日本全国に根付く「ご当地ラーメン」と呼ばれるものは数多く存在するが、その大半は20世紀、特に戦後~昭和中期に誕生している。
21世紀に入ってからはと言うと、私の記事で以前紹介した名古屋発の「台湾まぜそば」や、小麦粉と蕎麦粉で作る『コンニャク麺』を使った宮崎県の「辛麺」など、何故か共通して辛ウマ~激辛系の「新・ご当地ラーメン」が元気だ。
中でも【五大ご当地ラーメン】を擁する日本屈指のラーメン県・新潟県の全域において、ここ2~3年「麻婆麺」が大人気、第6の新潟ご当地ラーメンとの呼び声も高い。
今回は2017年のゴールデンウィークの新潟遠征から、私の印象に強く残った「麻婆麺」を供する店を6店舗紹介したい。
1.朝天唐辛子の辛みと花椒のシビレが痛快!上越市・龍馬軒の「麻婆麺」
上信越自動車道の上越高田ICから約500m、北陸新幹線・上越妙高駅から約1kmと、自動車・公共交通機関の双方でアクセス良好という、遠征者思いとしか考えられない(笑)ロケーションに店を構える、昭和初期の下町を思わせる広々とした空間が印象的な『龍馬軒』。
単品の「麻婆豆腐」も人気という同店の「麻婆麺」は、嗅覚への刺激だけで食欲を一気に跳ね上げてくれる、本格的な四川テイストの麻婆豆腐が特長。朝天唐辛子の辛みと花椒の痺れに加え、豆鼓の塩気とコクが後を引く。その存在感に負けない、自家製中細麺のザックリと軽快な歯ざわりもヒキの強さに貢献。
別添のスープはクラシックな中華風かと思いきや、何とキレッキレの煮干清湯スープ。鶏のベースがどっしりと支える安定感のおかげか、青梗菜との相性もバッチリ。1オーダーで2度美味しいと感じさせる構成は、990円という価格設定でも十分お値打ちと言えるだろう。
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店名:龍馬軒
住所:新潟県上越市上中田北部土地区画整理事業8街区1画地
営業時間:11:00~14:30、18:00~21:00
定休日:月曜
2.辛さと甘みの絶妙なバランス!新潟市中央区・たまる屋の「背脂マーボーメン」
屋号に「和風とんこつ」と掲げているが、今回のテーマ「麻婆麺」ブームの牽引役との呼び声高い『たまる屋』。実際、私が訪れたタイミングでも、居合わせたお客さんの半数以上が、今回紹介する「背脂マーボーメン」をオーダーしているという圧倒的な人気ぶり。
さて、この品。少量のスープを餡の土台にしてはいるが、餡を麺に直接かけたまぜそば的な構成。モッチリと弾力のある自家製中太麺に、山椒のシビレとチーズのコクが同居する麻婆餡が容赦なくビッシリと絡む。そこに背脂の甘みが融合し、パンチがありながらもマイルドという独自の味わいに。デフォルトで200g以上という麺量でも一気に食べさせるヒキの強さは、今回の記事の中でも随一。
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3.極太麺と本格麻婆の刺激的な邂逅!新潟市中央区・らーめん亭にしやま「四川風麻婆麺」
昭和63年創業と、30年近く愛される老舗ながら、近年後を継いだ二代目店主による意欲的なメニューがめっぽう美味いと評判の『らーめん亭にしやま』。今回紹介する「四川風麻婆麺 しょうゆ」もその1つ。
同県・燕市を中心に県央地区で愛されている、背脂煮干スープ×極太麺が本品のベース。そこに合わせる麻婆豆腐は、 心地良い辛さと花椒の刺激的な痺れが何とも痛快な、単品で見てもクオリティ高い逸品。
スープの背脂煮干の旨みに、麻婆豆腐の麻辣味が加わる事で、和風とも中華とも言えない未体験の味わいに変貌。トロみの強い餡が絡み付いても押し負けしないムッチムチの極太麺の存在も頼もしく、一度欲すると替えが効かない独自性の高い一杯だ。
4.濃厚豚骨スープと麻婆による魔性のタッグ!新潟市東区・麺家 太威の「四川風マーボー麺」
屋号に「家」の字を掲げる事からも分かる通り、神奈川県横浜市発祥の【家系ラーメン】を提供する、新潟市東区の『麺家 太威』。メニューの軸に家系ラーメンを据えながらも、店のスタッフに訊くと一番人気は今回紹介する「四川風マーボー麺」なのだとか。そんな状況からも、現在の「麻婆麺」ブームの盛り上がりの凄さが伺える。
ベースが家系のスープなので、当然の事ながらしっかりと濃厚で旨みギッシリ。丼一面を覆うようにたっぷりと盛った麻婆餡と合わさる事で、痛烈な辛さと豚骨の旨みがクロスオーバーし、猛烈な求心力を生み出す事に成功。
これが強靭なコシの太麺にビッシリと絡み付く様は圧巻。3段階から選べる辛さは、初訪のため1を選択したが、食べていて額に首筋にと汗ダク。それでも箸が止まらず、無我夢中で完食。食べ応えと辛さへの欲求を一度で満たす、これ以上ない一杯と言えるだろう。
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5.強靭な自家製麺が個性派具材と真っ向勝負!新潟市中央区・麺や 忍「背脂マーボー麺」
JR新潟駅の南口から徒歩7分程度、新潟市内では少数派の背脂煮干ラーメンで人気の『麺や 忍』。靴を脱いで店内へ上がるアットホームな造りながら、入店した瞬間から煮干と花椒が入り混じった香りが鼻腔をくすぐり食欲を刺激、着席時には既にこちらも戦闘態勢に。
看板メニューの「らーめん」は王道の背脂煮干スタイルだが、それと比肩する人気を博しているのが「背脂マーボー麺」だ。先述した背脂煮干ラーメンに麻婆豆腐を組み込んでおり、供された瞬間に立ち上る花椒の香り高さは鮮烈の一言。
ベースの煮干の旨み、麻婆豆腐の辛味、背脂の甘みのバランスが絶妙で、インパクトのある見た目に反して実に食べやすい。麺は自家製の極太平打麺。噛もうとする歯を押し返さんばかりの弾力を有しており、煮干や麻婆の味に負けない存在感は圧巻。麺・煮干・背脂・麻婆という主要4パーツの均整が見事な一杯。
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店名:麺や 忍
住所:新潟県新潟市中央区米山4-1-1
営業時間:11:00~OS14:00、18:00~OS20:00(但し日曜は昼のみ営業)
定休日:不定休
6.ピロピロとした口当たりが快感!柏崎市・盛来軒 駅前店の「マーボーメン」
JR柏崎駅から徒歩6分程にある、昭和11年創業の老舗『盛来軒 駅前店』。麺類だけでも20種類、他にご飯ものや一品料理も数多く取り揃える、いわゆる街の中華屋なのだが、今回紹介する「マーボーメン」は約50年前からメニューに存在するとの事。
餡のやさしい色合いからも分かる通り、辛さは薄っすら感じる程度のピリ辛加減。餡のベースとなる豚清湯スープや粗挽きミンチ、細かく刻んだ椎茸の味がよく出た、素材のダシ感で食べさせる設計。
しかし本品の特長は、何と言っても自家製平打麺にある。ピロピロとした口当たりの良さも秀逸だが、そのしっかりと平たい断面形状ゆえ、餡との絡み具合が特筆モノ。餡を持ち上げるどころか、麺と麺の隙間という隙間全てに挟み込むように口中へと運ぶ。他に類を見ない一体感の高さを、ぜひ一度味わって頂きたい。