全国的な知名度の高さを誇る「尾道ラーメン」や、最近、首都圏に急激に進出しつつある「広島中華そば」「広島つけ麺」を抱える広島県。
泣く子も黙る超メジャー御当地麺「博多・長浜ラーメン」を擁する福岡県。
そんな両県に挟まれた山口県は、ともすれば、ラーメン的に光が当たらないエリアとして、ラーメン好きからも軽視されがちなエリアだったことは否めない。
が、今回、私が紹介する５軒をご覧いただければ、山口県は実は、とんでもなくレベルが高いラーメンを提供する店舗の宝庫であることが、御理解いただけるだろう。
他の地域の影響を受けていない老舗が、ところ狭しとひしめき合う同県のラーメンシーン。
皆さんも是非、ここで御紹介する店舗をキッカケに、山口県のラーメンの魅力にドップリと浸かっていただきたい。
１．まずはここから。ラーメンマニアの聖地、牛骨の『紅蘭』
山口県には、「下松(くだまつ)牛骨ラーメン」と総称される地ラーメンが、下松市を中心に数店舗存在する。
鳥取の「牛骨ラーメン」と並ぶ、全国的にも貴重な「牛骨」を用いたスープを用いるラーメンだが、この「下松牛骨ラーメン」提供店舗の代表格が、こちらの『中華そば紅蘭』だ。
地元の醸造所の醤油をブレンドしたカエシに、ドッシリと重厚な牛骨のうま味が織り交ざる「中華そば」は、丼が卓上に置かれた瞬間から、動物系由来の艶やかな薫りが宙を舞い、食べ手の食欲を刺激。
地元の名門製麺所「武居製麺」の中太ストレート麺は、加水率を低めに抑えた小麦密度の高いもので、噛み締めた時のボクッとした食感が堪えられない。
牛骨由来のうま味成分であるイノシン酸の底力が、麺を通じてひしひしと伝わってくる。
連日、大入りの盛況であることも肯ける、同地を代表するにふさわしい貫禄の１杯だ。
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２．時間に追われる出張時に重用！徳山ラーメンシーンの代表格『スター本店』
山口県東部エリアの重要都市として、日々、発展を続ける徳山エリア。
そんな徳山エリアの玄関口としての機能を担うのが、山陽新幹線の停車駅でもあるJR徳山駅だが、同駅から徒歩30秒という近接地に、同エリアを代表する名店が存在する。
それが、こちらの『スター本店』だ。
徳山市内に３店舗存在するスター系列の総本山。
「徳山ブラック」と称するのが相応しいほどの漆黒を呈したスープは、ビジュアルとは裏腹に、醤油本来の味わいを極限まで丁寧に絞り出したアッサリとした飲み口。
平打ちに近い細ストレート麺が、醤油の風味と香りを余すところなく口元へと運び込む。
液状油も控えめにチューニングされ、醤油を味わうために創作された、まさに究極の醤油ラーメンといった趣が潔い。
この１杯に魅せられたラーメン好きが、「スター巡り」と称し、スター３店舗を食べ歩く光景もよく見かける。
巡礼の第一歩として、同店を足掛かりとするのも、また一興だろう。
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３．これぞ、秘境ラーメン。周防大島の港町に佇む珠玉の名店『たちばなや食堂』
風光明媚な瀬戸内にぽっかりと浮かぶ周防(すおう)大島。
そんな、ラーメンとは一見無縁であるような、島の町の一画に、中国地方を代表する名店がひっそりと佇む。
それが、こちらの『たちばなや食堂』だ。
昭和時代から時間が止まったかのような店舗。外観は、潮風によって良い具合に錆が入る。
提供されるメニューは、ラーメン・いなり・餃子と、極めてシンプル。
琥珀色を呈したスープから立ち上るイリコの芳しい薫り。
瀬戸内の海水のように透き通ったスープをひと口啜れば、あっと言う間に、食べ手はこの１杯が織りなす「物語」へと惹き込まれてゆく。
太めのストレート麺を合わせ、女性的なスープを補完する役割を与えている点も見事。
イリコを軸とし、海そのものを戴いているかのような、他に類を見ない味わい。
島の老店主が紡ぐ完璧無比な１杯に、思わず感嘆のため息がこぼれてしまう。
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４．光市の住宅地にも下松牛骨ラーメンが！外せない『中華そばめんいち』の１杯
「下松牛骨ラーメン」を提供する店舗は、必ずしも下松駅周辺のみに存在するわけではない。
スープの素材に牛骨を使うこと。
「下松牛骨ラーメン」にカテゴライズされるために必要な条件は、それのみであるがゆえに、実は、個々の店舗が提供する牛骨ラーメンの味わいも多種多様。
そんな中、こちらの『中華そばめんいち』は、パワフルな液状油と牛骨スープを真っ向から拮抗させることにより、他に比類なき厚みのあるボディを築き上げることに成功している。
味蕾をとろけさせるような牛の芳醇な甘味が、ストレート麺を通じて、素直に食べ手に伝わりゆく。
いくら啜っても、全く衰えを見せることがないスープのうま味に、驚嘆を隠しきれない。
「下松牛骨ラーメン」の原型に近いと言われるこの１杯。
是非、下松エリアのみならず、こちらにも足を延ばし、その魅力を存分に堪能してもらいたい。
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５．背脂チャッチャ系＠山口。岩国の『スエヒロ』でこってり族も大満足！
山口県の東の玄関口である岩国。
錦帯橋・岩国城など、中国地方に名だたる観光名所の宝庫でもある同エリアにおいて、是非、観光の合間の食事として強く推奨したい店舗が、こちらの『中華そばスエヒロ』だ。
動物系素材の処理の仕方が極めて巧みな山口県のラーメン群の中でも、ひときわ、うま味の引き出し方が上手く、豚が持つ荒々しく重々しいうま味が必要十分に表現されている。
同店では加えて、好みに応じ、オーダー時に背脂の分量を指定することが可能であり、「背脂ダブル」を告げれば、画像のような圧巻の風貌の１杯が眼前に供される。
全国各地に散在する背脂チャッチャ系ラーメンの中でも、間違いなく凶暴な部類に属する超・こってりラーメン。
これを食して、スタミナをフルチャージし、山城・岩国城と向かい合うのもまた、観光の楽しみ方のひとつではなかろうか。
