西麻布というエリアは少し背伸びをして訪れたいエリアだが、こちらの「オステリア・トット」は気取らずに本場イタリアンが楽しめる大人の隠れ家的なお店だ。
半地下のお店は風景になじんでいるため、うっかりすると通り過ぎるほど。店内に入ると白い壁とテーブル、黒い木目のカウンター、そしてオシャレな本棚や壁に飾られた絵画や写真たちが出迎えてくれる。まるで仲のよい友人宅にきたようなそんなくつろげる雰囲気だ。
お料理はカジュアルでお手頃なメニューから郷土料理のフルコースと幅広い。ひとりで気軽に立ち寄ってもよいだろうし、もちろん友人たちとゆっくりと食事を楽しむのもおすすめだ。イタリアワインの品揃えも充実しており、グラスでもボトルでも料理に合うものが用意されている。
こちらの根本シェフのつくりだす料理は、素朴さの中に奥深さがあり、どことなく懐かしさも感じる。その料理はイタリア人からすると、まさにイタリアのマンマ味を彷彿とさせるらしい。それもそのはず、根本シェフは元オステリア・ダ・ヴィンチのレオナルド・ヴァレオ氏から直伝のレシピを継いだイタリア郷土料理を得意としているのだ。
そんなシェフの郷土料理を存分に味わいたいのであれば、定期的に提供している「郷土料理のコース」がおすすめだ。シェフは勉強のためにその土地の食材やワインと合わせたコースを考えるとのことだが、その地方の友人から現地のレシピ教えてもらい、イタリア人たちが納得するクオリティに仕上げていく徹底ぶり。
ちなみに10月はトスカーナの郷土料理がいだける。素晴らしいトスカーナのワインたちとそれに合わせたストーリーを感じさせるお料理の数々。その中でも特に気に入ったのがメインの「イノシシの煮込み」だ。通常、イノシシと聞くと臭みがあるというイメージがあるが、とにかくしっかりと煮込まれておりお肉はホロホロで美味しさだけがぎゅっと凝縮されている。ワインはスーパートスカーナの「ロッカート 2009」で最高のアッビナメントが楽しめる。
そしてドルチェも見逃せない。「ズッパイングレーゼ」はカスタードクリームとスポンジの口当たりのまろやかさが絶妙。師匠のヴァレオ氏仕込みのドルチェはイタリア人も泣いて喜ぶらしい(笑)
この郷土料理コース、11月はピエモンテの郷土料理を予定しているとのこと。
気取らない空間と素朴ながらも丁寧で素材を生かした料理は、西麻布という場所なのにどこかほっこりと心満たしてくれる。そんな雰囲気が日本人にもイタリア人にとってもどこか懐かしく、そしてまた通いたくなる場所なのかもしれない。