間のみと超高ハードル。それでも訪問する価値がある和歌山の至宝『うらしま』
営業時間は、昼間のみ。
夜遅くまで営業する店舗が過半を占める和歌山県においては、別格のハードルの高さを誇る。
しかしながら、その人気は、オープン30分前から、1杯のラーメンを求める食べ手が県内外から詰めかけるほど。
その実力の高さは、1杯の「中華そば」が卓上に運ばれてきた時から一目瞭然だ。
濃茶褐色に染まった濃厚なスープ、そのスープから見え隠れする純白のストレート麺。
ビジュアルから既に名作のオーラをまとっている。
スープを啜れば、甘辛いカエシの風味が忽ち口の中を占拠。
並々ならぬ牽引力を有するカエシを、丼の底に骨粉が溜まるほど濃厚な豚骨スープがしっかりと支える。
「穏やかさ」とは無縁な、荒々しいスープ。
食べ手を選ぶとさえ思われる「振り切れた1杯」だが、ハマったら最後、定期的に通わずにはいられなくなる。
まさに和歌山ラーメンの最高峰たるに相応しい、圧巻の内容だ。