ここ10年ほどのラーメンシーンを振り返ると、2000年代中盤辺りから濃厚系が怒涛の勢いで全国的に隆盛し、その反動からか2010年代に入ると「ネオ清湯」などと呼ばれる淡麗系が盛り返し、今もその勢いは衰える事なく、大都市圏を中心に淡麗系の実力店は粒揃い、まさに千紫万紅といった状況だ。
我が地元・岐阜エリアにおいても例外ではない。特に、繊細でダシの存在感が如実に出るため、店の実力が浮き彫りになると言われる「塩ラーメン」において、各店が独自のカラーを打ち出し鎬を削る状態が今なお継続中だ。今回は、岐阜・美濃地方における実力伯仲の塩ラーメンを厳選した。あっさりラーメン好きの方にはもちろん、普段こってり系を選ぶ機会が多い方にもお役立て頂けると幸甚である。
1.【神奈川淡麗系】の本場で練磨!岐阜流の淡麗系を創り上げた『麺坊ひかり』
弱冠22歳で神奈川県大和市に『麺処 中村屋』(現在は海老名市)を創業、【若き天才】と称賛された神奈川淡麗系の名手・中村栄利氏の元で修行、店長の座まで務めた後に岐阜に帰郷した店主が2005年にオープンしたのが『麺坊 ひかり』。創業当時、周囲は濃厚系全盛の中、他のラーメンと比べて薄味と言われる神奈川淡麗系を頑なに貫き孤軍奮闘、長年かけてその味を岐阜の地に根付かせた功績はあまりに大きい。
全てのメニューの基本であり、同店のベストセラーである「柳麺 塩」は、店主が得意とする神奈川淡麗系をベースに、「岐阜のお客さんの好みに合うように」と、試行錯誤を重ね辿り着いた味。鶏ガラを軸にしたダシの華やかさと、魚介の旨みを凝縮した塩ダレの深みがキレイに同調するスープは、飲み干す事を回避できないほどの傑作。「あっさり」の概念を覆す旨みの波状攻撃を、ぜひ体感して頂きたい。
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2.濃厚海老系の覇者が持つ裏の顔?『麺屋 白神』水曜限定の「しょっつる」
私のメシコレ記事
「台湾まぜそばから担担麺まで!猛暑を吹っ飛ばす岐阜の激辛ラーメン5選」
https://mecicolle.gnavi.co.jp/report/detail/9069/
で紹介した激辛ラーメン専門店『爆王』の本店である『麺屋 白神』。多数のラーメンイベント出店などに見られる自店の活躍のみならず、卒業した弟子の店が軒並み人気店になるなど、東海地方のラーメンシーンを語る上で欠かせない存在だ。
同店の人気を支えるのが、濃厚な動物系と富山湾の宝石【白海老】を合わせた独創性のあるスープと、他店に卸すほど評判の高い自家製麺なのだが、今回紹介する「しょっつる」は、そのいずれも用いていない一品。
創業当初からラインナップされているメニューで、私は同店の黎明期にはコレを目当てに通ったものだが、予想を遥かに超える濃厚系メニュー人気に押され、現在では水曜のみ提供、しかも券売機には表示されていない【裏メニュー】となっている。
本品は秋田県を代表する発酵調味料【しょっつる】を主材料にしたタレに、澄んだ鶏ガラのベースを合わせた1杯。麺は同じく秋田の名物・稲庭うどんと同じ製法で作る、佐藤養悦本舗の「稲庭中華そば」。独特な製法によって生まれる、究極なまでにストレートな麺が引き起こす毛細管現象が、しょっつる由来の旨みや塩気をガッシリと捉えて離さず、一体となって口中へ滑り込む様は正に快感。
尚、オーダー方法は、同じく水曜限定の「白エビ醤油」の食券を購入し、スタッフに渡す際に「しょっつるに変更」と伝えればOK。
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3.店主のラーメン好きが遂に開花!フレンチ仕込みの技が冴え渡る「洋食おかだ」のラーメンとは?
いきなり宣言するが、1店舗だけラーメン店ではない飲食店を紹介させて頂く(笑)。フレンチの技法を惜しげもなく盛り込みながらも、どこか昭和の大衆向け洋食の面影を残し、実際に低価格で十分満腹にさせてくれる『洋食おかだ』。今年1月から、毎週火曜の夜営業限定で「コンソメ中華そば」の提供を開始。同店のファンのみならず、東海エリアのラーメン好きの間で早くも話題となっている。
メニュー名に掲げるだけあって、本品の生命線は「コンソメ」。厳選された生の鶏挽き肉をふんだんに使用した、王道の「コンソメ・ドゥ・ボライユ」がベース。そこへ魚介ダシを合わせる事で、洋食店ならではの面持ちを保ちつつ、ラーメン専門店に引けを取らない極上のダブルスープが完成。コンソメベースならではのリッチな味わいは正に極上。
麺には先述した『麺屋 白神』の自家製麺を使用。麺とスープの相性の良さには、多くのラーメン好きが心酔する事必至。また、麺を同じく先述した佐藤養悦本舗の「稲庭中華そば」に変更する事も可能。どちらもそれぞれの良さがあるため、お好みで選んで頂きたい。
また、提供日となる火曜の夜営業は、洋食店としてのレギュラーメニューは提供しない。その代わり、ミニサイズの「ローストビーフ丼」をサイドメニューとして用意。これが、さすが肉の扱いに圧倒的なアドバンテージがある洋食店ならではといった完成度。絶妙な火入れでロゼ色に艶めく肉のシルキーな口当たり。味と香りの両面で食欲を刺激してやまない自家製ソース。白飯と共に頬張ると、その絶品の味わいに感動するのと同時に、改めて同店が洋食店だという事にイヤでも気付かされる(笑)。
胃袋に余裕がある方には、是が非でも食べて頂きたい逸品だ。
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店名:洋食おかだ(Yo-shoku OKADA)
住所:岐阜県揖斐郡大野町下磯屋敷前521-2
営業時間:11:00~OS13:30、18:00~OS20:30
定休日:木曜日
公式ページ:http://yo-shokuokada.com/
公式twitter:https://twitter.com/yoshokuOKADAx
(その日のラーメンの内容や提供数量はこちらから)
4.究極なまでに「あっさり」を追求した塩ラーメン専門店『らーめん味や』
岐阜市で唯一の塩ラーメン専門店『LOVE & SALT らーめん味や』。アジアンテイスト溢れるカフェ風の店内は居心地が良く、店を切り盛りする店主ご夫妻の和気藹々とした雰囲気も魅力。一般的なラーメン店とは異なるほのぼのとした空気感ゆえか、いつ訪れても女性客が多いのも同店の特長だ。
今回紹介する「玉子らーめん」は、同店の基本である「らーめん」に、フワフワとしっとりの中間とでも言うべき独特な食感に仕上げた卵を泳がせた品。中華系の王道とも言える豚鶏清湯のベースに、昆布や干し貝柱の旨みを合わせた、真にあっさりながら滋味深いスープ。しなやかに茹でられた細麺と共に卵を頬張ると、スープの旨みと卵のコクが一体となり口中に広がる。全体の味を上手く引き締める、中央に添えられた春菊が持つほろ苦さも名脇役。味にせよ食感にせよ、店のイメージを余す事なく体現した、やさしさに満ちた1杯。
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5.水の都・大垣が生んだネオクラシカルな味!西濃エリアにおける清湯系の雄『マルト屋』
2010年10月に「水の都」岐阜県大垣市にオープン。鳥居式らーめん塾10期生にして、西濃地区における清湯の雄として名高い『中華そば マルト屋』。今年3/18に、同じ大垣市内で店舗を移転。客席数が増え、駐車場も最大34台を確保。スープのベースを清湯だけに絞った潔いメニュー展開ながら、熱心なファンを多く持つ孤高の存在だ。
今回紹介する「塩そば」は、ミネラルを多く含む塩ダレをあえて強めに立たせ、スープ表面に浮かぶ背脂の甘みとの対比で食べ手を惹き付ける設計。節系の香りがブワッと広がる清湯ベースを塩ダレが引き立たせ、あっさりながらも程々にパンチを持たせる事に成功。スルリとした口当たりでクセのない中細麺もスープによく馴染んでおり、新しさと懐かしさを同時に感じられる【ネオクラシカル】な1杯だ。チャーシューを厚さ1cmほどの分厚い切り出しで供する気前の良さも嬉しい。
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店名:中華そば マルト屋
住所:岐阜県大垣市荒川町470-2
営業時間:11:00~OS14:00、18:00~OS20:45
定休日:土曜の夜、祝日の夜、日曜
公式ブログ:http://ameblo.jp/marutoya92/
公式twitter:https://twitter.com/tomoruscello92
6.東濃エリア期待のニューカマー!節系を絢爛に薫らせる『麺場 花道』
昨年10/3オープン、岐阜・東濃エリアではまだ数が少ない【まぜそば】をメニューの主軸に据えた、岐阜県恵那市の『麺場 花道』。同地区の交通の要所である国道19号線から至近、パチンコ店の敷地内で駐車場も広々としており、使い勝手が良好な点も利用者には嬉しい。
まぜそば系だけでなく汁あり(ラーメン)メニューも展開しており、私が推したい「塩らぁ麺」は、取り切りベースなのに鰹節が絢爛に香りまくるスープがとにかく凄い。どれほどの量を投入すればこんなに香るのか!と唸るほど。鶏や野菜から抽出したまろやかな旨みとも上手く溶け合い、口当たり柔らかにして雄健な味わいを実現。バリエ豊富なまぜそばに隠れがちだが、存在感と完成度はこちらも十分に主役級だ。
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7.濃厚系の大人気店『らーめんNageyari』で密かな人気を集める「鯖節そば 塩」
2006年12月創業、岐阜・各務原エリアにおける【濃厚系】や【つけ麺】の先駆的な存在『らーめんNageyari』。2014年3月には店舗を大幅に拡張リニューアル。木目とモノトーンで統一したダイニングカフェ風の空間は、女性1人でも気軽に入れると評判。懇切丁寧な接客を常とする店主の人柄もあってか、曜日や時間帯を問わず、行列が絶えない人気店だ。
同店の代名詞とも言える濃厚系が圧倒的なオーダー率を誇る一方、動物系をスープに使用しない「鯖節そば」が、固定ファンを中心に密かな人気を集めている。魚介オンリーで組み立てたベースだが、節系や煮干を贅沢過ぎる程ふんだんに使用する同店だからこそ成せる、力強さと華やぎが同居する味わいは唯一無二。魚介の旨みの海の中を悠々と泳ぎ、スープの旨みをキッチリと口中へ運ぶ中細麺も逸品。