年を追うごとに、ブームが拡がりを増している感があるラーメンシーン。
世界的に権威のあるグルメガイドブックにおいて、ラーメン専門店が2年連続で受賞した(2016年版:『蔦』、2017年版:『蔦』『鳴龍』)ことも、ブーム拡大の追い風となっている。
これによって、ラーメンが食ジャンルのひとつとして認められた。世界的に権威のあるグルメガイドブックでの受賞店が現れるのは、ラーメンが一般的な食として受け入れられるようになったことの象徴だ。
ただ、それは、他の食ジャンルと横一線で比較されるなど、ラーメン業界がより一層容赦のない競争にさらされることをも意味する。
「クオリティに少しでも難があれば、生き残れない」時代が到来しつつあり、情報を発信する側も、「ここには、絶対に訪問すべき」と太鼓判を押すことができる店舗しか紹介することはできない。
今回は、そんな非の打ち所のない店舗の中から、オープン数ヶ月以内の新店を5軒厳選して紹介させていただく。
この記事を参考に店舗へと足を運んでいただき、生涯の伴侶を見つけていただければ、うれしい限りだ。
1.超本格派・創作ラーメン店が環七に降臨!『らぁめん山と樹』の完成度の高さは新人王クラス
最寄りはJR高円寺駅。
高円寺-中野間の環七沿い。中央線の車窓から見える「美酒爛漫」の看板に見覚えがある方は、一定数いらっしゃるのではないかと思うが、本年1月、その看板が立っているビルの一画に新たなラーメン店が誕生した。
それが、今回ご紹介する『らぁめん山と樹』だ。
店主は、八王子の実力店『楓』の御出身。大量の鶏ガラと豚肉を丁寧に煮込んだ清湯スープが持ち合わせる分厚いダシ感は、口に飛び込んだ瞬間、軽い驚きを覚えるほど。このスープに鶏油を注ぎ込み、「鶏&鶏」がもたらす一体感の創出を狙う。
茹でる前にしっかりと手揉みすることで強靭な縮れを持たせた自家製中太麺も、手間暇が切り詰められがちなロードサイド店舗とは思えないほど本格的。
オープンしてまだひと月と経っていない新店中の新店でありながら、ここまで完成度が高い1杯を提供できる力量は大したもの。今後の動向が楽しみな1軒だ。
紹介しているお店はこちら!
店名:らぁめん山と樹
住所:東京都杉並区高円寺南5-21-7 高円寺マンション107
電話番号:03-6383-1773
営業時間:11:00-15:00、17:00-22:00
定休日:月曜日
2.『ナルトもメンマもないけれど』の「塩らーめん」は、屋号と同様一度食べたら記憶から抹消できない1杯
店舗の場所は、東急東横線元住吉駅から徒歩5分程度。
一度耳にすれば記憶から抹消することが困難な独特の屋号は、店主がこよなく愛する有名アーティストの曲タイトルから拝借したものだ。
鶏ガラに加え、ラーメンスープの素材としてはまだ珍しい鶏肉加工品「鶏節」を使用。これらの素材に豚挽肉とカツオ節を加え、味を調えたスープは、動物系素材の重厚なコクと節の落ち着いた和味とが、螺旋(らせん)のように寄り添い互いを高め合う、新店離れした完成度の高さを誇る。
どれだけ啜っても衰えを知らない圧倒的なダシ感は牽引力にあふれ、最後の一滴までスープを飲み干さずにはいられない。このスープに合わせる塩ダレも、味蕾にしっとりと馴染む穏やかな甘みが好印象。
スープの中央部にセットされた紅色のソースは、唐辛子・ハーブ・オリーブオイル・胡麻油をブレンドしたもの。溶け出すとスープの印象が激変するマジックアイテムだ。
紹介しているお店はこちら!
- ナルトもメンマもないけれど
- 個人店
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3.『味世 石神井公園店』は、福島県から都内に降臨した「台湾ラーメン」第2の刺客!
今回ご紹介する『味世』は、福島県・郡山市からの東京進出店。
名古屋の『味仙』で修業し、同地のご当地麺である台湾ラーメンづくりのノウハウを会得。『味仙』から受け継いだ味を福島の地で提供していたが、本年1月、満を持して都内への進出を果たした、異色の経歴の持ち主だ。
看板メニューは、もちろん「台湾ラーメン」。啜ると口内で燎原の火のごとく拡がるスープの辛みは、まさに本場仕込み。
小ぶりな丼で提供され麺量が極めて少ない本場の「台湾ラーメン」とは異なり、並盛でも心ゆくまで麺とスープが堪能できる。「麺量がなければ客が足を運ばない」という東北のカルチャーが、長所として活かされている。このボリュームであれば、食事として十分成立するだろう。
都内随一の『味仙』の直営店である『神田味仙』では提供されていない、激辛仕様の「イタリアン」が食べられる点も、辛党にはうれしい限りだ。
紹介しているお店はこちら!
店名:元祖台湾ラーメン 味世 石神井公園店
住所:東京都練馬区石神井7-1-3 TビルB1
電話番号:03-6913-3795
営業時間:火曜~土曜:11:30~14:30、17:30~23:00 (LO:22:30) 日曜:11:30~14:30、17:00~20:00 (LO:19:30)
定休日:月曜日
Facebookページ:https://www.facebook.com/misei.shakujiikoen/
4.実力店『えんや』の店主がラーメン人生の全てを賭けて紡ぐ!『赤羽 山雄亭』の「醤油らぁ麺」
東京有数のラーメンテーマパークとして名を馳せる『立川ラーメンスクエア』。
同施設で実施されるコンペ「ラーメントライアウト」の第5回大会で優勝を勝ち取り、一躍、実力店の仲間入りを果たした『らーめんえんや』の店主が、本年1月12日、赤羽に新店を立ち上げた。
これが、『赤羽 山雄亭』だ。
「今の自分が作りたい味を食べ手に提供したい」との想いが高じ、屋号も変え、従来の『えんや』の味とは異なる1杯をゼロから開発。
基本メニューである「醤油らぁ麺」は、魚介素材と呼吸を合わせながら、主役である「さつま地鶏」の持ち味を根こそぎ引き出したスープが、高級な和出汁のよう。スープをうっすらと覆う鶏油の香味もスープの滋養味と重なり、厳かな鶏の二重奏を繰り広げる。
麺は、全粒粉入りのストレート。スープとの一体感を重視し、あえて柔らかめに茹で上げる。ラーメンを知り尽くしたマニアにこそ召し上がっていただきたい、いぶし銀の1杯だ。
営業時間:月曜~土曜:11:00~15:00、18:00~22:00 日曜・祝日:11:00~17:00
定休日:不定休 (『山雄亭』のTwitter及びブログにて告知)
紹介しているお店はこちら!
- 山雄亭
- ラーメン JR京浜東北線 赤羽駅 徒歩2分
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5.郷土・青森をこよなく愛する店主が手掛ける『らーめん一郎』の「醤油らーめん」は、まさに青森尽くし!
地下鉄メトロ銀座駅から徒歩3分弱。昨年12月、銀座3丁目の一等地で産声を上げた同店は、埼玉・東川口の実力店『麺匠喜楽々』で店長を務め上げた店主が采配を振るう銀座期待のニューエース。
店主の故郷は青森県。『喜楽々』の店長だった頃から、青森のソウルフードである「味噌カレー牛乳ラーメン」の商品化に取り組むなど、郷土愛にあふれた人物だ。
看板メニューである「醤油らーめん」のスープは、青森シャモロックの丸鶏、津軽平館産のイワシ焼干し、十三湖のしじみを用いた完全青森仕様。
「用意できる素材を青森産に統一する」というスローガンを着実に実行するが、そんなハードルを自らに課しながら、素材の魅力を完璧に引き出し食べ手に提示できる手腕には、感服するほかない。
食べ進めるにつれて素材のうま味がなだらかに膨らみゆくサマが、実に趣深い。とりわけ、鶏と貝とが織り成す豊潤な香りは、味覚中枢が打ち震えるほど魅惑的だ。