気取らずカジュアルに"箸で食べる"独自のフレンチを提唱する、新発田市のフランス料理店
近年、ラーメン専門店以外の飲食店(中華系を除く)が、仕入れや技法など自店のアドバンテージを生かしたラーメンを供する「なのにラーメン」の例がじわじわと増えている。食べ歩きをする身としては、専門店だろうが異ジャンル店だろうが、美味しい1杯に出会えればどこだって構わない。実際、私的な話をすれば、ラーメンを求めて異ジャンル店を訪れる機会が、ひと昔前と比べて明らかに増えている。
今回紹介する店『呼福(こふく)のにわ』もそんな異ジャンル店の1つ。新潟県新発田市にあるフランス料理店だが、元々グランメゾンのような高級路線ではなく、「フランス料理を気軽に食べてもらいたい」という思いから”箸で食べる”という独自のスタイルをコンセプトとしており、アーシーな色調の心落ち着く空間からも、そんな思いを読み取る事ができる。
ランチタイム8食のみ限定!ラーメンファンも必食の【洋風つけ麺】
この店で食べられる「なのにラーメン」が、提供時間はランチ営業のみ、提供数も8食限定と、ちょっとハードルが高めの「呼福のにわの洋風つけ麺」。いくら「なのにラーメン」とは言え、そこはフランス料理店、ちゃんとサラダから食事がスタートする。
※仕入れ状況により、提供数が変動することがあります
このサラダが何とも秀逸、野菜1つ1つの食材自体の味わいがしっかりと力強く、ソースは「過ぎない」味付け。この一皿だけでも店主の丁寧な仕事ぶりが十分に伝わる。
南仏スタイルの定番【スープ・ド・ポワソン】の深すぎる旨みに心酔
お次はいよいよ主役の登場。見るからに濃厚なつけ汁は、南仏料理の定番である『スープ・ド・ポワソン(Soup de Poisson)』がベース。ラーメンやつけ麺でポピュラーな魚介系食材と言えば鰹節や煮干などの乾物系だが、こちらは白身魚のアラや身が主体。
さらに大量の香味野菜やハーブ類と合わせてじっくりと煮込むため、軽やかな口当たりにしてググッと深い旨みが身上。裏漉しもキッチリとされており、舌ざわりも非常に滑らか、麺と合わせる事を想像するだけでゾクゾクする。
尚、つけ汁のベースは時期や日によって異なるらしいので、訪れる度に「今日は何を使ったスープなんだろう?」という楽しみがあるのも、ファン心理をくすぐる要素の1つと言えるだろう。
濃厚な魚介の旨みと渡り合う、極上の自家製麺「ヌイユ」
合わせる麺は、『ヌイユ(nouille)』という自家製麺。
ヌイユとは、そのまんま「麺」を意するフランス語。表面にバジルの香りを移したオリーブオイルを薄っすら和えてあり、口中で弾けるような小麦の旨みと跳ね踊るような食感で、魚介の旨みをみっちりと凝縮したつけ汁と五分で渡り合う。
厳密に言えば、ヌイユには「かん水」を使わないため中華麺ではないのだが、ラーメンファンにも十二分に訴求する旨みと食べ応えの総量を湛えている事は事実である。
また、チャーシューの代わりにトッピングされるのが白身魚のソテー(仕入れにより変動ありとの事)。さすがフランス料理店、皮目の軽快なパリパリ感とフワッと仕上がった身との食感のコントラスト、麺まで香ばしくなる芳香と、自店の矜持を余すところなく披露。これだけ単品でオーダーして、白ワインとペアリングしたい程の逸品だ。
自家製フォカッチャで、スープの旨みを最後の一滴まで味わい尽くす!
セットにはサラダ以外に自家製フォカッチャ(イタリアのリーン系パン)が付いてくるので、ヌイユを食べ終わった後につけ汁が余っても、フォカッチャを浸して食べる事ができる。というより、この食べ方をするために、つけ汁は是が非でも余らせるべきだ(笑)。スープ・ド・ポワソンに凝縮された深遠なる旨みを、一滴残さず味わい尽くそう。
たったのプラス150円で絶品のデザート付きに!
以上のサラダ・洋風つけ麺・自家製フォカッチャに加えドリンクというセット内容で950円(税抜)という時点で十分に値打ちなのだが、ここに150円(税抜)プラスすればデザート付きに…って、フランス料理店なので厳密にはデセールなのだが(笑)。
私はこの日2種類ある中から「栗のムースグラッセ」を選んだのだが、これがまた絶品。風味豊かで口どけも非常に軽やか、ソースもナチュラルな味わいで、至福の食後へと導く。
導入から食後まで、ラーメン専門店ではなかなか味わう事のできない、フランス料理店ならではの美味しさと楽しさ。一度体感してみては如何だろうか?