雑誌の取材のため北千住の居酒屋に2軒ほどお邪魔してきた。お腹はもう十分だったが、その後どうしても寄って帰りたい店があった。いつもお世話になっているバードコートだ。ご主人はとても真面目な方で、焼き鳥には絶対に妥協をしない。ひたむきに焼き台に向かう姿は修行僧のような印象を与える。

サービスは奥様が中心だ。いつも明るい笑顔に癒される。寡黙なご主人の分まで喋るのが奥様の役割のようなもので、そのおかげでバードコートはいつ来ても和やかで明るい雰囲気なのだ。

この日は遅い時間だったので、挨拶だけして帰るつもりで店に寄ってみた。どうせいつも予約でいっぱいだし、3軒目なのであまり食べられそうにない。扉を開けて顔を見せると、「おー、くにちゃん、久しぶり。座って座って」とご主人は満面の笑みで迎えてくれた。ちょうど入れ替わりでご主人の目の前のカウンターが空いていたのだ。

こんな時間にすみませんと詫びると、「食べれるの？」と聞いてくれた。3軒目だけれど、バードコートの焼き鳥ならいつでも食べることができる。我々2人でたぶん1人前弱くらい、美味しいところをいくつか出してくれた。

バードコートの名物は奥久慈軍鶏を使った焼き鳥。甘みが強くジューシーなのが特徴だ。僕はいつもおまかせでお願いしているが、ソリ、ツル、ぼんぼちなどの希少部位は外せない。はじめての人にはぜひレバーパテも食べてもらいたい。

迷うのはシメを何にするかということ。軍鶏の親子丼、軍鶏の雑炊、軍鶏の卵のプリンはどれも絶品だ。迷っても結局、3つとも食べて帰ることになる。奥久慈軍鶏がそういう鶏なのか、ご主人の腕なのか定かではないが、かなりの量食べても食後は意外とさっぱりとしている。

お店のよさというのは、料理の味やサービスだけでない。バードコートのような本当に心のこもったおもてなしが大事なんだと思う。いつ来ても最高に幸せになれる店というのは、都内にもそうそうないものだ。