華やかではないけれど、心温まる
「カイラダ(KAIRADA)」はとても温かくて居心地の良い空間です。いつ訪れても「常連」さんが、我が家のリビングのようにくつろいでそこに居て、まあるくほっこりとした空気を作り出しているのです。
例えばスペシャリテのフォアグラのフランは、注目を集める前にピントを合わせるのが難しいシンプルな見た目。
でも、ひとたび口に入れると、その深い味わいに虜になってしまうのです。
基本に忠実、まさにオーセンティック
例えば前菜のサラダはドレッシングで和えてあります。かけるのではなく、和えてあります。
「食べ終わった時に、お皿に残っていないのが基本」
そして、カイラダのオードブルを食べ終わった時に、お皿にドレッシングは残っていません。
シェフは冬には狩りに行きます。
「下手くそなんで、買うことの方が多いです」
冬にはジビエを味わいに、常連さんが集います。常に複数種類から選択ができるカイラダの冬の風物詩になっています。フランスでは当たり前の風景、それが東銀座でも当たり前になっているのです。
私が訪問した日のアミューズも、ジビエ。鹿肉を煮込んだポトフが過去最大級の寒波到来を忘れさせてくれました。
名店のバゲットとのペアリング
とにかくソースが美味しい。
なにげない見かけだけれど、じわりじわりと沁み入る料理は、忘れられない味わい。
そんな料理には、究極にシンプルでニュートラルなバゲットが寄り添います。印象に残らないどころか、下手するとそこにあったことも忘れてしまうほどの透明感。こうして料理に合わせた時に、存在を消せることこそバゲットの役割、そして美味しいバゲットの証だと私は思います。
カイラダのバゲットは「ビゴの店」のもの。日本のフランスパンの父とも呼ばれる名人のレシピです。なにより美味しいソースを、極上のバゲットで一滴も残さずぬぐい取って食べてきました。
ジビエは季節とともに終わりを迎えますが、パンと料理のペアリングは一年中楽しめます。