「中華そば」と「煮干しそば」。「つけそば」と「煮干しつけそば」。
2013年に彗星のごとく颯爽と登場した『中華そば しば田』は、今年も、上記の4種類のメニューを引っ提げ、無人の野を進むがごとき快進撃を続ける。今や、あらゆる媒体で人気最上位店のひとつとして採り上げられ、行列が途切れない日はないほどだ。
「素材の種類は最小限に抑えるが、使うと決めた素材の魅力は徹底的に引き出す」
これが柴田店主の信条だが、その信条にこそ、同店の人気を紐解くカギがある。
「中華そばは中華そばらしく、煮干しそばは煮干しそばらしく」
食べ手がイメージする理想像に寄り添う味を創り出すには、多くの素材は不要。
「中華そば」は、思い切って、主役を「鴨」一本に絞り込んだ。滋養味豊かな青森産の鴨をスープと油の双方に配した1杯は、口の中に長時間滞在するうま味が、食べ手の舌を跡形もなくとろけさせる。ラーメンの味を左右するカエシですら、生醤油・再仕込醤油に酒と味醂を加えただけのシンプルな構成。脇役としてハマグリを配し、鴨が放出するうま味を側面から補強するギミックは、店主自らが探り当てた答えだ。
「煮干しそば」は、用いるカエシの分量を「中華そば」の半分程度に抑え、主役の「煮干し」と助演の「コンブ」のみで爆発的なうま味を叩き出す。
香り高くもダシの邪魔をしない三河産白醤油を用いることで、上質な伊吹イリコの骨太なうま味をくっきりと浮かび上がらせるなど、明確な「哲学」に基づいたスープは、まるで体液の一部であるかのように違和感なく喉元へと吸い込まれる。
用いる素材を厳選し、意中の素材を徹底的に研ぎ澄ませ、食べ手の理想どおりの1杯を提示する。
これまで、淡麗ラーメンは、複数の素材を組み合わせることで味を組み立てていく手法が主流だった。この手法だと、確かに強いうま味は演出できるが、必ずしも食べ手の理想像に寄り添うことができるとは限らない。
『中華そば しば田』の味づくりは、そんな淡麗ラーメンの手法に一石を投じるものだ。同店が起点となって巻き起こるであろう淡麗革命から、今後とも、目が離せそうにない。
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