県庁所在地・名古屋市を擁する愛知県の北西部・尾張地区。中でも、かつて【ラーメン街道】と呼ばれた県道214号が縦断する尾張旭市、毎年開催される「春日井まつり」のグルメブース【春日井ラーメン横町】がラーメンイベント顔負けの活況を呈する春日井市などを擁する東尾張エリアは、愛知県内でも有数のラーメン激戦区として知られている。
その中から、私が自信を持ってオススメできる店を、小牧市・春日井市・瀬戸市・尾張旭市・長久手市の5市から1店舗ずつ紹介。全店舗が【自家製麺】にこだわる店だが、各店舗それぞれの個性があり、バラエティに富んだラインナップとなった。同エリアへのお出かけの際、ご参考頂けると幸甚だ。
1.【瀬戸市】東海地区に「濃厚煮干」の旋風を巻き起こす『麺座 かたぶつ』
岐阜県関市の名店『麺屋 白神』のセカンドブランドにして豚骨ラーメン専門店の『二代目白神』で店長ならびに製麺担当を務めた後に独立、2012年3月に店主自らの郷里である愛知県瀬戸市にオープンしたのが『麺座 かたぶつ』。修行先の限定メニューに衝撃を受け、独立の際に掲げたコンセプトは「濃厚煮干による一点突破」と単純明快、同エリアの潜在的ニーズの掘り起こしに成功し、ハードコアニボラー(濃厚煮干愛好者の意)を量産し続けている。
この店の揺るぎないベストセラー「らーめん」は、良質の伊吹いりこを大量に使用し、白濁した鶏豚スープと一緒に長時間煮込んだ、パワフルな煮干スープが肝。濃厚ながら重たさやエグみといったネガティブな要素は一切見られず、それどころか芳しささえ手懐けており、煮干の強度に対する品の良さは全国でもトップクラス。日々の天候・気温・湿度に合わせ微調整を怠らない自家製麺は、麺単体で傑作の域に達しており、スープとの相性においても微塵の乖離もない。
個人的にオススメしたいのが、オプションとして用意されている「黒濃煮干脂」。字面がスゴいが(笑)、煮干のエキスを凝縮した香味油で、レンゲで供されるので自分の好きなタイミングで投入が可能。このビジュアルを見てお察しの通り、煮干度を暴力的に向上させてくれる一方で、スープの輪郭をグッと引き締めるスグレモノ。煮干好きを自負する方にはマストなトッピングだ。
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2.【小牧市】王道の「担々麺」のレベルを麺へのこだわりで跳ね上げた『自家製麺いづみ』
名古屋市熱田区で長年愛された中華料理店『いづみ飯店』が、小牧市に移転し『自家製麺いづみ』として生まれ変わったのは2014年3月。住所は小牧市ではあるものの、犬山市寄りの郊外というアクセスの悪い立地ながら、曜日と昼夜を問わずファンが詰めかける様子に、訪れる度に毎度驚かされる。
ここで一番の人気を誇るのが「担々麺」。本格的な四川料理の技法に基づいた自家製ラー油が香り立ち、同じく自家製の芝麻醤が程良いコクで後押しするスープは実にバランスが良く、老若男女問わず愛されるのも頷ける普遍性に富んだ味わい。
そして何より良いのは、屋号にも掲げる自家製の中細麺。啜ればツルツル、噛めばモチモチと、純粋に中華麺として到達点が高く、中華系の店舗にありがちな「麺の脆弱性」を完全に克服。品格と刺激を兼ね備えた味付けに、堂々と渡り合っている。「王道」から「非凡」に昇華した逸品、ぜひご賞味頂きたい。
営業時間:11:30~14:00、187:30~20:00(OS19:50)
定休日:火曜、第1&第3水曜
公式ブログ:http://ameblo.jp/komakideribenji/
3.【春日井市】きめ細かなクレマで鶏白湯のトレンドを先取りする『麺者すぐれ』
2009年12月にオープン、当時の東尾張エリアではまだまだ少数派だった「濃厚つけ麺」の新たな旗手として着々と支持を集め、2014年に自家製麺に完全移行した春日井市の『麺者すぐれ』。今年3月には愛知県一宮市にセカンドブランド『麦の道すぐれ』をオープンするなど、東尾張エリアでも1・2を争う激戦区である春日井市の中でも、非常に勢いのある店だ。
今回紹介する「鶏そば」は、関西地区でここ数年盛り上がっている【泡系】と呼ばれる、スープ表面にきめ細かなクレマが浮かぶ一品。スープのベースとなる鶏白湯は、濃度に頼らず鶏の旨みのみを巧みに抽出してあり、そこへ貝類のダシを合わせる事でサラリとした口当たりながら濃縮した旨みを閉じ込める事に成功。
自慢の自家製麺は長方形断面の中太麺。その平たい形状ゆえスープの持ち上げが良く、全粒粉を配合した力強い風味は、旨みギッシリのスープに押し負けせず相性バッチリ。啜り甲斐のある麺線の長さと、ピロピロとした口当たりも麺好きのツボを上手く押さえてあり、この麺を食べるだけでも訪れる価値が十分にあると断言する。
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4.【尾張旭市】選べる3種類の麺で濃厚系の未来を切り拓く『らーめん功喜』
2013年10月オープン。創業時から【白・赤・緑】の3種類の麺を用意、レギュラー全商品のいずれも麺を自由に選べるという前例のないシステムを設けた、尾張旭市の『らーめん功喜』。白は国産小麦100%のプレーンな麺と鰹油、赤は2種類の唐辛子を練り込んだ麺とラー油、緑はあおさ海苔を練り込んだ麺にあおさ油と、麺に合わせて使用する香味油が変わるのも特長。
今回紹介するのは「醤油らーめん」と「緑の麺」の組み合わせ。濃厚豚骨魚介に類するどっしりとしたスープだが、醤油ダレの使用量を控えめにする事でスープ本来の持ち味を生かした作りになっており、それゆえ啜る度に練り込んだあおさ海苔が香りまくる!
小麦粉以外の食材を練り込んだ麺は様々あるが、ここまで副材料(小麦粉、水、塩、かん水以外の材料)が明確に出る例は稀有だろう。もちろん中華麺としても出来が良く、キリッとしたハリの良さもスープに負けない存在感の強さに寄与している。
そこにあおさ油が混ざると、当然ながら磯の香りが更に向上し、豚骨魚介の一言では括れない独自の味わいに。食べ応えありまくりのチャーシューも特筆モノで、特に甘辛く煮込んだ豚バラは厚さ15mmほどと分厚く、沖縄のラフテーを想起させる逸品。今や「個性が分かりづらい」と言われるまでに浸透した濃厚豚骨魚介の新たな可能性の先鞭をつける一撃だ。
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5.【長久手市】健康志向で滋味に溢れる味わいを追求する『まんまる堂』
愛知県豊橋市で人気を博しながらも2004年に閉店、2008年12月に現在の長久手市にて復活を遂げた『まんまる堂』。移転前から古式桶仕込み醤油や完全天日塩など、昔ながらの自然の恵みを生かした製法の食材にこだわっており、ラーメン店という客単価の低いジャンルで出来る限り「食の安全」を追求している。
一般的なラーメン店における「醤油ラーメン」に該当する「のーまる」は、豚鶏の動物系、節系や煮干に加え鯛のアラや干し貝柱まで使用する魚介系、香味野菜や根菜類から抽出した野菜ダシをミックスしたトリプルスープがベース。濁った見た目ながら、醤油ダレはおろかベース素材のいずれも突出させておらず、舌の奥から喉へ流れ落ちる際に感じる上品な旨みがじんわりと臓腑に沁み入る。
かん水不使用の自家製多加水中太麺は、モッチリと弾力のある食感もさる事ながら、小麦の風味がスープの旨みを携えて共に弾ける瞬間がたまらない。大多数の方がラーメンに求める「食べ応え」や「インパクト」こそ薄いが、毎日食べても絶対に飽きないと言い切れる名品だ。